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FEATURE / MOVEMENT

アルファ ロメオ「Art of Taste」プロジェクト第3弾 「炭火割烹 白坂」井伊秀樹シェフ#03

[COLORTASTE]食材探しの旅を料理に、写真にフォトアートで浮かび上がる新潟の秋

2019.12.19

text by Kei Sasaki / photographs by Hide Urabe

伝統あるイタリアの自動車メーカー、アルファ ロメオのアーティスティックな美学を食のマエストロたちが味で表現する『Art of Taste』プロジェクト。そのファイナルを飾るのが、赤坂の炭火割烹「白坂」の井伊秀樹シェフの料理を、著名フォトグラファー、アルフォンソ・カタラーノ氏が撮影するフォトセッション「COLORTASTE」。イタリア大使館が主催するイタリア料理週間のオープニングイベント内で、その全貌が明らかに。10月にGIULIAで食材探しの旅に出かけた井伊シェフが、どのようなアプローチで料理を完成させたのか。カタラーノ氏とのフォトアートのプロセスは? オープニングイベントの会場で、井伊シェフ、カタラーノ氏に話を伺いました。

『Art of Taste』プロジェクトを象徴する、一流の食とアートの“セッション”

2019年11月18日から24日までの7日間に渡り開催されたイタリア料理週間。そのオープニングイベントが、11月8日、イタリア大使館で行われました。第一部のプレス発表会には多くのイタリア料理やワインの関係者、メディア関係者が訪れ、賑やかな雰囲気に。会場の一角に「白坂」井伊秀樹シェフとフォトアートプロジェクト「COLORTASTE」を行ったアルフォンソ・カタラーノ氏の過去の作品が展示されていて、その前で足を止める多くのゲストの姿が見られました。


アルフォンソ・カタラーノ氏の作品世界が共有される。



ステージ上のスクリーンには、イタリア料理週間のオフィシャルスポンサーであるアルファ ロメオが行ってきた『Art of Taste』の文字が、アルファ ロメオを象徴する赤を背景に浮かび上がります。この夜のイベントの目玉となるのが、後半に予定されていた『Art of Taste』の2019年ファイナルを飾る「COLORTASTE」のデモンストレーションとその作品のお披露目です。カタラーノ氏と井伊シェフが紹介される一幕では、会場から大きな拍手が沸き起こりました。



ステージ上のスクリーンに映し出される『Art of Taste』の文字。



来賓の挨拶に続き、FCAジャパン アルファ ロメオ マーケティング本部長であるティツィアナ・アランプレセさんが登壇。アルファ ロメオのブランド哲学、そこから生まれた『Art of Taste』、そして「COLORTASTE」というプロジェクトの概要について、アランプレセさんご自身が、イタリア語と日本語の両方で説明します。

「アルファ ロメオは“情熱”のブランド。モータースポーツとの深い関わり、ものづくりにかける思い、積み重ねてきた歴史とドライバー一人ひとりが五感で感じることができるパフォーマンス。すべてが情熱によって育まれ、人の心を揺さぶる“感情の力学”を生むのです。そんな私たちの哲学を味で表現するのが『Art of Taste』です。私たちはアルフィスタ一人ひとりと唯一無二のストーリーをつくりたかった。そのために6月から雑誌『料理通信』とのコラボレーションで、食のマエストロたちと様々な形の取り組みをしてきました」。



壇上に立つアランプレセさん。「ロッソ アルファ(アルファロメオの赤)」のドレスで。



ステージ上のスクリーンに、これまでのプロジェクトを紹介する映像が映し出されます。アルファ ロメオからインスピレーションを受けた世界で一つだけのバースデーケーキをつくった「ラトリエ・モトゾー」の藤田統三シェフ。たった一組のゲストのために一日限りのコース料理を用意した「第3回サンペレグリノヤングシェフ」世界グランプリの藤尾康浩シェフ。ともにアルファ ロメオのハンドルを握り、小田原や茨城に出掛け、食材を探すところからスタートしています。

「『Art of Taste』はクロスカルチャーのアプローチでもある。イタリアと日本、車づくりと料理、そして料理とアート。そもそも料理は本来、アートであるべき。食べるだけでなく“見る”という形で味わうことが大事。それを形にしたのが今回の「COLORTASTE」です」。映像が、GIULIAのハンドルをにぎり、新潟を旅する井伊シェフの姿に切り替わります。清らかな水で養殖されるますや雪室熟成の野菜、非加熱のハチミツなど、数々の生産者との交流も収められていました。

アランプレセさんの話に続き、カタラーノ氏、井伊シェフが改めて紹介され、それぞれが今回の取り組みにかけた想いを語ります。カタラーノ氏は、スターシェフとタッグを組んだ作品制作をイタリアで数年前から続けています。



自身の作品のコンセプトと、作品制作プロセスについて解説するカタラーノ氏。



「仕事中のシェフたちをじっと観察していると、緻密で丁寧な仕事は画家を連想させるもの。料理がテーブルという境界を越え、色と質感を際立たせることで、料理が完成することで見えづらくなる“素材”に回帰する作品をつくりたい。国外でのコラボレーションは井伊シェフが初めてで、非常にエキサイティングな経験となりました」と、カタラーノ氏。



井伊シェフ。長い準備期間をかけたプロジェクトの本番を迎え、やや緊張した表情。

井伊シェフは「日本にも素晴らしいイタリア料理人が数多くいる中で、なぜ自分がこの大役を任されたか。光栄に思うと同時に、その意味を真剣に考えました」と、話します。「自分の役割は、日本の食文化である和食とイタリアをコネクトさせることなのではないかと。今回、多くの方々のサポートを得て、アルファ ロメオに乗って新潟を旅し、とてつもないワクワク感を頂いた。この作品がいいものになるよう、料理人としてのパッションをすべて注ぎました」。

2人の言葉に、会場の期待感も最高潮に。オープニングパーティは、いったん、アペリティーヴォの時間を挟み、いよいよ井伊シェフによるデモンストレーションが行われるオープニングパーティへと流れていきます。



新潟の自然と食材に出会って得た感動。料理人の潜在的な意識を形にするアート

アペリティーヴォの料理を監修したのは、ミラノの名店「Aimo e Nadia」のアレッサンドロ・ネグリーニシェフと「BULGARI IL RISTORANTE LUCA FANTIN」のルカ・ファンティンシェフ。日伊のトップシェフ2人が共同で手掛けたフィンガーフードとフランチャコルタで、会場は一気に陽気で華やいだ空気に包まれます。



パーティの料理を監修した2人のシェフも交えて乾杯の一幕。



ルカ・ファンティンシェフ、アレッサンドロ・ネグローニシェフとも交流を深める井伊シェフ。



一般の招待客も到着し、いよいよオープニングパーティがはじまります。駐日イタリア大使ジョルジョ・スタラーチェ氏の挨拶に続き、再びアランプレセさんが登壇。カタラーノ氏と井伊シェフによる「COLORTASTE」プロジェクトのデモンストレーションのスタートです。

スクリーンに映し出されたのは、井伊シェフが営む炭火割烹「白坂」を訪れるカタラーノ氏の姿。厨房で仕事をする井伊シェフを注意深く見つめ、ときに2人で言葉を交わしながら、“セッション”を続けるドキュメンタリー映像が流れます。カタラーノ氏が撮影に用いるのは、「逆光の技法」。料理を半透明の白いプレートに盛り付け、下から光を透過させた状況で撮影を行うのだといいます。



やり直しはできないプレッシャーの中、ひとつずつ、素材を加えていく。



「それではその技法を、これからお見せしましょう」アランプレセさんの言葉を合図に、壇上の井伊シェフをスポットライトが照らします。目の前に用意された半透明のプレートに、調理した様々な素材を並べ、絵を描くかのように盛り付けていく様子が、スクリーン上で実況中継されます。まさにライブの臨場感。



会場のざわめきをよそに、ライブペインティングさながら、フォトセッションの料理を再現する井伊シェフ。



井伊シェフが作業を終えると同時に、壇上で白い幕に覆われていた写真がその全貌を露わにします。たった今、ゲストの目の前で描き完成させたのと同じ料理が、写真というアート作品に。会場全体に歓声と、大きな拍手が響き渡ります。井伊シェフは、安堵と達成感が入り混じった表情で、その会場を見渡し、深々とお辞儀をしました。



料理が完成し、カタラーノ氏の撮影がスタート。

2人のセッションで完成した「COLORTASTE」の作品が、ついにお披露目された。



言語の異なる2人のセッションは、どのように進められたのか。アランプレセさんに尋ねられると、カタラーノさんからは次のような答えが。

「お会いする前に、井伊シェフの新潟への食材探しの旅の映像を見たんです。その映像だけで、料理人としての情熱が十分に感じられ、新潟でシェフが見つけた食材で一緒にいいものをつくりたいと思いました。会ってみたら井伊シェフとはフィーリングが合うというか、感覚を共有できるところが多く、すぐに仲良くなれた。一緒に仕事をするのが本当に楽しかった」。カタラーノ氏はさらに続けます。

「私の仕事は、“逆光の技法”という主観的な撮影方法により、シェフたちの内側にある潜在的なイメージに形を与えること。食材という三次元のものを、二次元にすることで、食材そのものやシェフの思考がより抽象化される。アルタ・クッチーナ(高級料理)のようなハイレベルな料理になると、もはやシェフの国籍はあまり重要でない。トップシェフが表現するのは、自らの内側の世界の表現。井伊シェフの緻密な仕事は、私がふだん仕事をしている世界トップクラスのシェフたちと同じ。だから彼の内側にあるものをなるべく引き出したいと考えました」。



会場内にはアルフォンソ・カタラーノ氏の作品展示スペースも。



カタラーノ氏の言葉にやや恐縮しながら、井伊シェフは、この料理を完成させたプロセスを次のように話します。「アルファ ロメオで新潟の海岸線を走っているときに、サンセットの風景がとても美しくスマホで写真に収めました。これをインスピレーションに作品がつくれないかと考えました」。

最初に選んだのは、八ツ峰養魚の「魚沼美雪ます」。夕陽の美しさと、アルファ ロメオの赤を連想させる鮮やかなサーモンレッド。生産者がこの美しい色を出すのに心を砕いているという話も頭に浮かび「魚沼美雪ます」を主役に料理をつくることを決めます。周囲にあしらったイカスミは水墨画のイメージで、日本を表現。

「なぜ和食の料理人である自分がこのプロジェクトに抜擢されたか。そう考えたとき、イタリアと日本の食文化をクロスさせることはもちろん、これまでのカタラーノさんの作品にない“日本”を感じさせるものにしなければと思いました。初めてアランプレセさんにお会いし対談したとき、私が普段から用いている炭と日本画の墨がともに日本を象徴するという話になったのですが、それもヒントになりました」

飯塚農場のニンジンは、オイルで乳化させたピュレと、おろしのマリネでひとつの素材から2色のオレンジをつくり出しています。「サーモンとニンジンのように同系色の食材は、味わいの上でも相性がいい。僕は料理人なので、味のことも考えた。「魚沼美雪ます」も塩と砂糖、マスタードとディルでマリネし、食べてきちんとおいしい味に仕上げています」。

井伊シェフが新潟を訪れたのは、10月の上旬。一面の田んぼに黄金の稲穂が揺れる実りの季節で、最高の秋晴れに恵まれた日でもありました。「豊かな自然があり、その自然と真摯な人々の仕事が育む素晴らしい食材がある。なんて恵まれた土地なんだろうと。その1日の感動、思い出が、田んぼ越しに見た夕景に凝縮されていて、なんとかそれを作品にできないかと。カタラーノさんとは様々な意見を交わしながら、最終的には“君が思うようにしてくれたらいい”と仰ってくださった。写真から、アート作品から料理を考える経験は、料理人として大切な糧になったと思います」。



お互いをたたえ合うカタラーノ氏と井伊シェフ。



料理と写真、2つの異なる「アート」が交錯することで生まれる“感情の力学”が、イタリアと日本の文化をクロスオーバーさせながら、1つの作品に集約される。井伊秀樹シェフとアルフォンソ・カタラーノ氏による「COLORTASTE」は、新潟の豊かな食材、それを育む人、料理する人の想いを作品にすることで、「味わう」以上の感動を、その場にいる多くの人が共有する体験をもたらしたのです。



井伊シェフによる食材探しの旅の様子をぜひ動画でご覧ください!





 ■アルファ ロメオ「ジュリア」






「炭火割烹 白坂」井伊秀樹シェフが、フォトセッション「COLORTASTE」のための食材探しの旅に出かけた「ジュリア」についてはコチラまで

アルファ ロメオ ジャパン オフィシャルサイト
https://www.alfaromeo-jp.com/ 
















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