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しょうゆのボトルが、食の現場を変えていく。

― キッコーマンの革新 ―

Feb. 6, 2019

photographs by Tsunenori Yamashita


現代に入ってからしょうゆがたどった道筋を2つのボトルで語ることができます。赤いキャップの卓上びんとやわらか密封ボトル。それは、キッコーマンが日本と世界の食卓を革新してきた歴史でもあります。

1961年生まれ 永遠の美しさ「しょうゆ卓上びん」
kikkoman が代名詞、赤いキャップは目印。

NYのMOMAにも収蔵される人類のパーマネント・コレクション

昨年3月、キッコーマン〝しょうゆ卓上びん〞が「立体商標」登録された。フォルムのみでキッコーマンしょうゆと認識できると公的に認められたわけである。誰が見てもどこから見ても東京タワーは東京タワーとわかる、それに近い話だ。

登場は今から60年近く前の1961年。「当時の広報担当者がキッコーマンのマークを食卓に上らせたいと考えたのがきっかけでした。当時、しょうゆと言えば2リットルびん。しょうゆ差しに移し替えて使い、びんは台所の戸棚に仕舞われていた。マークが家族の目に触れる機会がなかったんですね」とプロダクト・マネジャーの田嶋康正さんは語る。

依頼を受けてボトルデザインを手掛けたのは、日本におけるインダストリアルデザイナーの草分け、榮久庵憲司氏である。「主婦が家庭の主人公になる」と考えた氏は、女性を意識してデザインを進めた。手に合った大きさと持ちやすさ、倒れにくい安定感、液だれしない注ぎ口、移し替えやすいびんの口径(2リットルびんの口径より大きい)、減り具合が見える利便性など、使い勝手を突き詰めた。女性が持った時に美しく見えるびんの形状は、水滴が落ちる姿にも似た自然な造形だ。

榮久庵氏は生前、このボトルで「モノや美の民主化を目指した」と語っている。日本の生活様式が洋風化して、台所はダイニングキッチンになり、テーブルには洋食器が増えていった時代に、赤いキャップのガラスびんは変わりゆく日本の食卓の風景に見事に寄り添った。

キッコーマン〝しょうゆ卓上びん〞は今、世界約100カ国、累計5億個が流通する。パリやミラノのレストランのテーブルに赤いキャップのしょうゆびんが置かれた光景はもはやめずらしくない。kikkomanがソイソースの代名詞であるように、赤いキャップのボトルはソイソースの目印。すしや刺し身がグローバルフードになり得た一因を、このしょうゆびんが担ったことは確かだ。



1 革新のポイント 「用の美」を追求

① 手に合った大きさと持ちやすさ
② 倒れにくい安定感
③ 液だれしない注ぎ口
④ 移し替えやすい瓶の口径
⑤ 中身の減り具合が見える利便性


など、使い勝手の良さこそ、キッコーマン“しょうゆ卓上びん”が広く普及した理由。販売容器のまま卓上で使えることも画期的だった。このボトルの登場以降、しょうゆ差しを持たない家庭も増加。榮久庵憲司氏は、液だれしない注ぎ口を実現すべく101もの試作品を作成したと言われる。工場での生産性も考慮されている。



2 デザイン界の証言 完成度と先見性

デザイン誌『AXIS』の上條昌宏編集長は「マイナーチェンジをしようとも『変更のしようがない』、デザイナーにそう言わしめるほど完成度の高い容器の魅力は、シンプルさが放つ豊かな表情にある」と語る。「しょうゆを注ぐ仕草にも美しさを求めたデザインは、機能と使う人の心の充足の双方を満たす“用の美”が徹底されている。また、工場出荷時の状態のまま使えるパッケージレスの発想が半世紀以上前に実現されている先見性は、環境配慮が求められる今、改めて評価される」



3 立体商標とはフォルムでわかる

立体商標とは、立体的な形状を商標として登録・保護する制度で、商品の外観や包装容器の形状、立体的な看板、キャラクターの人形などが対象となる。通常、ブランド名やロゴが入った形で登録されるケースが多い中、キッコーマン“しょうゆ卓上びん”は一切の表示のない食品容器としての登録。容器の形状とブランドが一体不可分であると認められた数少ない例だ。海外ではすでに米国、EU、ロシア、豪州などで立体商標を登録済である。



4 世界の食卓で品質保証の目印

立体商標は国際社会でこそ有意義と言える。なぜなら、言語や文化が異なる環つまり、しょうゆへの知識や情報が十分でない土地で消費者がしょうゆを購入しようという時に、ボトルの形状が品質保証の目印となるからである。海外のレストランがキッコーマン“しょうゆ卓上びん”をテーブルに配置するのも、お客さんに安心して使ってもらうためという側面がある。容器のデザインが果たす役割は思う以上に大きい。



2011年生まれ 変革の源泉「やわらか密封ボトル」
密封構造が様々な場所で変革を起こす。

卓上サイズ(200ml)は榮久庵ボトルのラインを踏襲

榮久庵ボトルの登場から50年後にお目見えしたのが、やわらか密封ボトルによる「いつでも新鮮 しぼりたて 生しょうゆ」である。中身が空気に触れない二重構造は、火入れしないしょうゆの鮮やかな色とさらりとしたうまみを90日間保持という〝しょうゆ革命〞を引き起こした。使用量を一滴ずつ調節できて、ロスなく注げるメリットも見逃せない。

「味覚調査をすると、うまみやまろやかな味わいを好み、塩っぽさや濃さは控えたいとする現代人の嗜好が見えてきた。そんなニーズに応えるにはしょうゆを生で提供するのが最善の策と常々考えていました。やわらか密封ボトルによってそれが実現した」と、開発の経緯を田嶋さんは語る。いまやシリーズ総計100億円を超える大ヒット商品となった。

思いがけない効果もある。飲食店による導入だ。生のおいしさもさることながら、やわらか密封ボトルの〝詰め替えない〞点が働き方改革につながると評価されたのである。業務用営業本部長の溝渕由明さんは次のように語る。「すし店などでは1日2〜3回、しょうゆ差しの詰め替えを行います。容器を洗って、詰め直す。テーブルの数だけ繰り返すとかなりの労力と時間を要する。その労力と時間が、詰め替えを必要としない密封ボトルによって削減されるというわけです」。

90日間鮮度保持という特性は、使い分けももたらし始めた。「地元産の人気が根強かった九州などでも、生しょうゆのテイストは別のおいしさと受け止められ、2本目のしょうゆとして常備されるようになってきた」と田嶋さん。「飲食店では、減塩やグルテンフリーを意識するお客さんのために数種揃える店が増えた」と溝渕さん。開封すると酸化や変色が進むため、鮮度の良いうちに使い切ろうと数種併用を避けがちになる。併用を可能にしたのも密封ボトルの鮮度保持の力だ。中身と容器、相互の進化によって、日本と世界の食卓はいっそう喜びで満ちていく。



1 革新のポイント 2つの技術

やわらか密封ボトルは2つの技術からできている。ひとつが、ボトルにしょうゆ入り内袋を内蔵する「二重構造スクイズボトル」。そして、しょうゆを注いだ時、注いだしょうゆと同量の空気がボトルと内袋の間に入るため、内袋には空気が入らない「ダブル逆止弁キャップ」。2つの技術によって、生ならではの鮮やかな色とさらりとしたうまみが90日間保持可能だ。ソフトボトルなので、一滴から注げて調理中の量の加減も片手で思いのまま。



2 外食界の証言 味も時短も衛生も

マグロへのこだわりで知られる魚家株式会社の「すし鮮」では「おさしみ 生しょうゆ」「塩分ひかえめ丸大豆 生しょうゆ」など3 種を一部店舗で導入。第一営業部課長の日沖裕晶氏は「①生のおいしさ、②劣化しにくさ、③衛生的、④詰め替え不要」の4点をメリットとして挙げる。「労力削減も大きいが、異物混入が起こらない、液モレなし、倒れてもこぼれないといった衛生面の利点は、安全安心が求められる飲食店にとって重要ですね」と語る。



3 バリエーション化 発酵と醸造の技

しょうゆの使い分けにふさわしい商品ラインナップを揃えるのは、キッコーマンの発酵と醸造の技術がなせるワザ。「原材料違いや製法違いで様々な液種を作り分ける技術を持っている。火入れせずに商品化できるようになったおかげで風味のデリケートな差異を表現しやすく、液種のバリエーションが生かせるようになった」と田嶋さん。今後、グローバル化や健康志向の加速によって、ピンポイントなニーズに応える商品開発の可能性も出てくるだろう。



4 料理とのマッチング 世界初のフレーバーホイール

しょうゆもワインのように、色・香り・味を語る時代。キッコーマンは世界初の「しょうゆのフレーバーホイール」を作成した。しょうゆに内在する300 種以上の香り成分と100 種以上の味成分から主要な91の要素を取り出して円グラフ化し、料理とのマッチングの道標とする。和食ならだしを生かすのか素材を生かすのか、ラーメンなら白湯か清湯かなど、料理ジャンルとタイプ別にお薦め商品の提案ができるよう知財のストックに努めている。



生しょうゆの生かし方と使い分け方
【うすくち】と【こいくち】から始めましょう。

持ち味が生きている分、違いも際立つのが生しょうゆ。生だからこそ楽しめる、基本的なしょうゆの使い分けを東京・白金台の日本料理店「白金台こばやし」で教わりました。



「白金台こばやし」小林和道料理長
神戸の割烹で修業し、老舗の料理長を長く務めた後、2013年に現店を開く。

「食材にとって最大の敵は空気」と小林和道料理長は言う。食材を保存する際には空気に触れないよう厳重に包み、魚なら塊のまま脱水シートを巻いた上からラップフィルムでぴっちりくるむ。「魚もしょうゆも同じですね。『いつでも新鮮しぼりたて生しょうゆ』は空気をシャットアウトする密封ボトルだから、しょうゆ本来の風味が生きている」

小林さんは関西で生まれ育った。料理人経験も関西が長い。うすくちとこいくちの使い分けが身に付いている。

「生しょうゆはタイプ別の違いも際立って、使い分ける効果がより明確になります」

〝こいくちは卓上で、うすくちは調理場で〞が小林さんの基本。だしにはうすくちを合わせ、つけじょうゆやかけじょうゆにはこいくちを使う。調理場使いでも香ばしさや照りを出したい料理はこいくちの出番だ。

「生しょうゆは調理時の香り立ちを生かしたいですね。合わせしょうゆや合わせだしを作る時には、他の材料にだけ火を入れて、しょうゆは使う直前に生のまま加えるのがお薦め。煮物も仕上げに少量垂らして、追い鰹ならぬ追いしょうゆで香りを立たせるといい。野菜炒めの仕上げにジュッと垂らしてもおいしいですよ。照り焼きは、こいくちに再仕込み製法の超特選丸大豆濃厚生しょうゆを合わせてコク深い味わいを出しつつ、仕上げにこいくちを垂らして香ばしさを生かします」 

うすくちは色が淡い反面、塩分が多く、加減がむずかしいと言われる。その点、「いつでも新鮮シリーズのうすくちは通常のうすくちより塩分が少なくてまろやか。淡い色合いもキープされるので誰でも使いやすいと思います」。

うすくちとこいくち、各々の持ち味を生かす料理を教えていただいた。ぜひ、お試しを。



【こいくち】
ブリ照り焼きのとろろがけ

生しょうゆで作る照り焼きは、ひときわ香り高い仕上がりになる。

材料(2人分)
ブリ( 1.5〜2㎝厚さ、約6~7㎝四方) 2切れ
〈焼きダレ〉
しぼりたて生しょうゆ 100㎖
超特選 丸大豆濃厚生しょうゆ 100㎖
マンジョウ本みりん 150㎖
日本酒 100㎖
砂糖   50g
長芋    100g

作り方
①  長芋の皮をむいて、包丁の背で細かく叩く。
②  ブリの表面に小麦粉(分量外)を ごく少量はたき付ける。
*タレが絡みやすくなる。
③  フライパンにサラダ油(分量外)を、ごく少量熱し、ブリを中火で焼き始める。
④  ブリの両面にしっかり焼き色が付いたら、タレを回しかける。
*タレを絡める上で焼き色は大事。
⑤  フライパンを動かして焦げ付かないようにしながら、タレを煮詰めつつブリに絡めて、照りを出す。
*仕上げにしぼりたて生しょうゆを垂らすと香りが立つので、お好みで。
⑥  器に取って、叩いた長芋をのせ、タレを かける。柚子とそばの実(共に分量外)を 散らし、好みで漬物や干し柿などをあしらう。





【うすくち】
アマダイとカブの難波煮

難波煮とは、魚や野菜をネギと一緒にしょうゆで煮る伝統的な調理法。うすくちで品良く仕上げて。

材料(2人分)
アマダイ*  半身(おろしたもの) * キンメダイやキンキでもよい。
カブ 聖護院かぶ 1/4個 、もしくは普通のカブ2個
昆布だし  300㎖    塩  少量
だし(昆布と鰹節)  300㎖
しぼりたてうすくち生しょうゆ   40㎖
マンジョウ本みりん(煮切る)   30㎖
九条ネギ(斜め小口切り)  1本   柚子(細切り)  少量

作り方
①  アマダイは約5㎝四方の大きさに切り、皮に切れ目を数本入れる。薄塩(分量外)を当てて、余計な水分と臭みを取り除く。
②  カブは、聖護院かぶならアマダイとほぼ同じ大きさに、普通のカブなら4等分して、昆布だしと塩で柔らかく煮る。
②  アマダイの表面を魚焼き網で炙る。
④  別鍋にだし(昆布と鰹節)を沸かして生しょうゆとみりんを加え、アマダイ、カブ、九条ネギをさっと煮合わせる。仕上げにうすくち生しょうゆ(分量外)を少量加える。
⑥  器に盛り付け、柚子をあしらう。

キッコーマン いつでも新鮮シリーズ
左からしぼりたて生しょうゆ(200ml、450ml)、しぼりたてうすくち生しょうゆ(200ml、450ml)、超特選丸大豆濃厚生しょうゆ(330ml)




SHOP DATA
◎ 白金台こばやし

東京都港区白金台5-11-3 バルビゾン91 1F
☎ 03-5420-5884
http://tokyo-kobayashi.com/






◎ キッコーマンお客様相談センター
0120-120-358( 月~金 9:00~17:00 祝日を除く)
https://www.kikkoman.co.jp






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