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クリエイター・インタビュー

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PEOPLE / CREATOR

糸井重里(いとい・しげさと)「ほぼ日刊イトイ新聞」主宰

People / CreatorFeb. 17, 2016『料理通信』2011年12月号掲載

コピーライター、作詞家、ゲームクリエイター、インタビュアーほか、多方面で活躍している。
本人いわく「今の肩書は“ほぼ日新聞”」。
サイトを開設して13年、サイト内に広告バナーはなく、収入源は物販のみだ。
右肩上がりで、2010年度は売上高が13億円を超えた。
そんな糸井さんに聞く、「お金と仕事とクリエイション」の話。
text by Reiko Kakimoto
photograph by Hiroaki Ishii
『料理通信』2011年12月号掲載

使われてなんぼ。




雨の降る平日の夜、有楽町ロフトの手帳コーナーには絶え間なく客が訪れていた。中でも人々の足を止めているのは「ほぼ日手帳」だ。40種類ものバラエティ豊かな手帳カバーがあり、専用の文具や関連商品も揃う。テレビ画面からは、ほぼ日手帳のカバー


が中国の工場で縫製され、糸井重里さんらが企画会議を重ね、売り場に手帳が並ぶまでのメイキングムービーが、「Ohana」のほのぼの(でも、わくわく)とした音楽にのせて流れている。終わりまでじっと画面を眺めていた女性は、1冊を手に取り、レジに向かった。

生産は消費で完結する





01年に発売され、今では40万部を売り上げるという「ほぼ日手帳」。10年間で部数を30倍にまで伸ばした、ほぼ日の主力商品だ。ロフトで毎年開催されるイベント「もっと、手帳の話をしよう。」では、糸井さん自らが店頭に立ち、手帳ユーザー一人ひとりと熱く話し込む。その様子は、今年4月(2011年インタビュー当時)に発売された『BRUTUS』の「今日の糸井重里」特集内でも取り上げられた。
 この時、糸井さんは「お客さんと直接話すと〝生産は消費で完成する〞ということがよくわかる」と言っている。
「〝使われてナンボ〞ってことですね。買った人が書き込んだり、読んだり、思いついたりした時間が込められて手帳は完成する。僕らが売っているのは半完成品なんです」
 今年、東日本大震災の被害に遭って手帳をなくしてしまった人に、新しい手帳を送るというキャンペーンをした。1200件もの反応があった。感謝の気持ちと手帳に対する思いが綴られた被災者からのメールを中国の工場に送ると、縫製をしていた人々がその場で涙を流した。
「手帳を使う、売る、作る、考える。それぞれの立場の人が助け合ったり、迷惑をかけ合ったりしてやっているんですよね。だから全部、大事にしたい。自分がしていることが誰を悲しませ、誰を我慢させているかについて、年を重ねるごとに想像力が増してきました」
 ユーザーの声に真摯に耳を傾ける一方、おもねることはしない。
「手帳の機能をどれだけつけるかは、小説の中で恋愛をどう表現するかという問題と結局同じなんですよね。料理本でレシピをどれだけ細かく書くか、洋服の袖をどこでカットするかというのと同じく、表現の問題なんです。手帳にも毎年、多くの意見をいただきます。忘れてはいないけれど、全部は実現できない。なぜなら、ほぼ日手帳は僕の〝小説〞だから。似合わなければごめんね、でいいと思っています」

ドラッカーから学んだ〝顧客の創造〞





糸井さんはお金の問題について「ずっと興味があるけれど、怖かった」と話す。フリーランス時代は、年度の収支について税理士の話を聴く15分間が嫌で仕方なかった。
「当時は、悪い人だけがお金のことを考えてる、汚いことをしたほうが儲かる、って思っていたんです。でも、仕事をする土台の部分ですから、興味ないふりをしても嘘なんですよ」  ふと手に取ったドラッカーの書籍に「どんなミステリー小説よりも面白い」と開眼し、ほぼ日で「ドラッカー特集」を組んだ。ドラッカーから得たのは、〝顧客の創造〞ということ。顧客を奪い合うのではなく、顧客のクリエイションこそが仕事なのだという言葉は、その後の糸井さんの仕事を大きく発展させたという。システム手帳が全盛で、電子手帳に移行すると言われた時代に「ほぼ日手帳」を作れたのも、「自分たちが欲しいと思った」、つまり自分という顧客に気付いたからだ。

100%、意図的。





この10年間で、糸井さんはクリエイティブという概念を捉え直している。
「以前はクリエイターという〝人種〞を想定していて、『好きなことを仕事にしているやつは儲からなくていいだろう』と割を食っている社会だと思っていましたね。でも今は、クリエイティブというのは人種ではなく、〝人が行うとても素敵な行為〞のことだと感じています。東北の被災地では、漁師さんであれ、工場主さんであれ、クリエイティブ抜きに仕事を始められない。クリエイティブは混ぜ物のように、あらゆる場面に入り込んでいると意識しています」
 それと並行するように、かつて「鼠穴」と呼ばれる秘密基地で「自分と似た感性を集めて」活動をしていたほぼ日は、13年の歳月を経て「ちょっと違う感性の人とも友達になれる」開かれた場へと変容した。場の中心にいる糸井さんは誰よりも自由で、解放されているように見える。それって意図的ですか?
「100%、意図的です。意識してないとすぐに閉じちゃう。今年の社員研修で〝Don' t think. Feel.〞って言ったのも、自分がそうできていないからなんだよね」

糸井重里(いとい・しげさと)
1948年群馬県生まれ。法政大学文学部中退。コピーライターとして、「おいしい生活。」(西武百貨店、83年)、「忘れものを、届けにきました。」(となりのトトロ・火垂るの墓、88 年)、「くう ねる あそぶ」(日産自動車、89年)など数々の名コピーを生み出す。ほか、ゲーム制作、作詞、文筆(エッセイや小説)などの創作活動、著名人へのインタビューと幅広く活躍。98 年よりインターネット上に「ほぼ日刊イトイ新聞」( http://www.1101.com/)を開設。現在、1日の平均ページビューは約150万にのぼる。

本記事は、「EATING WITH CREATIVITY」をキャッチフレーズとする雑誌『料理通信』において、各界の第一線で活躍するクリエイターを取材した連載「クリエイター・インタビュー」からご紹介しています。テーマは「トップクリエイションには共通するものがある」。







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