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ピッツァ職人のメソッドから探る

イタリア・ナポリ生まれの粉「カプート」の魅力

Feature / MovementOct. 26, 2017

text by Mieko Sueyoshi / photographs by Hide Urabe

第1回・小伝馬町「ピッツェリア イル タンブレッロ」大坪善久シェフ 

国内外でピッツァ職人から絶大な支持を誇る、ナポリ生まれの小麦粉「カプート」。今回は、「カプート」の輸入代理店「モンテ物産」協賛のピッツァ講習会から、その魅力を探ります。講師は、本場ナポリで修行したピッツァ職人「ピッツェリア イル タンブレッロ」の大坪善久シェフです。



ナポリを中心に通算3年ほど、イタリアでのピッツァ修業を経た大坪シェフ。この日、講習会で始めに語ったのは粉との付き合い方でした。ピッツァづくりには地元食材を使うのがあたり前のナポリで、どこの店でも使っていた粉は地元の製粉会社カプートの製品。人工的な酵素や添加物を一切加えず、伝統的な製粉方法で生産される上質な小麦粉です。「どこも同じ粉を使っていながら、練り方、発酵のさせ方、焼き方でそれぞれ違ったピッツァに仕上がる。どれが正解というのでなく、さまざまな表現方法に出会えたのがおもしろかった」と言います。

店内に溢れる25名の講習会参加者。写真とメモで大坪シェフのデモンストレーションを記録する。



帰国後、一時は他のイタリア粉や国産小麦なども試し、同じイタリア粉でも灰分量の違う粉を使い比べるなどの試行錯誤を経て、最終的には修業先で使っていたカプートの「サッコロッソ・リンフォルツァート」に行きつきました。「理由は自分が目指す生地、つまりナポリで食べておいしいと思った生地づくりに最適だったから。僕がナポリにいた当時は、イースト量の少ない生地を常温でゆっくり発酵させる方法が主流で、サッコロッソはそうした長時間発酵に適していて、しかも良い発酵状態が持続する。前日に仕込んだ生地を翌日の昼から夜まで使い続けるピッツェリアでは、良い発酵状態が長く続くことはとても重要なのです」。

粉の温度は25~26℃が目安。ジェットミキサーに移す前に温度を測る。



同じ粉でもイースト量を多くすれば短時間で発酵しますが、低イーストで長時間発酵させた生地に比べると、良い発酵状態が持続しないため、長時間の営業には向きません。さらに「低イースト長時間発酵の生地は食べるとサクッと軽いけれど、イースト量が多い生地はもっちりしていてお腹にもたれる」そうです。

ナポリのクラシカルな発酵スタイルで

ボウルに粉を入れ、18℃の湯を加え、ジェットミキサーで攪拌する。



大坪さんがつくる低イースト長時間発酵の生地は、今ではナポリでも少なくなったクラシカルな発酵スタイルです。大坪さんが修業した頃のナポリは、現在70歳代くらいの職人さんたちが現役で、生地は常温か野菜の保存室に置いて長時間発酵させるのがあたり前でした。
「イースト量が極端に少ない生地はとても脆弱で扱いが難しいんですが、入った店では1日目につくるのを見せてくれただけで翌日には、自分でつくってみろ、と言われ、全然できないのに教えてくれない。とりあえずやらせて、何がだめだったか自分で覚えろというやり方で仕込まれました。日々の失敗を重ねながら、体で覚えるまでじっくり待ってくれる。懐の深さがありました」。

攪拌した後、タオルで包み、5分休ませた後の生地。全体にふっくらとして、断面はなめらか。



そう語る大坪シェフの生地は、水1リットルに対しイースト量が夏場0.2g、冬でも最大1g。粉は1540~1600gの割合で仕込みます。使う水は水道水。
「ナポリは硬水だからといってミネラルウォーターを使う必要はないし、また雑味のまったくない浄水ではすぐに生地ダレするので普通の水道水が良いのです」。
暑いときは氷を加えて、寒いときは湯を加えて水温18℃前後に調整し、練り上がり温度25℃を目指します。水、イースト、粉、塩を合わせたらスパイラルミキサーで6,7分練って5分休ませた後にマーブル台に移し、打ち粉をしてたたんでまとめ、また休ませます。ミキサーにかけるときは生地を切りながら回してなるべくグルテンがつながらないようにし、休ませて手練りを加え、さらに休ませてから成型し、室内で24時間発酵させます。

きめ細かくしなやかな生地は、両手でぐっと伸ばしても割けない。



「生地の仕込みについてはその日の室温、湿度、粉の温度、水温、塩とイーストの量とひと言コメントを、年間を通してノートに記録しておきます。季節で変化する発酵状態に対し、そのデータが安定した生地づくりの手掛かりとなります」。

24時間発酵させた後の生地。水分を保ち、艶やかな表面。



打ち粉をして、円形に成形する。手の平で三角を作るように、指の腹で圧を加えながら伸ばして行く。



無駄を出さないナポリの知恵

チーズはモッツァレッラ、塩は結晶塩を使用。甘味も酸味もマイルドなトマトソースは自家製。フレッシュバジルをあしらい、オリーブ油をひとわましかける。



「うちのピッツァはランチと夜遅くとでは食感が違いますよ」と大坪さん。というのも前日に仕込んだ生地は11時半のランチから23時の閉店までの間にも、ゆっくりと発酵し続けるから。
「発酵が進んでボリュームのなくなってきた夜の生地は、兄生地として当日つくった生地の表面に重ねて焼きます。糖分の少ない兄生地は高温でも焦げにくいのでサクッと軽い焼き上がりになります。反対に仕込んで24時間目くらいの昼の生地は糖分が多く、栄養たっぷりで腹持ちも良い。夜にワインと一緒に食べるピッツァが軽く、昼が重いのは理にかなっています。そもそも昼に比べ夜は窯の温度も上昇しているのでから、発酵が進んだ兄生地をサクッと焼き上げるにもってこいなんです」。

ピッツァパドルにのせた生地を回転させながら、まんべんなく火を入れていく。



大坪さんはこの方法を、ナポリで一番好きな店で見て学びました。
「この道一筋50年の焼き職人が、ベロベロに緩い生地を2枚重ねて超高温で焼いていて。焦げることなく気泡も入ったその生地が本当においしかった。今も目標にしています」。
長時間発酵のメリットは生地を長く使えることだが、発酵が進み過ぎたら重ねて焼けばいい。それでも余った生地は揚げ物にして、決して無駄にしない。
「冷蔵庫のない時代の知恵でもあり、もともとピッツァが貧しい庶民の食べ物だった文化背景もあります。そうした文化も含め、自分らしい表現ができたらと思っています」。

2回転させた後のピッツァ。耳に細かく気泡が入っている。



焼き上がりのピッツァ。耳には焼き色が均等に入っている。



トマトソースとチーズが染み込み、しっとりとしたクラスト。ふっくらとした耳は香ばしくほどよい弾力。



「サッコロッソ・リンフォルツァート」は長時間発酵の生地に適した小麦粉。
生地の強さ、伸び、弾力のバランスが良く、ピッツアの他にもデニッシュなど、様々な用途に使用できる。





大坪善久シェフ
福島県出身。26歳で単身イタリアへ渡り、ナポリ「スパゲッタータ」で1年、カラブリア州とシチリア州で1年、ナポリの下町「ピッツェ・エ・ピッツェ」で1年修業し、中目黒「ダ・オルト」等を経て2010年9月に現店開店。





◎ ピッツェリア イル タンブレッロ
東京都中央区日本橋堀留町1-2-9 DIG DUG 1F #B
☎ 03-6661-6628
11:30~13:30 LO/17:00~22:00 LO
東京メトロ小伝馬町駅より徒歩3分、人形町駅より徒歩5分
http://il-tamburello.com/







「カプート」に関するお問い合わせ先
◎ モンテ物産株式会社
☎ 0120-348566
平日9:00~12:00/13:00~17:30(土・日・祝日を除く)











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