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FEATURE / MOVEMENT

多彩な顔を持つシャブリの魅力

vol.3 もっと冒険!店飲みシャブリ

2019.11.06

text by Megumi Nishida / photographs by Hide Urabe

腕利きシェフの店で愉しむ冬の味覚。晴れやかな和の皿に散りばめられたとっておきのどんな食材にも、シャブリがぴたりと寄り添います。4つのアペラシオンを手がかりに、いざシャブリ再発見の旅へ!





店飲みシャブリを指南いただいたのはこのお二人。
◎ JAPANESE CUISINE CHEF 柴太一さん
“白味噌にバターを忍ばせると、グラン・クリュにとても合いました”


フレンチや和食店などで修業を積み、2006年独立。おまかせコース1本の本店「和創作 太」を始め、「すし太」「食楽太太太」など数店を展開。



◎ WINE SPECIALIST 中尾有さん
“今シャブリは、アペラシオンや土壌の違いを超えた多様性が出てきています”


大学卒業後「成城石井」等を経て、仏ワイン専門店「ラ・ヴィネ」へ。2015年に独立、「ウィルトス」を開業。生産地を訪れ、買い付けと卸しを行なうほか、併設ショップで小売りも行なう。





バイ・ザ・グラスも織り交ぜながら

中尾さんのワインショップでは、何種類くらいシャブリを扱っていますか?



中尾 3ワイナリーのものを各3アイテムずつ揃えています。心がけているのは、2つのスタイルを押さえること。一般的なシャブリのイメージに合うスッキリ軽快なものと、新しい世代が取り組むミネラルと硬さのある、より複雑味のあるもの。今、シャブリは、アペラシオンごと、生産者ごとの味わいの違いを超えた多様性をもつようになってきていますね。

 うちのように和食の店ではそんなに種類を置くことはできませんが、それでも最低限、スッキリタイプと重厚なタイプ、と揃えておけばいろいろなお客様に対応できそうです。



右から[CHABLIS GRAND CRU] シャブリ北東部の標高100~220m、セラン川右岸のわずか7つの限定した畑で生まれる重厚でミネラル豊かな味わい。[CHABLIS PREMIER CRU]キンメリジャンの含有量が多い畑から造られる。樽熟成をさせているものが多くリッチな味わい。[CHABLIS] 日本でもっとも親しまれるライン。広範囲に畑があり味わいも様々。[PETIT CHABLIS] 最もカジュアルなアペラシオン意欲的なワイン造りをする生産者も多い。



では、このプティ・シャブリはいかがでしょう。

中尾 プティ・シャブリはシャブリと土壌が違うので、爽やかで酸も柔らかく、親しみやすい味わいですね。もっと注目されていいのに、まだ日本への輸出量が少ないので見つけるのに苦労するのが難点です……。

 軽快な柑橘系の風味は、一般的に相性がよいと言われる牡蠣よりも青魚のほうが合うと思いました。それからこのみずみずしい味わいは生野菜に合う。この料理の影の主役はトマトとキュウリなんですよ!

次はシャブリです。

中尾 値段が手頃で種類も豊富、店にとっても一番売りやすいカテゴリーです。多様性がある分、売り手の力が試される商品でもある。畑があちこちに点在していて標高も様々。生産者ごとにスタイルも全然違いますし。

注文する時は、お店の方に相談したほうがよさそうですね。詳しいことはわからなくても、スッキリ系か、コクのあるタイプかのリクエストをするとよい、と。





中尾 そうですね、そうすると、より満足度の高いマリアージュを楽しんでいただけると思います。

 このシャブリは味がしっかりしているので、それに合わせてちょっと塩分しっかりめの料理を、酒肴として盛り合わせました。うちはコースでお出しするので、全体を通して料理の濃淡もつけたいし。

中尾 味噌が合いますね! 日本の調味料だけど、フランスワインであるシャブリにすごく合う。

プルミエ・クリュはいかがでしょうか。

中尾 プルミエ・クリュは最高峰グラン・クリュへのステップ的なワイン。シャブリほど軽快ではないが、グラン・クリュほど重厚で硬くもない。シャブリの中心に流れるセラン川の右岸、左岸、両方に畑があるので多様性にも富んでいます。

 このワインはシャブリへの期待値を超えた、高価なブルゴーニュという味わいですね。抜栓してから冷蔵庫で保存し、何日か続けて試飲していたんですけど、時間による変化もすごく楽しめたことに驚きました。

中尾 ここは村の名士による400年の歴史をもつワイナリー。代替わりをした10数年前からオーガニックやビオディナミを取り入れ、SO2もほぼ無添加。だから味わいは厚みがあるけど硬さはなくやわらかい。

 シャブリというと、食事の前半にさらっと飲むイメージがありましたが、これなら中盤から後半にかけてゆっくり楽しんでいただけそうです。

中尾 時間や温度による変化が楽しめるので、バイ・ザ・グラスとしてもぜひ使っていただきたいですね。

抜栓したら早めに飲まなくては、というこれまでの常識を覆す、新しい世代ならではの可能性ですね。





 このワインは樽の風味も効いているから、香ばしさをがんもどきと合わせました。

中尾 ワインの柑橘系の風味が柚子に、樽香が甲殻類につながる。冬場の蟹シーズンに活躍してくれそうです。

最後はグラン・クリュです。

中尾 酸とミネラル、重厚感を兼ね備えていますね。こういうワインはめったにありません。酸が豊かだから、温度が多少上がっても大丈夫。

白ワインは冷やさなくては、という枠を超えた格があるんですね。これに田楽というのは、意外性がある組み合わせです。

 重厚感のあるしっかりしたボディのワインですから、それに呼応する強さと複雑さを考えました。実は田楽の白味噌にはバターが忍ばせてあるんです。厚みのある味わいにしたくて。

中尾 白味噌のこっくり深い味がワインによく合っています! 現地でもグラン・クリュにはクリームやバターを使った、クラシックな料理を合わせることが多いんです。仔牛のクリーム煮とか。甲殻類にも合うから、蟹クリームコロッケとか!

グラン・クリュを楽しむのは高級フレンチでなくてもできるんですね。高嶺の花と思っていただけに、かなり親近感がわいてきました。

 ゴマダレで食べるしゃぶしゃぶも候補でした。

中尾 ゴマ! そう、グラン・クリュには、白身の肉だけでなく、植物性の力の強いものが合うと思います。ワインと料理のマリアージュのポイントは、比重を合わせること。軽いワインには軽いもの、重厚なワインには重厚な料理を合わせて、和洋を問わず自由に楽しんでみてほしいですね。



シャルドネの単一品種から造られるシャブリは、ブルゴーニュの最北に位置。セラン川を挟んだ対岸に畑が広がり、4つのアペラシオンに分類される。



PETIT CHABLIS × 炙り秋刀魚のマリネと秋野菜のサラダ

香ばしく皮目を炙った青魚に、トマトとキュウリをあわせてさっぱりとまとめた前菜。軽快さがプティ・シャブリのトーンとマッチ。



CHABLIS × ずわい蟹のがんもどき

蟹肉のほぐし身を混ぜ込んで香ばしくカリッと揚げた自家製がんもどき。柚子皮をすりおろしかけて爽やかな香りを添えた。



CHABLIS PREMIER CRU × 自家製豆腐の味噌漬け、奈良漬けの生ハム巻き銀杏カラスミほか

塩味や香りを強めに効かせた酒肴盛り合わせ。シャブリの潮っぽさと呼応。



CHABLIS GRAND CRU × 茄子と雲丹の田楽

素揚げしたナスに、バターを潜ませた白味噌と雲丹を添えて、リッチに。オイリーな味わいがグランクリュとマッチ。




◎ 和創作 太
東京都品川区上大崎2-26-5メグロードB1F
☎ 03-3779-0002
18:00~翌1:00LO、土曜17:00~24:00LO
日曜休 各線目黒駅より徒歩2分

◎ ウィルトスワイン神宮前
東京都渋谷区神宮前2-11-19
☎ 03-4405-8537
東京メトロ外苑前駅より 徒歩10分
www.virtus-wine.com/

PURE CHABLIS
www.chablis.jp



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