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FEATURE / MOVEMENT

郡山の大地をお皿に乗せて。

生産者との出会いから生まれた料理をどうぞ召し上がれ!

2020.12.30

text by Saori Baba / photographs by Hide Urabe

東京都の営業時間短縮要請に伴い、店舗の営業時間等は変動する可能性がございます。
詳細は各店舗にご確認ください。



2年連続で訪ねた福島県郡山市で出会った素晴らしい生産者たち。彼らとの出会いをきっかけにつくり手と使い手の関係を大切に育んできた二人のシェフが、この冬、地域の魅力溢れる美しい料理を考案してくれました。

シェフたちが郡山で出会った食材レポートはコチラからどうぞ!
福島県郡山市で出会った、まっすぐな農の仕事人たち。
福島県郡山市の食の未来を豊かにする人たち。前編
福島県郡山市の食の未来を豊かにする人たち。後編



世界で唯一のメキシコ&郡山タコスを。

福島県郡山市の食材生産者を訪ねる旅から1年。三軒茶屋にあるメキシコ料理店「ロス・タコス・アスーレス」シェフのマルコ・ガルシアさんは、郡山食材を日常のメニューでも活用しています。


「ロス・タコス・アスーレス」のマルコ・ガルシアシェフ。

「料理は素材が何より大事。これは世界共通の事実。僕のタコスは、日本で言う寿司のようなもの。米の代わりがトルティーヤなので、そこからこだわっています。現地でも珍しい在来品種の青いコーンを使い、挽臼でとうもろこし粉を挽くところから自分たちで行い、1枚1枚生地の仕込みも丁寧に、焼くのも注文ごとです。季節によって合わせるネタが違う楽しみや、組み合わせの面白さを知ってもらえたら嬉しい。だから、日本でいい素材に会えると嬉しいんです。昨年の秋に郡山市の生産者を巡り、素晴らしい出会いがあったので、今では野菜や豚肉などを定期的に購入しています」


昨年郡山を訪ねた際には、嬉しい化学反応も生まれた。マルコシェフは鈴木農場の鈴木智哉さんと青いとうもろこしの話で盛り上がり、智哉さんはその後すぐに、メキシコへ農業を視察する旅に出たのだ。智哉さんとマルコさんは、その後も気軽なやり取りが続いているそう。
「日本で青いとうもろこしが栽培できたら、面白いですよね。いつか実現したら、ぜひその粉でトルティーヤを焼きたい。郡山ブランド野菜の良さは既に知っているから、楽しみです」

今回のタコスは2品。一つ目は、マルコさんがタコスで使うのは初めてというさつまいものタコス。


さつまいも“めんげ芋”のタコス

「鈴木農場の“めんげ芋”を主役にしました。このさつまいもは、繊維を感じさせずねっとりした滑らかなスイーツのような食感。じっくり蒸しました。塩味のアクセントにはヤギのチーズ、豚の皮をかりかりに揚げたチチャロン、パクチーを添え、トマトやハラペーニョ、玉ねぎ、にんにくで作ったオリジナルサルサをかけています」

もう一つは、メキシコの豚のコンフィ“カルニ−タス”を古屋農場の豚肉で作ったタコス。


カルニ−タスのタコス

「ふるや農園の豚肉は肉の味がしっかり、脂もすっきりしているので、きれいな味のカルニ−タスができる。メキシコ料理は唐辛子で味を決めるのですが、今回はニッケイファームのハバネロを使いました。フルーティなので、肉が引き立ちます」


奥が鈴木農場のさつまいも。手前はニッケイファームが栽培するハバネロ。

旬の郡山素材を使ったタコスメニューは2021年1月末までオンメニュー予定。マルコシェフが生み出す世界で唯一のメキシコ&郡山タコスが楽しめる。


地元郡山の畑を感じてもらいたい。

広尾「ビストロ ネモ」の根本憲仁シェフは、福島県郡山市の食材生産者を訪ねる旅から帰ってきたばかり。現地で出会った旬の食材からインスピレーションを受け、華やかな料理を早速メニューに載せた。


今夏、東京・広尾にオープンした「EAT PLAY WORKS」内に居を構える人気店「ビストロ ネモ」の根本憲仁シェフ。

「僕は郡山出身ですが、地元にこんなに素晴らしい食材があると知ったのはつい最近。知人を通じて食材を味わったのがきっかけです。東京からも新幹線なら1時間ちょっとと近いから、生産者に会いに畑を訪ねることもできる。食材を吟味できるのはシェフの楽しみでもあるので、これからさらに郡山を訪ねて、いい素材といい生産者に出会いたい」

たとえば鈴木農場の野菜は、今年の初春に根本シェフ自ら畑を訪ねてその味に惚れ込み、今ではすっかり店のレギュラー食材になっている。
「よく使うキャベツ一つとっても、鈴木農場のものは味の濃さやパリッとした食感、香りなどが全然違う。おいしさを追求して育てると、こんなにも存在感がある野菜になるんだといつも驚かされます。無農薬栽培のニッケイファームのにんじんも、力強い味と香り、丸焼きするとほっくりと仕上がって、固い芯などがまったくない。そして色が本当に美しい。どちらの野菜もそれだけで主役になれる力があり、料理するのが楽しくなります」

今回オンメニューしているのは2皿。一つ目は、野菜のテリーヌ。


野菜のテリーヌ「ジュレ・ド・レギューム」

「使っているのは鈴木農場のキャベツや、さつまいも“めんげ芋”、ブロッコリー、ニッケイファームのニンジンなど11種の旬の野菜。それぞれ味や食感を生かして素材ごとに茹で、コンソメジュレとともにテリーヌ型で冷やし固めました。一皿でいろんな野菜の味と香り、食感が楽しめます。カリフラワーのピュレとキャラメリゼしたカカオニブ、180℃で乾燥させたホウレン草のパウダーはアクセントに添えました。野菜だけで成立している皿の美しさと力強さを、存分に感じて欲しい」

もう一つは、ふるや農園の豚肉を使った美しく華やかな一皿。


自家製塩豚とケイジャンスパイスをきかせた自家製腸詰めのグリル

「味が濃く、脂の質も良いふるや農園の豚肉で、塩豚と腸詰めを作りました。塩豚はローズマリーやタイムなどハーブを軽く効かせています。力強い豚肉に合うように、鈴木農場のもものすけ蕪は、郡山の酒蔵・仁井田本家の塩麹につけて常温発酵させ、さらにうま味をのせてからソテー。新種の野菜カリフローレとブロフローレはシンプルに焼いて、軽くブイヨンで煮ています。上に散らしたのはディルの花やオゼイユ、ブロンズフェンネルなどのベビーリーフ。鈴木農場からいつも旬の美しいハーブやリーフが届くので、畑を感じてもらえるようにあしらいました」


「ニッケイファーム」のニンジンや「鈴木農場」のカリフローレやブロフローレ。しいたけは郡山市湖南町の農家「愛椎ファミリー」から。

目にも楽しく、味わいの裏にストーリーを感じる2品。郡山の食材をよく知る根本シェフのスペシャルメニューを、ぜひお店でご堪能ください(オンメニューは食材入荷状況によりますので、お店で確認を!)。








◎LOS TACOS AZULES ロス・タコス・アスーレス 
東京都世田谷区上馬1-17-9
☎050-5579-1814
https://www.lostacosazules.jp/



◎Bistro Némot ビストロ ネモ
渋谷区広尾5-4-16
「EAT PLAY WORKS/THE RESTAURANT」内
☎03-6447-7131
https://therestaurant-hiroo.com/shop/nemot/




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