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FEATURE / MOVEMENT

ガストロノミー界の新勢力~ラテンアメリカ現地ルポ(全4回) Vol2 未知の味覚と新しい才能の発見 | 料理通信

1970.01.01

FEATURE / WORLD GASTRONOMY

講演を行うアレックス・アタラ


アマゾンの食材をベースにした高級料理店


リマで開催されたミスチュラ国際料理大会で講演したアレックス・アタラは「いつもアマゾンのことや地元の料理技法について考えている」と語り、「これはわたしたちのものだから」と言い添えた。アタラがサンパウロに革新的なレストラン「D.O.M.」をオープンした1999年当時、アマゾンの食材をベースにした高級料理店というコンセプトはまだ存在しなかった。その後に生まれたこのコンセプトは、ラテンアメリカの食に新しいムーブメントを起す引き金の役割を果たし、アタラはその先頭に立ってきた。アタラがミスチュラで披露したのは、カラフルな花のセビーチェ。レモン果汁、チリ、ブラジル在来種のハチが作る水分の多い(通常20%に対し36%)ハチミツを使った一皿だ。


伝統手法で食材から毒を取り除く



「マラバール」によるタコとユッカの7つのテクスチャー

地元の食材を使い、現代的なキッチンにいにしえの手法をとり入れるシェフがラテンアメリカ全土に登場している。「ラテンアメリカのベストレストラン50」で第7位となったレストラン「マラバール」のペドロ・ミゲル・スキアッフィーノは、この10年をペルーアンデス山脈とアマゾンでとれる食材の発掘と研究に費やしてきた。スキアッフィーノがマラバールで使う、とりわけ大胆な食材は、キャッサバの根の仲間で毒性が強いラ・ユッカ・ブラバだ。ユッカの毒を取り除く伝統的な手法は、すりつぶした根に水を混ぜ、6日間布で濾してからペーストをヘビのような形のヤシの葉(マタフリオと呼ばれる)でしっかり絞ることだ。こうしてできた濃厚な液体は、リッチな魚用ソースのベースとなり、絞りかすは小麦粉のような粉末となる。

ペルー産の食材のみに挑戦「セントラル」



「セントラル」のマルティネス夫妻

ロンドンに出店したレストラン「リマ」が最近ミシュランの一ツ星を獲得したビルヒリオ・マルティネスは、オーナーシェフをつとめるリマの「セントラル」でペルー産食材のみを使って料理することに挑戦している。その80%はアンデス産とアマゾン産だ。セントラルの料理は、斬新な形でペルーの風景を紹介する。サチャインチ(オメガ3脂肪酸が豊富に含まれたインカのピーナッツ)が添えられた川エビ料理は、アンデス山脈のふもとの水系を表現し、また、土壌凍結で根が表出するほど高所で栽培される紫芋のクリーミー・ピュレは、ペルー山岳地帯の風景をイメージさせる。マルティネスはこのポテト料理の仕上げに、コリッとした歯ごたえのタピオカのような藍藻、クシュロの丸い粒を添えている。

「セントラル」によるクシュロを使ったポテト料理



要チェックの地元スターたち


ラテンアメリカの食材が脚光を浴びると同時に、地元の才能も注目を集めている。ティアゴ&フェリペ・カスターニョ兄弟は、モダン・ブラジル料理レストラン「レマンソ・ド・ボスキ」でLA50BRアワードの「ワン・トゥ・ウォッチ」賞を獲得。地元のブラジル料理にフォーカスしたロドリゴ・オリベイラの「モコト」や、ソルダード・ナルデッリが本格的なアルゼンチン料理を供するブエノスアイレスの「チラ」なども、世界の批評家たちから絶賛されている。一方、若きカリスマ・シェフ、アルベルト・ランドグラフ率いるサンパウロの「エピス」も、瞬く間に世界中のグルメから熱狂的な支持を得るようになった。


text by Melinda Joe / Japanese translation by Yuko Wada





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