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グラスが引き出す食への好奇心

第2回「日本酒とグラスの関係」
デザイナー・日本酒キュレーター 人見久美子×木村硝子店 木村武史・祐太郎

Feature / MovementJan. 6, 2017

text by Reiko Kakimoto / photographs by Masahiro Goda

今回は木村硝子店の木村武史さん・祐太郎さんの親子が、デザイナーで日本酒キュレーターでもある人見久美子さんと鼎談します。向かったのは人見さんがソムリエを務める、中目黒の会員制日本酒バー。そこに祐太郎さんが持ってきたのは、できたばかりのガラスの酒器。人見さん大興奮のデザインとは? 


木村武史さん   木村硝子店代表取締役社長
1910年創業の木村硝子店の3代目社長。自社デザインのグラスを800以上作る同社の中で、氏も「サヴァ」シリーズなど、グラスのデザインに携わる。一目でガラス産地や品質を見分ける目があり、「絶対ガラス感」があるとは本人の評価。

木村祐太郎さん   木村硝子店代表取締役専務、グラスデザイナー・プランナー
木村硝子店の4代目。時代を超えて変わらない人とグラスの関わりや、時代を映し出すグラスの楽しみ方を見つめながら、独自の発想で生み出すグラスデザインに定評がある。

人見久美子さん   アートディレクター・グラフィックデザイナー / 日本酒キュレーター
Pratt Institute グラフィックデザイン科を卒業後、LLOYD&CO、サイトウマコトデザイン室にて経験を積み、2006年HI company設立。小さなブランドから大企業まで国内外のクライアントは多岐にわたる。 2005年、2010年グッドデザイン賞受賞。紙と印刷加工に詳しく多数のデザイン書籍に作品が掲載されている。そのかたわら日本酒愛が高じて国際利酒師に。SAKE COMPETITION 2016のゲスト審査員も務めた。


日本酒を五感で楽しむグラス




――こちらのお店では、数多くのグラスを日本酒の酒器としてお使いになっています。

人見:日本酒を飲む酒器というと、通常は陶器のおちょこですね。でも陶器で飲むと、スタイルとして”渋く”なりすぎるかなと思って。もちろん陶器に合うお酒もありますが、わたしの好きな、クリアで繊細な日本酒とは、グラスのクリアさとすごく合うんじゃないかと思います。キンキンに冷えた日本酒を薄いグラスで飲む、というのも好きですね。表面が冷えてうっすらと曇った見た目や、うすにごりなどの色も楽しめるし、感触もいいし、五感で楽しめると思います。

――どういったグラスを選んでいますか?

人見:木村硝子店の「バンビ」6オンスは形もすごく大好きで愛用しています。サイズ感もぴったり!足を持つと、冷たいお酒を入れた時の曇りが綺麗なまま続くので気に入っていて。こんなに短いのに足が本当に持ちやすい。

ボウルの下がすっきりと細くまとまっているから、足を持っても、こんなにエレガント。ボウル部分を持っても様になる。

木村祐太郎(以下、祐太郎):これワインのために作ったんですが、人見さんがおっしゃるように、短くても足を持てるようにデザインしました。ワイングラスって基本的に底が平らであるべきと言われているんですが、足を持つために逆ドロップのような形状にしています。

人見:お酒を注いでみていいですか? フルーティで上品な、秋田「ゆきの美人」を。(注ぎながら)綺麗ですね…。普段だったらもっと沢山入れるんですけど(笑)、今日はこのくらいで。

――グラスの美は液体が入って完成しますね。

人見:本当に! 「バンビ」ではスパークリングの日本酒を飲むのにも使います。錫の器も使いますが、やっぱりグラスが一番映えるので。木村社長は普段、どんな器をお使いですか?

日本酒バーのカウンターは、日本初、全面錫でできている。錫作家、秦世和さんの作品。光が反射し、グラスを綺麗に映し出す。

じわじわ好きになるグラス

木村武史(以下、木村):僕は家では「コンパクト」という、極うすのコップを使っています。コップで飲むのが僕、好きで。「コンパクト」は、軽いということはもちろん、毎日使うものだから「形」がない方がいいなと。毎日使うと「形がうるさいな」と思うものってあるでしょう? 僕はなるべく形のないものが好き。個人的な好みかもしれないけど。

――形がないということは、デコラティブではないということでしょうか?

木村:そうだね。でもデコラティブなものが嫌いかというと、そんなことは全くなくて。昔から僕は分厚いコップに憧れていてね。僕にはとてもデザインはできないから、(インハウスデザイナーの)三枝静代に頼んで「ミタテ」シリーズを作ってもらった。でもそれを気にいるかどうか判断できるまで時間がかかる。彼女が作るものの良し悪しは、瞬間的には僕にはわからない。ビッとこないんですよ。それで出来上がった商品も「ふーん」って感じ。それで1年2年経つうちに、やっぱりいいものだなと、じわじわ分かるようになる。時間がかかるんです。

右は柳原照広さんデザインの「トックリ」と器。左手奥は木村社長がビール用にデザインした「サヴァ」。ワインや日本酒にも使い勝手よし。


――じわじわと好きになるグラスがある?

木村:僕はそうだなあ。でも以前、僕とデザイナーの小松誠さんでニューヨークの近代美術館に行ったことがあったんだ。その時、日本のデザイナーが作ったものを色々と館長にお土産として持って行ったの。そしたら館長がすぐに5人のキュレーターを呼んできた。そしたら僕らの前でワイワイと議論が始まった。

人見:目の前で!

木村:そう。よく聞いていると、彼らは自分の好き嫌いだけで喧々諤々やっているんですよ。その中に一つ、小松誠さんの新作のティーカップが入っていたんだね。館長が「聴いていて分かるだろうけど(って俺、わかんないんだけどさ)、小松誠さんのティーカップはニューヨーク近代美術館のコレクションになると思うから、正式にエントリーしてくれ」って。
帰りに小松誠さんが僕に言うの。「つまんねえな。目の前であんな議論して、それでニューヨーク近代美術館にさっと入っちゃうんだもんなあ」って。でも僕は、見えないところで議論してグランプリですって突然言われるよか、目の前で若いキュレーターたちが好き、嫌いと話して多数決で決めて行く方式のほうが、すごく分かりやすくていいなって思ったね。

人見:ふーむ、確かに。

木村:それはいいなと思う一方、僕自身が判断するという場面になると、その時「全然ピンと来ないな」と思っていたものが、後になって「なんだ、こんなに良かったんだ」と思うことはよくあるので、その場での評価は、僕にはできない。それに、さっきの厚手のグラスにしても、そのグラスを毎日自分が使うかというと、そうでもないんですよ。やっぱり毎日は少しうるさい。でもいいグラスは、仕舞ってあっても、頭からそのグラスのことが離れないんだよね。

液体が入り完成するグラスの美。「直線的な『トックリ』にうすにごりのお酒を入れると、形状が浮き出して綺麗」と人見さん。

お酒を自己中心的に楽しめるグラス

――祐太郎さんのグラス選びはいかがですか?

祐太郎:僕は最近、グラスを選ばなくなってきちゃった。今のワイングラスはワインを分析するための機能を持っていますよね。でも皆にその機能は必要かなあ、って思っています。それより僕は見た目で可愛いとかかっこいい、綺麗とかと言う程度でよくて、あとは飲んでいる時の会話の楽しさ、時間を共有する人との時間の使い方の方が重要で、そうするとグラスなんてなんでもいいとすら思う。

木村:でも、「なんでもない」くらい「いい感じ」がいいよな。

祐太郎さんが好むのは、小さめの器。「昔はホテルの部屋に置いてあるワイングラスも小さいものが多かった」。確かに。


祐太郎:そうだね。まあ、やっぱり選んでいるのかな。サイズで言えば小さければ小さいほど、僕にとっては自分の求めている味になっていくので、小さいグラスを使うことが多いですね。特に日本酒に関しては小さい器で飲んだ方がおいしいし、ワインも大ぶりのグラスでない方がいい。

人見:それはどうしてですか?

祐太郎:これは僕の感覚ですけれど、グラスのサイズが小さいと、味が”締まる”感じがするんですね。それから、味を分析する前に、ストンと胃に落ちる感じがあるのも気に入っています。一つの飲み物として完成しているものを、ただそのまま「好き/嫌い」で楽しんでもいいんじゃないかな。お酒自身の味を表現したり分析したりするのはサプライヤーの仕事であり、飲む人はしなくてもいいわけで。口に入った瞬間にもっと自己中心的に楽しめていいと思っています。

グランメゾンで、日本酒を文化ごと楽しめる酒器とは?

――使い手としての話から、今度は作り手としてのお話を伺いましょう。さあ、先ほどから目の前にあり、皆が気になっているこの足つきの酒器は?

足がついているグラスは、グランメゾンでゲストが自由に動かせるもの。


祐太郎:この平盃と徳利は、テーブルクロスが敷いてあるようなグランメゾンで日本酒をサービスするというシーンをイメージして作りました。レストランで日本酒が提供される時って、ほぼワイングラスで出てくるわけですね。それがなんかしっくりこなくて。ワイングラスは香りを楽しむために設計しているので、いい香りだけでなく、好ましくない香りまで立ってしまうのも気になってしまいます。

人見:ああ、なるほど。

祐太郎:平盃で飲む方が美味しいよねとは思うものの、そのスタイルをグランメゾンに押し付けるわけにもいかない。ならばこれに足をつけて「徳利をグランメゾンに押し付ける」と(笑)。

人見:ふふふ。足つきの徳利から注ぐという体験もとても楽しそう。お酒を入れてみていいですか?

祐太郎:どうぞ。足をつけたのは、「差しつ差されつ」日本酒を飲むという楽しみとするためでもあって。今でこそお水をタンブラーで出すレストランも増えましたが、基本的に足がついていない容器はゲストは触って動かさないですよね。ワインボトルも触らない。今回は足をつけることで、ゲストが酌み交わせるようにしました。そういう文化的背景も知ってもらえたらと思っています。

お酒を酌み交わすという文化ごと、楽しんでもらいたいから。


人見:(徳利に日本酒を注ぎ入れて)素敵ですー!繊細で、美しいですね。

木村:僕の友人の息子がシンガポールですし職人をしていて、祐太郎が2度ほど行っているんです。その彼が平盃が欲しいと盛んに言うんです。日本酒を飲むなら平盃だと。

祐太郎:(深くうなづいて)平盃や徳利は、どうしても「和」になりすぎてしまうんですね。だから外国人にどう受け入れてもらうかを考えると、こういう道具も作らないと日本酒そのものの愉しみ方はなかなか伝わらない。

人見:この酒器には、日本の食文化までを伝えようという気概が伝わってきます。

祐太郎:外国の方が日本に来たときって、連日和食だと疲れてしまって、母国の料理を食べに行くというシーンはよくあるんですよね。その時に、こうした日本文化の片鱗をプレゼンテーションできるといいだろうな、とも思っています。

木村:祐太郎が作るもので、僕は滅多なことでは「いい」と言わないんだけど、これは初めて「おっ、いいじゃないか」って、褒めたんだ。ただ僕だったらこう作ると言う新しいアイデアも生まれているけどね(笑)。

――ライバルなんですね。

人見:平盃のサイズ感も最高です。

祐太郎:盃がカクテルグラスのように見えないか、サンプルが上がるまでドキドキしました。サイズが小さいのでそうは見えずに一安心しましたね。

人見:平盃はどこを持つといいでしょう?

祐太郎:盃の部分に手を添えるとエレガント。

木村:ワイングラスも、ボウル部分を持つのが外国では正式です。

小ぶりのシャンパングラスを持っているようなエレガントさ。口が開いているから、香りもこもらず、ふわりと広がる。


人見:このグラスは持つだけで美しく、エレガントになれますね。外国へのお土産にもぴったりですね、日本酒とセットで。

祐太郎:日本酒の楽しみ方を押し付ける代わりに、道具は向こうのスタイルに合わせてできたもの。使い方によっては熱燗も入れられます。

人見:ええっ! それは素敵! 近々、試してみますね。

会員制日本酒バー ◯  (住所・電話番号非公開)
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