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MOЁT & CHANDON “GRAND VINTAGE ROSÉ 2008”

際立つバランスと美しい酸味

Feature / MovementAug. 6, 2016

text by Tadayuki Yanagi

「モエ・エ・シャンドン グラン ヴィンテージ ロゼ 2008」がリリースされました。
このヴィンテージの持ち味であるピュアな酸と鮮やかな色彩には、醸造最高責任者のブノワ・ゴエズ氏のシェフ・ド・カーヴとしての腕の見せ所が詰まっています。



1743年創立のモエ・エ・シャンドンにとって、史上41番目のヴィンテージ・ロゼとなる2008年。通例ならブランが先か、もしくはブランとロゼ同時リリースの「グラン ヴィンテージ」が、今回はブランに先駆けて、ロゼから披露された。その理由はふたつ。まず一つ目は世界的なロゼ人気である。
「私がこの世界に入った20年前まで、シャンパン全体でロゼの占める割合はたった3%でした。ところが今や10%。モエ・エ・シャンドンにいたっては20%にも及びます」と、シェフ・ド・カーヴのブノワ・ゴエズが言う。そのようなロゼ人気によって、06年のグラン ヴィンテージはブランよりもロゼが先に終売と相成り、イレギュラーながら08年はロゼが先にリリースされたのだ。
もうひとつの理由は、08年というヴィンテージを特徴づけるシャープな酸である。08年はここ10年で最も寒い年だった。特に夜の気温が低く、総酸度は1リットルあたり8.6グラムと、平年より1グラムも高かったという。

冷涼に推移した2008年は、“クラシックな”ヴィンテージ。潜在アルコール度数は9.8%と平均的だが、8.6g/lの総酸度はここ10年で最も高く、過去のヴィンテージでは98年や88年とよく似ているという。ピノ・ノワール46%(うち20%が赤ワイン)、シャルドネ32%、ムニエ22%のアサンブラージュ。2015年4月に澱抜きを行い、ドザージュは5g/lと控えめ。柔らかな果実味とピュアな酸味が見事な調和を見せる。

「この厳しい酸味を抑え、モエ・エ・シャンドンらしい柔かみをどう表現するかが、私たちにとって大きな課題となりました」とブノワ。そこで特に酸の強いシャルドネの比率を控えめにアサンブラージュ。攻撃的な酸味を封じ込めたが、ブランのほうはまだ少々熟成の時間を要するようだ。「20%含まれる赤ワインがシャンパンに丸みを与えてくれるので、ロゼはひと足早く飲み頃を迎えたのです」と語る。

ピュアな酸味

これには近年、モエ・エ・シャンドンが取り組んできた赤ワイン醸造の成果も表れている。歴史的に上質な赤ワインが生まれる、アイ、ブージィ、ヴェルズネなどの特級畑に投資をし、樹齢の高い樹を選んだ上で、夏期剪定によって収量を制限。赤ワインの生産に必要とされる倍の面積の畑を用意することで、ブドウの選択に困らなくなった。さらに06年には、エペルネに赤ワイン専用の醸造施設が完成。未熟な青っぽさを出さず、精密な抽出が可能になったという。


08年のグラン ヴィンテージ ロゼのお披露目に、グラン ヴィンテージ コレクションから2006年ロゼ、1998年ロゼ、1988年ロゼも登場し、ディナーのテーブルがロゼ一色に染まった。

7年の瓶内熟成期間を経てリリースされた08年のグラン ヴィンテージ ロゼをひと言で表現するなら「バランス」であろう。やや深みを増したサーモンピンクの色調が実に鮮やか。バラを思わせるフローラルなアロマに、ピンクグレープフルーツの柑橘香、ラズベリーやグロゼイユといった赤い果実の香りも鼻腔をかすめる。口に含むと馥郁とした果実味が舌先を丸く包み、その後、このヴィンテージの特徴であるピュアな酸味が広がっていく。奥行きが深く、レイヤーが幾重にも折り重なり、余韻も長い。

料理を選ばない1本

グラン ヴィンテージのコンセプトに則り、その年ならではのスタイルが自由に表現された08年。果実味たっぷりでパワフルなスタイルの06年とは、まるで月と太陽のように対照的である。しかしながらこのふたつのグラン ヴィンテージ ロゼの品種構成は極めてよく似ており、共にシャルドネの比率は低め。06年が33%なのに対し、08年は32%と、わずか1ポイントの差でしかない。

ところが、シャルドネを抑えた理由は正反対。08年は酸味を柔らげるのが目的だが、06年は過熟気味だったからである。足りないフレッシュネスはムニエの渋み成分で補ったとブノワは語る。これがシャンパンにおけるアサンブラージュの妙であり、シェフ・ド・カーヴが最も腕をふるう部分なのである。


日本橋のフランス料理店「La Paix」の松本一平シェフによる「金目鯛の鱗焼き、とうもろこし、ジロール、サラダ菜のソテー添え」。金目鯛の皮目の色がグラン ヴィンテージ ロゼ 2008の美しい色合いと同調。鱗の香ばしさがシュール・リー由来のイースト香とマッチし、7年の熟成によって生まれる複雑なフレーバーとジロール茸の香りがきれいに絡み合う。素材の旨味を引き出した繊細な味付けは、ドザージュの控えめなこのシャンパンと好相性だ。

バランスに長け、酸味の美しい、08年のグラン ヴィンテージ ロゼは、料理を選ばない1本として、バーサティリティ(汎用性)に富む。押しつけがましさがないため、素材の風味を生かした、昨今の繊細で上品な料理にうまく同調することは必定。赤身の肉料理でさえ、酸味の利かせ方次第で見事に寄り添うだろう。
ブランとのデュエットを必ずしも必要とせず、ソロで完璧に満足させてしまうグラン ヴィンテージ ロゼ 2008。モエ・エ・シャンドンのロゼがなぜそれほどの人気を誇るのか、このキュヴェを味わえば、理由は自ずと見えてくる。


[商品に関する情報]
MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社 http://moet.jp


SHOP DATA

◎La Paix
東京都中央区日本橋室町1-9-4 B1F
☎ 03-6262-3959
11時~13時半LO 18時~21時LO 水曜休
東京メトロ三越前駅より徒歩1分






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