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吉岡知子さん(よしおか・ともこ) オカズデザイン
第4話「時間がおいしくしてくれる」(全5話)

People / PioneerMar. 14, 2016

時間って、すごい





多方面から仕事の依頼を受ける一方、吉岡さんが月に一度、オカズデザインのアトリエで主催するイベントがあります。アトリエの名前は「カモシカ」。“醸し”の意味を込めてつけました。

なぜ“醸し”なのでしょう。
必ずしも、発酵がどうの、菌がどうのといったことではありません。それは、「時間」の持つ力、価値を意味します。オカズデザインの掲げるコンセプトがまさに、「時間がおいしくしてくれるもの」なのです。

吉岡さんが「時間」の力に気づいたのは、ケータリングやイベントの仕込みをする中でのことでした。

「うちは冷蔵庫も小さいですし、人数も少ない。だから仕込みは1週間近く、長くて1カ月前から始めなくてはなりません。すると必然的に“置いておく”工程の入る料理が重宝します。下味をつけて一晩、鍋
Photograph by Tsunenori Yamashita




でコトコト数時間、干して数日、漬けて数週間。すると私の意図を越えて、料理が自然においしくなってくれたんです」。
Photograph by Tsunenori Yamashita
塩漬け→乾燥→薫製→焼成という、試行錯誤から独自に編み出した工程で作る自家製ハム。食べる日の1週間前から仕込みを始める。




NHK『きょうの料理ビギナーズ』の連載をまとめた書籍『オカズデザインの、つくっておく、とっておく』(NHK出版)の冒頭では、こんなふうに綴っています。

それぞれの個性を持ったさまざまな食材や調味料がゆっくり一つになって、
おおらかで力強い味わいになっていきます。
入りすぎていた肩の力を抜いてくれて、いちばん大事にしたい軸は濃密に、味わいは澄んでくる。
時間って本当にすごい、と毎回うなっています。


第一話でお話した、吉岡さんが考える「おいしさ」。
“食べた人の中に水のように入っていく料理”、“気分をアゲるのではなく、鎮める料理”は、「時間」なくしては作れないのです。

理屈や説明は後付け





今、書店で売れているレシピは、「時短」や「簡単」
を謳うものが中心です。そんな中で、あえて「時間をかける」ことの価値を、吉岡さんは伝えます。
かと言って、ロハス的な思考とも、おばあちゃんの知恵みたいなものでもない。どこかの国の郷土料理でもありません。
もちろん共通する部分はあり、実際、吉岡さんもそれらに共感し、そこから多くの学びを得ているはずです。

しかし、その「時間」は、その料理にとって必要であると吉岡さんが考えるからかけるのであって、時間をかければよいというわけでも、どこかの誰かがそうしていたからかけるわけでもありません。
あくまで、吉岡さん自身が、試作を繰り返す中で導き出した結論。
それ以外の理屈や説明は、後付けにすぎないのです。

食べればわかる、使えばわかる





「カモシカ」で行われるイベントの内容は、様々です。

イタリアのクラフトビールを主役に、わいわい楽しめる料理の数々と、切りたての極上生ハム、艶やかなアコーディオンの生演奏を届ける“LOVE BEER!”。
陶芸作家の個展を兼ねた“緑”の会では、作品をイメージしたスペシャルオーダーのブレンドコーヒーと、「試行錯誤すること数カ月、やっと完成した理想のシュークリーム」をご一緒に。
オカズデザイン愛用の仕事着を手掛ける作家の受注展示会“シャツとエプロン”では、そのテイストに合ったパンとコーヒー、ワインをセレクトし、自家製キーマカレーのランチを用意しました。
イタリアのクラフトビールのイベント「LOVE BEER」!のメニュー表。ビールを飲んで感じた想いもメニューにしたためられる。






食材やお酒がテーマなら、まず食べてもらう、飲んでもらう。器なら、見るだけでなく、料理を盛って使ってもらう。
「説明のために言葉を使う時もありますが、使わないことも多いですね。その良さは、食べてもらえば、使ってもらえばわかるはずなので」。

寝かせて、深める





いずれの会も、オカズデザインが心から共感し、敬愛する作り手を招いて行われます。
テーマは、「ずっと使っていけるもの、食べ続けたいと思うもの。シンプルで普遍的だけれど、作り手の個性も感じられるもの」。そして、彼らの作品と「同じ色彩を感じる」菓子や飲み物を取り寄せ、あるいは特別にオーダーしたり、作り手をゲストに呼んで、自ら時間をかけて仕込んだ料理と一緒に提供する。
まぎれもない“もてなし”です。

「いただいた仕事に応えていくだけでなく、自分たちの軸になる仕事を一つ続けていきたくて」。

だから、企画を練るにも、じっくり時間をかけます。「その作り手と、オカズデザインにしかできないことは、何だろう」と。長いもので2年~3年。「恋愛と同じで、一気に盛り上がる時期もあれば、倦怠期もある。そういう時は、無理に企画を進めず、時間を置くこともあります」。
寝かせている間に、内容が深まったり、予期せぬ面白い展開が開けたり。企画そのものも、作り手との関係も、大切に温めて、育てていくのです。

デザインチームであるという、オリジナリティ





吉岡さんが、料理の仕事を、「オカズデザイン」というデザインチームで続けていく理由、それが「カモシカ」のイベントに象徴されているような気がします。
「料理もデザインも、本当に良いものは変わらない」。
ひょっとしたら吉岡さんにとって、料理は一つの手段にすぎないのかもしれません。
本当に良いもの、心地よいもので、人の心と体をほぐしたい。
料理は、“もてなし”の一つの形。

オカズデザインは、職人集団であると同時に、一つのセレクトショップのようでもあります。
人は、彼らの手が生み出す作品そのものだけでなく、「オカズデザイン」という世界観、価値観に共感する。

フードコーディネーターでも、フードスタイリストでもなく、料理研究家でもない。
「オカズデザイン」料理長という、デザインに軸足を置いたスタンスこそが、料理の世界で、彼女の存在感を際立たせているものかもしれません。




<オカズデザインのグラフィックデザインの仕事例>
Photograph by Tsunenori Yamashita
中川ちえさんの器と暮らしのお店「in-kyo」のウェブサイトをデザイン。




事例2)WEB
沼津の雑貨店 「hal」のウェブサイトをデザイン。




事例3)CDジャケット
ボサノヴァやポップスを中心に、粋な音楽を提供しているvice versaのフルアルバム「月とコーヒー」のジャケット、歌詞カード等CD全体のデザインを担当。




事例4)プロダクトデザイン
陶芸家・吉村和美氏とコラボレーションしたスープ皿






吉岡知子(よしおか・ともこ)
料理とグラフィックのデザイン会社「オカズデザイン」料理長。雑誌&WEBでのレシピ 制作、映画やテレビドラマでの料理制作・監修、ケータリングなどを料理とデザインの両 方から手掛ける。プロダクトデザインや料理本の出版など、活躍の場は多岐にわたる。







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