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北海シェフからの便り

vol.4 二ツ星「ドゥ・ヨンクマン」の夏の魚料理

Feature / SdgsAug. 20, 2018

text & photographs by Aya Ito

“Catch of the day(本日水揚げされたおすすめの魚)”

夏の「ドゥ・ヨンクマン」へ足を運んだ。本連載の主役である「北海シェフ協会」代表、フィリップ・クライス氏のレストランだ。ブルージュ市の中心街から2キロほどの郊外にある。2006年のオープンから12年の歳月を重ね、2012年よりニツ星を維持している。

この店を有名にしているのは、やはり「北海シェフ協会」を通してのフィリップの活動で、60%のお客が魚を食べることを期待してやってくるそうだ。
メニューには必ず“Catch of the day”による料理がある。つまり“本日水揚げされたおすすめの魚”が提案される。今日の“Catch of the day”は、Grondin、カサゴ目ホウボウ科の魚である。日本での呼び名はカナガシラ、漢字で金頭と書く。頭が硬い骨盤で覆われているため、こう呼ばれるという。ネットで調べてみると、「白身でおいしいが、ホウボウと比べると小さくて、ホウボウが都市部へ出荷されるのに、カナガシラは主に地元で消費される」と書かれていた。市場価値が低いのはベルギーも日本も同じようだ。「スズキに似た口当たりで、硬いが脂質は少ないので生でも食べられるし、タルタルにも向いている」とクライス氏は言う。
今回はメイン料理にすべく、フィレにしてサービスすることになった。塩コショウしてオリーブオイルに浸けて、真空調理で60℃・5分間加熱する。その後、皮目をフライパンで30秒ほど焼く。と、カリッとした皮と新鮮な身質が堪能できる料理に仕上がった。地元で採れたばかりのコルニション(小キュウリ)を炭火焼でグリルして添える。スモーキーでコリコリとした食感と、フレッシュな肉汁を蓄えた魚の相性がたまらなく優れていた。



これがカナガシラ(金頭)。名前通り、頭部が硬くいかつく見える。



カナガシラにフライパンで焼き目をつけるクライス氏。



採れたてのコルニッションを炭火でグリルして添えている。



『ゴー・ミヨ』も称える北海シェフ協会の活動。

こうした料理を生むことができるのは、その血のなすわざかもしれない。
クライス氏の祖父は漁師。父は、海沿いの町オスタンドでレストランを経営する料理人だった。父の店はミシュラン一ツ星の評価も得ていた。クライス氏は、少年の頃から父のような料理人になることが夢だったという。
調理師学校へ行くことを希望し、卒業した後に、ブルージュの名店で働き、三ツ星の「ドゥ・カルメリート」ではスーシェフに抜擢された。また、イギリスの三ツ星レストラン「ファット・ダック」などでも学んで、腕を磨いていった。勢いもあったろう、2006年に31歳で「ドゥ・ヨンクマン」をオープンすることになったが、オープン当初は、悩みの連続だったという。
偉大なシェフたちの教えから脱して、自分の料理を生み出すことがなかなかできなかった。試行錯誤していた時、たまたま日本を旅することになったのは運命だったかもしれない。日本の料理人たちが、素材の一つ一つの魂を蘇らせるように料理する姿勢に驚き、感銘を受けたのだった。
「自然を尊重する精神に触れて、自分にとって命を吹き込める対象は何だろうと自問自答した時に、真っ先に思い浮かんだのは、子供の頃から身近にあった“海”だったのです」と、クライス氏は話してくれる。

こうして、北海シェフ協会の物語が始まった。クライス氏の思いは、北海というローカル性を表現してくれる雑魚(忘れられた魚)を食卓に上らせること。それまで、どこの海でも捕れる高級魚ばかりがもてはやされ、お金にならない雑魚は水揚げされてもそのまま海に廃棄されていた。しかし、その雑魚にこそ、北海というテロワールを表現する力があるのではないか。そして、雑魚のおいしさを引き出して、価値を高めることができるのは自分たちシェフではないか。



地元でも食べてこなかった魚の料理を次々と開発してきた。



シェフという仕事を通して、様々なプロモーション活動、ロビー活動を行った。
たとえば、協会のメンバーたちに、雑魚を提供し、その魚の特徴や料理法について研究してもらう。それを北海シェフ協会のサイトなどを通して発表する。初めは、風当たりが強かったが、いろいろな組織を巻き込んでいくうちに、流通、商流の変化も顕著となり、今現在では協会のサポーターは1500人にものぼるという影響力のある組織となった。
ガイド『ゴー・ミヨ』は、2015年の最優秀シェフにクライス氏を選んだばかりでなく、北海シェフ協会という組織の推進力と魚のマーケットを変えた努力を讃え、サポートするために、様々な賞を授与している。2018年に初めて設けられた「キュリナリー・イノベーター」アワードでは、北海シェフ協会に、イノベーション機構賞を授与。クライス氏がイニシアティブをとるフード・イベント「フード・パラダイス・デー」にも、イノベーション・イベント賞を授けている。




知られていない様々な魚がテーブルを彩る。

「ドゥ・ヨンクマン」では、様々な魚を楽しむことができる。8種類もの突き出しはバラエティ豊かで楽しみに溢れるが、そのうち“Roussetteトラザメ”のマリネは定番の一品。アンチョビーのクリームを添えた“Vive(スズキ目トラキス科)”の天ぷらなど、あまり知られていない魚のレシピをあちこちに散りばめている。
夏のコースメニューは、涼を湛える皿ばかりだった。前菜は、近隣の農家が飼育した牛肉のタルタル。また、ラングスティーヌのタルタルが2番目の前菜に続き、鯖のフィレ、ナスをメインにした野菜料理、Catch of the dayのカナガシラ、そしてチョコレートとアイスクリームのデザートと続く。



ヤスリのような皮を持つトラザメがこんな愛らしいひと皿に仕立てられる。



“Vive(スズキ目トラキス科)”は天ぷらのように揚げて、アンチョビーのクリームを添えて。



鯖のフィレを使った料理。



トラザメは、クライス氏にとって思い入れのある魚だ。前回の記事でも書いたが、その皮はヤスリのよう(鮫皮を想像してほしい)なので、船の底を掃除するのに使われていた。市場に上ることはなく、漁師達が食料とした魚だったという。クライス氏は、祖父が作るトラザメのゼリー寄せが大好きだった。エイのような身質で、ニシンのような脂身もあるため、ニシンのマリネのように調理するのが「ドゥ・ヨンクマン」の定番だ。
5年前、トラザメは1kg40サンチームだった。が、今や5ユーロ以上と、価値を数段に高めたのは、こうしたクライス氏のメニューに載せるという地道な努力から始まったのだと感慨深い。
ドゥ・ヨンクマンでの食事には、彼の軌跡が刻まれている。 






<OUR CONTRIBUTION TO SDGs>
地球規模でおきている様々な課顆と向き合うため、国連は持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals) を採択し、解決に向けて動き出 しています 。料理通信社は、食の領域と深く関わるSDGs達成に繋がる事業を目指し、メディア活動を続けて参ります。

 





  








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