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佐藤美恵子さん(さとう・みえこ)仏ワーキングホリデー就労サポート
第4話「若き料理人を支える“お母さん業”」(全5話)

People / PioneerJun. 6, 2016

こんな制度が欲しかった





2001年から7年間、佐藤さんはフランス観光を中心とした旅行会社3社を経験します。
その中で佐藤さんの目を開かせたのは、フランスで働きたいという若者を応援する「ワーキングホリデー」の存在。
「自分が若い頃に、こんな制度があればよかったのに」

一方で、日本の若者が、甘やかされて育てられているようにも見えたそうです。
フランスの厳しさにすぐに音を上げ、諦めて、本当の力を出し切る前に挫折してしまう。
Photographs by Masahiro Goda,Text by Reiko Kakimoto




ワーキングホリデーの斡旋業務ですから、多くの人数を斡旋するほど、売上は上がります。しかしそれよりも、一人ひとりの「成功体験」を増やしたい。
フランスを嫌いになって、みじめな思いで帰ってくるよりも、挫折を乗り越えて成長して帰ってきてほしい。「行ってよかった」と思ってほしい。
何より、フランスをもっと好きになって帰ってきてほしい。

そんな思いからも、佐藤さんは独立を決心します。
「1000の喜び(mille joies)」という社名をつけて。

修業先は日本人のいない、星なしレストラン





佐藤さんの主な業務のひとつは、修業先探し。常にアンテナを張り、人気のレストランをリストアップし、限られたフランス滞在中、片っ端から食べて回ります。
気になるレストランやパティスリーを書き記したメモ。ワーキングホリデーの就労先として適切かどうか、1軒1軒訪ねて回る。




星つきレストランには行きません。
「技術もあって根気づよい日本人は、どこのレストランでも欲しい人材。星のついたレストランには必ず厨房に日本人の料理人がいます」
料理を食べても「日本人が作った味」はわかる、と佐藤さん。
「繊細な味で、私は本来好きなんです。けれどそれでは、わざわざ日本から修業に行く意味がないでしょう?」

「ここは」と思う店があれば、シェフやマダムと会話をする中で、人格から家族構成まで確認。総合して安心と判断する店にのみ、受け入れの交渉を進めます。

フランス滞在は、実に年の3分の1。
こうして修業先を確保しつつ、もう一つの大きな仕事が待っています。
それは、この信頼すべき店に預ける若者を「鍛え直す」ことです。

第二の母になる





ワーキングホリデー希望者には、佐藤さん自らが面接をします。
どれだけ真剣に渡仏を考えているか、モチベーションは高いか、向こうの生活に耐えられるだけのタフさはあるか、ガッツはあるか、コミュニケーション力はあるか――。

「語学力よりも、大事なのはコミュニケーション能力があるかどうか。精神性や性格的なところです。フランス社会は話してなんぼ。日本のように『慮る』ような文化はありません。素直で実直な子は、多少語学力に不安があっても伸びしろがありますが、表面だけ取り繕うような、妙に愛想がいい子は苦労しますね」
明らかに難しいと判断した場合は、依頼を断ることもあります。

料理学校の研修制度のように「お客」として厨房に入るのではなく、無給で不法に潜り込むのでもなく、正規の環境で働くためには、そこで給料をもらっているフランス人と同じかそれ以上のことをしなくてはならない、というのが佐藤さんの考え。
Photograph by Mieko Sato
フランスと日本の時刻が同時にわかる時計を、いつも付けている。携帯電話は日本用とフランス用の2種類を持つ。




登録後は、語学レベルをチェックして、すぐに就労させるか現地の語学学校に通わせるかを判断。能力や状況に応じたプログラムを作り、渡仏するまで叱咤し続けるなかで、フランス人と互角に渡り合える強い精神力をつけていきます。
「妥協しない、言い訳しないで、これ以上ないという気持ちで物事にぶつかってほしいと思います。そういう人をフランス人は受け入れてくれるはずだから」

フランスでの滞在が少しでも実り多いものであるように、佐藤さんは心を鬼にして接します。その姿は、まるで第二の母のよう。かくして手塩にかけて育てた「子どもたち」が、フランスでさらに鍛え上げられ、精悍になって帰国することが、佐藤さんにとっては何よりの喜びです。

会社名は「ミルジョワ企画」。“mille joies”の直訳は“1000の喜び”だと書きました。でも、佐藤さんが訳すとこうなります。“歓喜の中の大歓喜”と――。


Photographs by Mieko Sato
ワーキングホリデー就労者のパリ5区のショコラティエで。フランスを訪ねた際はできるかぎり店に顔を出し、滞在や就労に問題がないか、様子を確認する。




「徹底的につきあうので、ワーキングホリデーのコーディネートは1年に10人程度が限界です。決して儲かる仕事ではありません。でも、若い子たちの成長を見られることが、お金以上の喜びをもたらしてくれる。こういう子たちが日本に戻ってきて、日本が少しでも良くなればという、私なりの国際貢献でもあるのです」

そして、この先





佐藤さんは2014年に、日本語教師の資格をとりました。
これからはフランス人にも日本を紹介する、双方向的な事業に展開する予定です。
いつか鼻で笑われた「日仏の架け橋になる」「フランスを日本に紹介したい」という夢は、まだ夢物語だったあの時よりもずっと大きく、花開いています。

料理人やパティシエのワーキングホリデーのコーディネート業の他に、フランス長期滞在のプランニング、フランスで行われるフラワーアート審査会のコーディネートなども手がける佐藤さん。
活動の広さは、フランスのエスプリを体現しているようでもあります。

「フランスでは、料理人やパティシエだからといって教養がないということはありません。音楽、文学、映画、美術、社会・・・あらゆることに興味を開き、話ができてこそ一流。“物知り/知性が高い(intelligent)”ではなく、“教養がある(intellectual)”人を育てたいと思うのです」

教養ある人が日本に増えて、もっといい国になりますように。
佐藤さんの仕事は、そのための「お母さん業」でもあるのです。




佐藤美恵子(さとう・みえこ)
大学卒業後に大手企業に6年務め、30歳を目前にフランス留学へ。帰国後、様々な職種を経験し、フランス観光業に携わる。2008年、仏ワーキングホリデーの就労サポートを主な事業とする「ミルジョワ企画」設立。ビザの取得から渡仏準備、飲食店など就労先の紹介、滞在中のケアまで密なサポートを行い、若き料理人たちを支える。





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