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田丸雄一さん(たまる・ゆういち) 東京・調布「Maruta」オーナー

People / PioneerOct. 6, 2018『料理通信』2018年11月号掲載

今年3月、東京・調布にオープンしたレストラン「Maruta」。
都心から少し離れた立地を活かす店づくりが溌剌とした空気を生み、評判を呼んでいる。
テーマは、「薪、シェア、野性、ローカルファースト」。
暖炉の薪で焼き上げられた料理を、ロングテーブルに座った者同士がシェアして食べる。
調布や三鷹、青梅、八王子など、地元や東京近郊の生産者の食材をメインに、庭で採れた野菜やハーブが彩りを添える。
庭の畑の収穫物は、時に発酵が施されてドリンクとして供されることもある。
オーナーの田丸雄一さんは、実は飲食が本業ではない。
だが、レストランだから伝えられることがあると考え、2年という準備期間をかけてこの店を立ち上げた。
text by Sawako Kimijima, photograph(TOP写真のみ) by Sai Santo




心配を伝えるために。

田丸雄一さんと話をしていると、「ふるまい」という言葉がよく登場する。人々の「ふるまい」を気に掛けていることが、話ぶりに滲み出ている。東京・調布にレストラン「Maruta」を開いたのも人々の「ふるまい」に働きかけたいと思ったからだ。

本業は空間緑化。“自然と人をつなぐグリーンプラットフォーム”として、一般的な造園から、ビルの屋上に庭を作ったり、壁面を緑で覆ったり、観葉植物の小売りやリースなどを手掛けている。
「自然が仕事仲間です。その仕事の中で、“例年通り”という言葉が使えなくなってきた。植物やそこを棲みかとする生き物の変化が激しくなっているんですね」
原因は温暖化であり、責任は人間にある。しかし、誰も自分のせいとは日頃意識しない。
「しかも、人間の凄さは慣れること。異常も続けば常態化する」

そして、もうひとつ、田丸さんが心配するのは、連鎖に対する意識の薄さだ。
「傷んでいるからといって、簡単に木を切る。木を切れば、そこに棲んでいた虫ややってくる鳥や、根を張っている土壌にも影響が出ます。そういう連鎖を考えずして行動してしまう。生命のつながりを見極める力が弱くなっていると感じています」

レストランでは、目の前の食材の顔ぶれや状態に自ずと自然の様相が映し出される。天候や地球の体調次第で出来不出来が生じる。入荷されないこともしばしばだ。レストランの営みを通して、自分たちは連鎖の中にいるという事実を伝えられるのではないかと田丸さんは考えた。そして、連鎖が意識されるようになって、人々の「ふるまい」に変化がもたらされたらと願うのだ。


本業である緑化事業の生産緑地だった場所を2年がかりでレストランに転向。環境に配慮した住宅に与えられる認証制度「LEED HOMES」のプラチナを取得した。窓の向こうは野菜やハーブが繁る菜園と自宅。自宅の屋根にはソーラーパネルを設置し、雨水を溜めてトイレや庭の水撒きに使う。




スローフラワー、スローグリーン。
1905年創業という老舗企業の三代目である。社名は株式会社グリーン・ワイズ。「創業当初からイノベーティブだったようです」。造園の傍ら、日本初の貸植木業(観葉植物のレンタル)をスタートさせ、百貨店のクリスマスの装飾や屋上庭園を請け負った。TV放送が開始されるや撮影スタジオの舞台装置の造園を任されるなど、他に先駆けてグリーンの居場所を作ってきた。ちなみにNHKの大河ドラマ「西郷どん」、連続テレビ小説「半分、青い。」の造園もグリーン・ワイズが手掛けている。2000年頃からグリーンがインテリア化したムーブメントにも一役買っている。

今、田丸さんが力を入れるのは、スローフラワーとスローグリーンだ。
「切り花のオーガニック栽培は市場全体の1割以下というマイノリティ。まだまだほとんどが化石燃料を使って加温する温室での促成栽培で作られています」
運搬時、効率的に段ボールに詰めるため、曲がらないように茎を糸で吊って育てる水耕栽培が主流だというから、スーパーに並ぶ真っ直ぐで長さや太さが揃ったキュウリやネギとどこか似ている。
露地の畑や庭で、農薬に頼らずに栽培されるスローフラワーは、茎が曲がっていたり、葉に虫食いがあったり、背の高さもまちまち。運ぶのも厄介かもしれない。でも、植物本来の力で地面に根付いて育った力強さに溢れて美しいと田丸さんは思う。

一方のスローグリーンは、人間が自然との共生関係を育んでいく地域循環型の暮らしを意味する。事業のパートナーや地域と共に向き合わねばならない困難さはあるが、異ジャンルのスロームーブメントとの融合など、社会全体と連帯できる可能性がある。
そもそも地球は空でつながっているのだからと、田丸さんは昨年からミラノ・サローネにスローグリーンをテーマとして出展し始めた。そして、ミラノに恒常的な活動拠点としてグリーン・ワイズ イタリーを設立した。
レストランが循環させる。
「ヒグラシの声を聞くのが世界一好き」
恵比寿で生まれ、1歳から世田谷下馬で育った。外を駆けずり回って、セミ、トンボ、カエルと戯れた。セミの解剖やトンボに爆竹を付けたり、やんちゃも数知れず。
「生命に直接触れる機会が多かった。生命との付き合い方を遊びの中で学びました」
庭の桜の枝にロープを吊るし、板を渡してブランコを作ったことも忘れられない。家の周りに遊びの種は尽きなかった。
「どの家の井戸水がおいしいか、どこの柿の木の実が甘いか、知り尽してましたね。その代わり、毎日のように、自分の親じゃない大人に怒られていました(笑)」

自分を取り巻く自然と人の社会があって、それらの構成要素はみなつながっていた。
「Marutaを、自然、生き物、天候、そして、地域の人々、すべてがつながっていることが体感できる場にしたい」
だから、できるかぎり地元の食材を使うし、連鎖を物語ってくれる食材を使いたい。調布や三鷹で栽培された野菜。調布飛行場から届いてくる伊豆七島で水揚げされた魚。役目を終えたアイガモ農法のアイガモや経産牛、害獣駆除の鹿や猪を中心に選ぶ。


野菜や肉を薪火で調理。炎が食材をいっそう香り高くする。特注の暖炉は、熾した火を段階的かつ効率的に使えるように、構造が工夫されている。


建物には古木や間伐材、大谷石、それとケボニー化された杉の木を使った。ケボニー化とは、柔らかい針葉樹材(ソフトウッド)を硬くて腐朽に強い広葉樹材(ハードウッド)のような材質に変える技術。針葉樹は従来、内装材や外構材として硬度が不十分とされてきたが、ケボニー化によって需要促進が期待される。自ら積極的に使うことで、その認知が上がり、放置林が少しでも減ってくれたらと思う。針葉樹が減って、広葉樹が増えたら、鹿や猪が食べるドングリも増えて、里へ下りて来なくなる。
「レストランには食材ばかりでなく知恵やお金を循環させる働きがあると思う」
つい心配してしまう。
人間よりも長く生きる木を相手にしているせいか、いつも先を見ている。22世紀から逆算してやっていることも多い。今、身の回りで起きていることがこれから先の何を意味するのか、つい心配してしまう。
「みんなはどう感じているんだろうか、知りたいんです」
レストランはそのための場でもある。


庭の菜園はもちろんオーガニックで、コンパニオン・プランツ(互いの成長に良い影響を与え合う共存作物)を組み合わせて栽培。一方、セラーでは、瓶詰めされた野菜や果物が発酵中。やがて料理やドリンクに活用される。


「日常が備えになる」を掲げて、本社敷地内にある畑で採れた野菜で保存食を作り、社内や地域の交流イベントで活用する「保存食プロジェクト」をやってきた。
「年内にも、電気を使わず火だけで調理するイベントを開く予定です。庭に穴を掘って、石を組めば、かまどが作れる。火を熾して、自家栽培の野菜を調理しよう、と」
楽しみながら、生きていく知恵と力が身につき、人間が元々持っていた野性の感覚を取り戻し、自立的に生きていく力を養えるような、そんなプロジェクトにしたいと考えている。


◎ Maruta
東京都調布市深大寺北町1-20-1
☎ 042-444-3511
昼 12:00~13:00LO(土曜、日曜、祝日のみ)
夜 一部18:30~、二部19:30~
完全予約制、一斉スタート、いずれも30分前にドアオープン
月曜、火曜休
小田急バス「深大寺北町」バス停前
https://www.maruta.green/

田丸雄一(たまる・ゆういち)
1965年生まれ。東京都出身。室内外の緑化、テレビ舞台造園、植木や観葉植物の販売などを手掛ける会社の3代目。2002年、代表に就任。「環境共生」を理念として、自然の営みとつながりを意識した街づくりやライフスタイルを提唱し、緑の効用を広く捉えた取り組みを打ち出している。





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