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DINING OUT MIYAZAKI with LEXUS

2日間限りのプレミアムな野外レストランバックストーリー

Feature / MovementJun. 29, 2017

photographs by Hide Urabe

「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトに、各地に息づく自然や伝統文化の魅力を“期間限定の野外レストラン”として提示するプロジェクト「DINING OUT」。第10回目が、5月27~28日、宮崎県宮崎市の青島で開催されました。
遥か古えに歴史をさかのぼる神話の島・青島を舞台として、宮崎の風土と向き合ったのは、ASIA’S 50 BEST RESTAURANTS 2017で14位にランクインするなど、今、最も注目を集める東京・神宮前「フロリレージュ」の川手寛康シェフ。「宮崎の食材とは長い付き合いがありますが、今回、土地の奥へと足を踏み入れて、“これからいっそう深く愛せる”と思いました」と語ります。
「時と生命の神秘の凝縮」をテーマに組み上げられていった「DINING OUT MIYAZAKI with LEXUS」の舞台裏をお伝えしましょう。


例外的とも言える受け入れ態勢の青島神社で。




「DINING OUTを自分の土地でも」――。株式会社ONESTORY(「DINING OUT」の企画・運営を行なう)には、地元での開催を望む声が寄せられます。
「現在、15~16ヵ所からのオファーが来ています」と語るのは、総合プロデューサーの大類知樹さん。
第10回目の開催地が宮崎・青島に決定したのは、そんな声のひとつがきっかけでした。
「宮崎市役所の職員の方が、唐津で行なわれたDINING OUTを自ら体験して、『ぜひ宮崎でも』とアプローチしてこられたんですね」

DINING OUTは、日数にしてたった2日か3日、参加者の数にして80~120名という限定的なイベントです。
しかし、そのために掘り起こす歴史や文化的背景、自然環境、農林水産業、食の伝統などは膨大で、半年近くの時間を準備に費やします。土地を深く理解した上で、シェフに白羽の矢を立て、食材生産者のリサーチや会場の選定を行ない、スタッフの手配とトレーニングを重ねる、といった具合に進めていくため、当然、地元の協力なくしては為し得ない。地元の協力体制が成否の鍵を握ると言って過言ではないでしょう。
「宮崎での実現にあたっては、アプローチしてこられた職員の方を中心に、市長を口説き、市議会に通すなど、市を挙げて尽力してくださった。受け入れ態勢が万全でした」

なかでも、例外的とも言える受け入れ態勢が敷かれたのが、会場となった青島神社でした。
青島神社は、神話「海幸山幸」の山幸彦が海から帰還して宮を営んだ跡地に、山幸彦をはじめとする3柱の神様を祀った神社です。極めて古い歴史(1662年の大地震で旧記古文書類を失ったため創祀の時期が特定されないが、平安時代には存在していたことを示す記録がある)を持ちます。境内となる青島全体が霊域として崇められ、江戸時代までは禁足地でした。

右に見えるのが「鬼の洗濯板」。自然が作り出す造形は人知を超えている。今回は会場までレクサスで送り迎えがなされた。ディナーにはアペリティフとディジェスティフがあるように、特別な時間はその前後も大切。

地形がまた特殊なのです。「鬼の洗濯板(岩)」と言えば、景色が浮かぶ人も多いことでしょう。
砂岩と泥岩から成るミルフィーユ状の地層が波に侵食された「鬼の洗濯板(岩)」、その上に、貝殻の破片が堆積してできた周囲1.5kmの小さな島が青島で、島全体に熱帯・亜熱帯植物が手付かずの状態で繁茂しています。
「鬼の洗濯板」は「青島の隆起海床と奇形波蝕痕」として国の天然記念物に、「青島亜熱帯植物群落」は特別天然記念物に指定されています。「日本の地質100選」にも選ばれているという超レアスポットです。
「南国の原生林の中に赤い鳥居が立っている光景は、どこか異様で神秘的。圧倒されました」と、川手シェフは語ります。
その島が、青島神社の宮司による特別の計らいで“貸し切り”と言っていい開催を許されたのでした。

青島神社の元宮は原生林の中にある。大正天皇が皇太子時代に参拝する際に作られた御成道。ビロウ樹(ヤシの一種)が生い茂る奥に赤い祠が見える。

青島は貝の破片が堆積してできた島。元宮の横には貝塚がある。


牛の一生について話し合った。

DINING OUTの準備期間、シェフは食材の産地を訪ねて、食材のバックグラウンドを目の当たりにし、生産者たちが食材に込める思いを受け止めます。その上で料理の構想を練っていく……。
川手シェフは、黒皮カボチャや佐土原ナスの栽培農家の畑へ行き、宮崎中央卸売市場に“極上血抜き”の技を持つ魚の目利きを訪ねました。また、地元のお母さんたちにお願いして、宮崎の人々が普段どんな食事をしているのかも体験しました。
そして、もうひとつ、川手シェフならではの出会いが。宮崎県立農業大学校長・後藤俊一氏との懇談を、シェフ自ら強く望んだのでした。


「宮崎の食材には、自然の奥深いところから湧き出てくるようなエネルギーを感じた」と川手シェフ。「どこを訪ねても、いちいち深くて、いちいち力強かった」。

神経締めと極上血抜きの技を持つ長谷川水産の津本光弘さんがこの日ベストの魚を手配。写真は地元でよく食されるニシ貝。漁師がわざわざもぐって採ってきたウニ、そしてオーガニックパパイヤを合わせて。

鶏自身に本来備わる力を引き出すようにして120日以上放し飼いで育てる黒岩土鶏を、じっくり時間をかけて焼き上げる。

川手シェフのスペシャリテに経産牛の料理があります。宮崎産の経産牛(10~12歳の牛が多いそうです)で作る料理です。
そもそも、牛は、肉用牛と繁殖牛に区別されます。読んで字のごとく、肉用牛は食肉を目的として肥育される牛、繁殖牛は仔牛を生むために飼われる牛です。繁殖牛は、通常7~8産ほど子牛を生んで役目を終えます。役目を終えたら、廃用牛として出荷される……。そのほとんどはミンチや加工品になる運命にあります。
しかし、経産牛を再肥育すれば、肉質は改善されるのもまた事実。そればかりではありません。肉用牛が消費者に喜ばれる肉質にすべく濃厚飼料で育てられるのに対して、繁殖牛は長く健康に飼わないといけない分、草中心の粗飼料と配合飼料をバランスよく与えて育てるため、肉用牛にはない風味や旨味があります。そんな経産牛ならではの味わいに着目するシェフが、最近増えてきています。

川手シェフは、廃用牛として扱うことにアンチテーゼを唱えてきました。
繁殖牛として果たした役割、それによって人間が受けた恩恵、その牛の生命を人間はどう扱い、どう食べるべきなのか? 廃用牛という考え方自体が間違ってはいないか? 真っ当に食べ切るべきではないか?
日頃から、フードロスやサステイナビリティといった地球全体が抱えている課題に対して、人々の意識喚起を促すのも料理人の役目と考える川手シェフにとって、経産牛の料理は社会へのメッセージでもあるのです。

それだけに、川手シェフは、経産牛について、牛の一生について、牛を食べるということについて、宮崎県立農業大学校の校長と話したいと思ったのでした。
学校とレストラン、農業者を目指す若者と食を楽しむ人々、それぞれ相手とする対象は違います。けれど、未来へ向かって取り組まなければならない課題は同じ。互いに共感し合うひとときとなった証として、なんと、校長先生から「DINING OUTのために経産牛を1頭、お譲りしましょう」という申し出がありました。

川手シェフは「フロリレージュ」でも毎日決して欠かすことなく経産牛のスペシャリテを提供する。経産牛を通してサステイナビリティやフードロスを伝えることは川手シェフにとってのミッションだ。

イノシシ鍋はキャンプファイヤーのように鉄鍋で作って、シェフ自らふるまった。「イノシシは皮ごと使わなきゃ」と地元の猟師さんに言われ、皮ごと使っている。そのために猟師さんが毛をきれいに剃ってくれた。


自力で矛盾を乗り越える生産者。

料理を通してサステイナビリティへの意識喚起に取り組む川手シェフの姿勢に深く共鳴した地元生産者がいます。芋焼酎「旭萬年」の渡邊酒造場四代目・渡邊幸一朗さんです。
渡邊酒造場は、原材料となるサツマイモの栽培から手掛ける焼酎蔵。黄金千貫と大地の夢の2品種、自ら管理した種芋を植え付けて栽培(夏の雑草取りが一番大変)、収穫して仕込みます。仕込み水は蔵の井戸から汲み上げた鰐塚山系の伏流水。仕込む際には、「土の中で生きている野生酵母を生かすため」、芋を洗いすぎず、あえて土を残すそうです。
櫂棒も周囲に自生する木や竹から自家製するなど、徹底して風土の中で造り上げていると言えるでしょう。

渡邊酒造場の渡邊幸一朗さん。100年以上続く焼酎蔵の4代目。芋の栽培から手掛けて仕込む。「焼酎は農作物から造るお酒」。

渡邊さん推奨の飲み方「オン・ザ・ロッキュー」。「黒麹 旭萬年」をロックにして、表面にお湯を注ぎ、山椒をふる。焼酎と山椒の香りは立ち上りながら、ひんやり爽快に飲める。

宮崎には優れた酒が多い。左から都農ワイナリーのマスカット・ベリーA、黒木本店の「球」、渡邊酒造場の「黒麹旭萬年」。いずれもこだわりの造り、濃密な味わい。

ここ数年、渡邊さんの心の何割かを占めてきたのは、“仕込むまで”と同時に“仕込んだ後”のことでした。
「本格焼酎は、農作物を発酵させて、その醪を蒸留して製成します。後に残る蒸留廃液は、かつて、ほとんどの蔵が農地還元といって、近隣の田畑に肥料として適量ずつ散布し有効利用していました。しかし、20年ほど前から産業廃棄物に指定され、田畑へ土壌散布すると産廃物の不法投棄に当たるようになってしまったのです。産廃業者への委託処理をせざるを得なくなってしまった」と渡邊さん。

渡邊酒造場では、100年以上前から、焼酎カスを肥料に芋を育てて醸すという循環型の焼酎造りを続けてきました。それがある日突然、肥料だったはずの焼酎カスをお金を払って廃棄し、さらにお金を払って肥料を買うという、矛盾した状況に陥った……。
「焼酎カスを固液分離すればリサイクルできることがわかって、12年前に自社でプラントを作りました。遠心分離機で固体と液体に分け、固体は宮崎牛の飼料や自社畑の有機肥料に、酸度の高い液体はプラントで浄化して無毒化した後に川に放流しています」
プラントを稼働させるランニングコストは、産廃業者へ委託するより5~6倍もコスト高になるけれど、もったいないという思いから継続してきたそうです。
「だから、川手さんの思いはよくわかります」



渡邊酒造場が種芋用に貯蔵していた黄金千貫を分けてもらって、川手シェフがアミューズに仕立てた。小さな焼き芋の姿が風情たっぷり。


掘り起こして、未来へつなげる。

川手シェフが宮崎と向き合ったことによって、浮かび上がってきたのは、優れた食材が生み落とされる環境や生産者と同時に、生み落とされた後の営みでもあります。
川手シェフは言います、「僕が目指したのは2晩の限定ディナーの成功だけではありません。ここで終わらず、先につながること。それが最大の目的です。未来につながることが重要なんです」。

「DINING OUTは“地域表現のプラットフォーム”として確立したと思う」と大類さんは語ります。
「地元の自然、歴史、文化、人材、食材と運営サイドのスキルが高い次元でマッチングして、地域の魅力・価値を総合的に表現し得るようになった」
「目指したのはディナーの成功だけではない」と川手シェフが語るように、10回に及ぶ開催を通して、地域の人々や食材に光が当てられ、交流が進みました。佐渡のように、「DINING OUT SADO REVIVAL」と題して地元の力だけでDINING OUTを再現する取り組みも起きています。

この日の日没は19時11分。太陽が落ちていく様を見ながら、ディナーは進行した。自然の演出は何にもましてゴージャスだ。

ライトアップされた原生林をバックに食事。思わず「ここは日本?」と聞きたくなるような光景が広がるが、山幸彦が祀られる神社の境内、ということはどこよりも日本。起源が古い日本である。

DINING OUTは日本の再発見装置。DINING OUTを通すと、なんでもなかった土地が素敵な土地に見えてくる。DINING OUTは青い鳥。

今、大類さんは、日本の隅々へ意識を及ぼすと同時に、海外へ眼差しを向け始めています。
「2020年に向けて、日本の魅力を海外の人々に伝える機会とすべく、海外展開していきたい」
その第1回が、今年3月、「JAPAN PRESENTATION in PARIS」と題して、パリのルーヴル王宮にある「パリ装飾美術館」で開催されました。「花見」をテーマに、「傳」の長谷川在佑シェフが腕をふるい、日本を代表するフラワーアーティスト・赤井勝氏が「桜」の演出を手掛けたのです。1000本の桜をパリへ持ち込んでの壮麗な演出、世界的にも注目を集める長谷川さんによる花見弁当は大好評を博しました。
「日本に眠る愉しみをもっと。」――埋蔵される日本の魅力を掘り起こし、新たな魅力として提示する作業はたゆまずに続きます。



ホストは中村孝則さん。今回のテーマ「時と生命の神秘の凝縮」を紐解くように語る。川手シェフとの息もぴたりと合って。

圧倒的な自然の力、湧水から生まれる料理
美しい川に生息する天然の鯉を使って「水」をテーマにしたひと皿。伏流水を原料に醸した古式天日甕醸造の黒玄米酢と、沢に自生する天然クレソンをアクセントに。

神秘の凝縮から生まれる料理
貝が堆積し、熱帯植物が漂着してできた青島をテーマにした料理。地元で採れるニシ貝、ウニ、オーガニックパパイヤを、温度やテクスチャーの違いによって、神秘的な凝縮感を表現。

山の中の知恵から生まれる料理
山間部の農家が保存食材で作る伝統食「だご汁」を川手流に。干し椎茸と地元産チーズで作るスープに、干しトウキビ粉のだんご、地粉と豚肉のだんごを浮かべて。

経産牛から知るべき想い
和牛産出量全国トップクラスの宮崎産経産牛でサステイナビリティを訴える川手シェフのスペシャリテ。黒皮カボチャのコンソメ、切干大根、ジャガイモのムースと共に。

豊富な海の恵みから生まれる料理
宮崎の海の多様性を表現するひと皿。地元随一の魚の目利き、津本光弘さんがこの日のために獲った甘鯛のカリカリ焼きに、イカのボロネーゼ、ノコギリガザミを合わせて。

循環する風土から生まれる料理
尾鈴山で120日以上放し飼いで育てられた黒岩土鶏をじっくり時間をかけて焼き上げ、焼き米風に仕立てた蕎麦や粟などの雑穀、天然ミツバとセリのピュレを添えて。

人と動物との共存から生まれる料理
野生のイノシシを地元の猟師の助言に従って皮ごと調理。樫の実や椎茸と共に5時間煮込んだイノシシ鍋は“分かち合い”の料理。川手シェフ自ら鍋からよそう。

時のコントラストから生まれる料理
自然放牧されるブラウンスイスの生乳を、ヨーグルトやクレーム・ダンジュに仕立て、甘乳蘇(かんにゅうそ。奈良・平安時代の蘇を現代に復元。牛乳を1/10まで煮詰めて固形化する)をアクセントに。ひとつの素材を時間違いで構成。

宮崎で出会う異文化的料理
川手シェフはイベント直前に自らペルーへ足を運んでアマゾンのカカオ生産者たちと交流。そのカカオで作るムースを、宮崎産の黒糖のシートで包み込む。遠く離れた地の素材がDINING OUTで融合。

◎来る2017年7月22日(土)、23日(日)に「DINING OUT NISEKO with LEXUS(ダイニング アウト ニセコ ウィズ レクサス)」が北海道虻田郡倶知安町にて開催されます。イベント詳細はこちら






◎ ONESTORY公式サイト
http://www.onestory-media.jp/









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