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魚を食卓から消さないために。

「サステナブルシーフード」について知ろう!前編

Feature / SdgsMay. 14, 2018

サンマが北上してこない、イカが記録的な不漁だ……。
海の異変を知らせるニュースが最近よく伝えられます。と同時に、「サステナブルシーフード」という言葉を目にするようになりました。今、魚と海に意識を傾けたほうがいい状況が起きています。「極端な言い方をすれば、魚がなくなるのが先か、皆が気付くのが先か」と言う人もいます。



森枝幹シェフがブラックバスを使う理由。

東京・世田谷のレストラン「サーモン&トラウト」は、レストランの食材としてはめずらしいブラックバスを使うことで知られます。
ブラックバスを使う理由として、「マグロなどの人気食材をあえて使わずに勝負しようというチャレンジ。特定の魚種への漁獲圧を下げたいんですね。ブラックバスは様々な社会的論点を背負わされている魚なので、人々の意識喚起という意味もあって」とシェフの森枝幹さんは言います。



ブラックバスは、滋賀県高島市、琵琶湖西岸にある川魚専門店から送られてくる。



森枝さんは「Chefs for the Blue」のメンバーです。Chefs for the Blueとは、「サステナブルシーフード」の普及を目指すシェフたちのグループ。
森枝さんが魚を取り巻く状況に目を向け始めたのは、『NATIONAL GEOGRAPHIC』の「90億人の食」シリーズで水産資源の枯渇に関する記事を読んだこと、そして、築地に行く度に耳にする「今日は魚がなくて」という言葉、それらが「自分の中で勝手にリンクした」のがきっかけでした。

特定の魚種への人気の集中は、高騰と乱獲の原因となります。
たとえば、マグロ。日本人のマグロ信仰が、マグロの高騰を生み、乱獲を引き起こし、枯渇をもたらす――という流れを作っていることは、残念ながら認めざるを得ない事実です。地球の反対側、大西洋クロマグロの資源量は厳しい漁獲規制によって回復したのに対して、太平洋クロマグロは絶滅危惧種に指定されているのです。
もっとも、大西洋黒マグロもまだ絶滅危惧種リストから消えてはいませんが。

日本は元々、魚種が豊富な国なのだから、マグロやノドグロといった人気の魚に執着せず、いろんな魚に目を向ければいい、と森枝さんは考えます。獲りすぎの心配がなくて、おいしい魚はいくらでもいる……。
ブラックバスを使う根底には、そんな思惑があります。

「何も言わずにサーブすると、ほとんど人が何の魚か当てられない。『淡白で品の良い魚ですね。スズキですか?』と尋ねてきます。ブラックバスと聞いて、まず驚きますね」
ブラックバスへの人々の反応を見る度に、森枝さんは思います、「魚の価値、魚の値段って、何に基づいているのだろう?」。

知らないから、知っているものに集中するんじゃないか? 人々がもっといろんな魚の魅力に気付いて、それまで見向きもされなかった魚の価値が上がっていったら、マグロ信仰も少しは打ち崩せるんじゃないか。特定の魚を獲り尽くすこともなくなるんじゃないか……。



サステナブルシーフード勉強会「Chefs for the Blue」

この10年、世界の漁獲量は横バイ状態が続いています。日本の漁獲量は減少傾向です。
2013年以降、太平洋クロマグロとニホンウナギが絶滅危惧種に指定されましたが、サンマ、サケ、イカ、タコの不漁もよく耳にします。主な原因は温暖化や乱獲です。

資源は減っている、でも、需要は増加が見込まれている、という現実もあります。人口の増加、所得水準や嗜好の変化、健康・安全志向、等々によって、魚へのニーズは増えていくのが必至。
その点、養殖の生産量は増えていて、今後、養殖に負う部分が大きくならざるを得ないと言えます。
そんな現実を直視して、未来も魚を食べ続けられるように、環境や生態系を壊すことなく、獲り過ぎない、自然を傷つけない方法で獲った魚が「サステナブルシーフード」と呼ばれます。

サステナブルシーフードへの取り組みは、今、世界各国で進行中です。
代表的な国として挙げられるのがノルウェー。漁師のライセンスを制限し、漁船ごとに漁獲量を割り当て、その割当量は科学的に割り出した量に抑えるといった制度を整えたことによって、持続可能な漁業を実現しています。
また、大西洋クロマグロやミナミマグロはいったん枯渇しかけたものの、国際間で漁獲枠を厳しく設定した結果、大幅に回復しました。
それらと比べると、日本は取り組みが遅れていると言えるかもしれません。産卵期前のマグロを獲ってしまうなど、まだまだ持続可能でない実態があります。

「Chefs for the Blue」の活動が本格的にスタートしたのは2017年春。メンバーは、東京・北参道「シンシア」の石井真介シェフをリーダーとして、「カンテサンス」岸田周三シェフ、「ジャンジョルジュ東京」米澤文雄シェフ、「ティルプス」田村浩二シェフなど。
勉強会やイベント、SNSでの情報発信など様々な活動を通して、水産資源の危機を訴え、サステナブルシーフードへの意識喚起を図っています。
今年1月には、アメリカの海洋保全団体Sea Web主催の国際的なプロジェクトコンペティションCo-Labで優勝。1万USドルの賞金と1年間の活動サポートを受ける権利を獲得しました。



Chefs for the Blueのメンバーが来日シェフを築地に案内するなどの活動も。



「Chefs for the Blueの立ち上げは、『知らないよね』から始まった」と語るのは、発起人であり、世話人を務めるジャーナリストの佐々木ひろこさんです。
ある取材を通して、それまで知らなかった日本の海の危機的状況を知り、周囲のシェフたちに話をすると、彼らも海の枯渇については「知らない」。そこで、東京海洋大学の勝川俊雄准教授を招いて勉強会を重ねるうちに「これはシェフたちから発信していくべきではないか」と、Chefs for the Blueが立ち上がったそうです。
だから、Chefs for the Blueのパンフレットには、キャッチフレーズとして「サステナブルシーフード勉強会」と入っている……。
そうです、私たちは海の状況を知らない。だから、知らなければならないのです。



Chefs for the Blueは、昨年11月19日、青山ファーマーズ・マーケットでイベントを開催。



危機の原因は食べ手にもある。

「サーモン&トラウト」を森枝さんと一緒に営むカヴィストの柿崎至恩さんは、釣りが長年の趣味。釣り人として各地の海を訪れては魚と向き合ってきました。また、森枝さんや他の仲間たちと創刊したフードカルチャー誌『RiCE』で魚を特集したりして、見えてきたこと、感じることがたくさんあると言います。

まず、「築地は情報が少なすぎる」。
どんな環境に生息していた魚なのか、今年の生息状況や回遊状況はどうか、この魚はどんな方法で捕獲されたのか、等々、“魚を取り巻く状況”が十分に伝達されているとは言いがたい。築地は魚を語るけど、海を語らない……。

反面、腕利きで熱意ある仲卸し店などは、飲食店(すなわち食べ手)が求める魚を、生息状況に関わらず揃えようとする。「それは、漁業者に対して獲るべきでない時に獲らせてしまうことになりかねない。つまり、乱獲を招く要因が潜んでいる」と指摘します。「それって、海や魚の都合ではなく、人間都合の漁ですよね」。
水産資源枯渇の原因は、こんなところにも隠れているのでしょう。



「サーモン&トラウト」の壁や棚を魚グッズが彩る。



「魚の世界は、慣習や経験則が優先されて、それらを疑ってみる人が少ない」と柿崎さんは感じるそうです。
柿崎さんが各地の海を訪れる中で発見したのが、南の魚のおいしさだったと言います。
「日本人の間では、南の魚より北の魚のほうがおいしいイメージがありますよね。冷たい海で鍛えられて身が締まっておいしい、と。でも、南の海の魚を食べ続けるうちに、あれ、そんなことないなって。ハワイのアカマンボウなど、マグロを超えるくらい味のいいものに出会えるし、奄美のイソマグロもおいしい」

漁場、漁師、料理人、この3つが揃うと、一気にクオリティが上がるというのが、柿崎さんの見方です。
つまり、魚自体のポテンシャルは高いのに、質を高める意識や技が漁師に乏しかったり、おいしく調理する料理人がいなかったりして、本領発揮されていない魚、価値を認められていない魚がまだまだいる。

そこで、森枝さんのブラックバスへとつながるわけです。
食べ手の人気が特定の魚種に集中しなければ、太平洋クロマグロが絶滅危惧種に指定されるといった事態も回避できたのではないか。だから、森枝さんはあえて、みんながそのおいしさを知らない魚をお皿の上にのせるのです。

おすし屋さんでみんながマグロと名の付いた魚ばかり食べ続けたら、太平洋からマグロ類はいなくなるでしょう。
食べ手が「何を選ぶか」で「水産資源が回復するのか、枯渇へと突き進むのか」は分かれます。
食べ手が欲しがるから、飲食店や小売店は獲るべき時期にない魚も揃えようとする。すると、漁業者も獲るべきでない時期に獲ってしまう。つまり、危機の原因は食べ手にもあります。

食べ手には、選ぶ権利があると同時に、選ぶ責任もある。
では、水産資源を守るために、私たちはどの魚を食べればいいのでしょうか?
その話はまた次回に――。






<OUR CONTRIBUTION TO SDGs>
地球規模でおきている様々な課顆と向き合うため、国連は持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals) を採択し、解決に向けて動き出 しています 。料理通信社は、食の領域と深く関わるSDGs達成に繋がる事業を目指し、メディア活動を続けて参ります。

 





  






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