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野生を呼び覚ます、「火」の力。

「POWER OFF」イベントを通して「Maruta」が伝えたい自然共生とは

Feature / MovementDec. 27, 2019

photographs by Hide Urabe

火は何故、こんなにも人々の心を高揚させ、時には落ち着かせ、創作意欲を掻き立てるのだろうか。
薪火を使った料理を軸に、自然の循環を意識し、食の分野に留まらないレストランの新たな役割を模索する東京・深大寺「Maruta」。「POWER OFF」をコンセプトに、「火」が持つ力を最大限活用した「電気やガスを使わないディナーイベント」も、そんな試みのひとつだ。

「火」の存在を、肌で感じる

第3回目を迎える今回は、薪火を熱源に和蝋燭の灯の下で提供するディナーはもちろん、より参加者にも火の力と温かさを身近に感じてもらいたいと、彼らの食材の宝庫でもある中庭に、焚き火台や薪割り台、またタープを立てて“野外キッチン”をセッティング。まるでキャンプサイトに訪れたかのようなアウトドアの演出を随所に散りばめた。設営には、「人生に、野遊びを。」を掲げ、自然と共生するアウトドアスタイルを提案する「snow peak」も協力。ディナーが始まる日が暮れるまでの数時間、ゲストたちは庭で採れた茶葉で淹れた紅ほうじ茶を片手に、焚き火台を囲んだり、薪割りや火打ち石での焚き火に挑戦したりと和やかな時間を過ごした。


庭には、朝からスタッフで準備した野外キッチン=ベースが設けられ、チェアやベンチなどが並べられた。

ウェルカムフードとして「ケバブ」を焼くスタッフ。

アウトドア好きには熱烈なファンも多い「snow peak」の焚き火台スペース。火の温かさが、自然とゲスト同士の会話を弾ませる。



「アウトドア要素を加えることで、より火を身近に感じ、人と人が集まり、繋がる場にしたかった」とは石松一樹シェフ。電気やガスに頼らないこと、火という自然の力を肌でダイレクトに受け止め、このイベントのコンセプトでもある「人間が持つ野生を呼び覚ます」こと。シェフやスタッフにとっては当たり前の“日常”である火との触れ合いは、便利と快適さに囲まれた私たちゲストにとっては(もちろん道具を使って火をコントロールする生活には慣れているが)“非日常”に他ならない。パフォーマンスとしてレストラン側から発信することはもちろん、キャンプやアウトドアというフィルターを通すことで、より自身に置き換えた身近な体験として火を感じてほしい。そんなシェフやスタッフたちの想いと「snow peak」との出会いが重なり、庭という緑地空間を最大限生かす形となった。

「前回までは、ディナーが始まるまでの時間はレストランの中で過ごす方も多かったのですが、今回は皆が外で火を囲み、楽しそうに集っている。レストランと庭、中と外が繋がり、よりコンセプトに近づけた気がしました」。



シェフの石松一樹氏。この日のメインパフォーマンスであるアースオーブン=灰窯を設営中。

掘った穴に火でガチガチに熱した石を敷いて自家製釜を作る。

灰塩で固めた丸鶏を埋め、約3時間蒸し焼きに。

「Maruta」オーナーの田丸雄一氏。緑化事業が本業の為、薪割りはお手のもの。ゲストも田丸氏に教わりながら、初めての薪割りを体験した。



食べて、野生を呼び覚ます

日が落ちて辺りが濃い碧(あお)の静寂に包まれ、温かな橙の和蝋燭の灯だけが店内を照らす頃、ゲストたちがテーブルを囲み、本日のメインイベントであるディナーが始まった。もちろん、熱源は薪火のみ。普段は、卓を囲んだゲストが大皿で料理を取り分ける“シェアテーブル”が営業スタイルだが、今回は、前菜からデザートまで、1皿ずつのポーションで提供された。


和蝋燭の火で照らされる手元は仄暗く、携帯写真も撮りづらい。いつしかみな、目の前に運ばれた料理を慈しみ、厳かに対峙していた。


前菜は、鹿肉でとったコンソメにシイタケの旨味を含ませたスープ。滋味深い温かさに頬を緩ませているうちに、酒盗と合わせ藁焼きにしたメカジキ、ラルド(豚の背脂の塩漬け)をのせたサトイモの揚げ焼き、暖炉で豪快に焼かれるイノシシ肉の薪焼きへと続く。ペアリングには庭の自生ハーブや柑橘類を使った自家製のアルコール、ノンアルコールを合わせて提供。目の前に料理やドリンクが運ばれる度、人々は顔を近づけて食材の形や色を確認し、香りを感じ、時々目を閉じて口に含み、味を確かめる。蝋燭のゆらゆらした心もとない灯りの下で、自身の感覚を研ぎ澄ませ、視覚と臭覚、味覚を使って、「食べる」という行為と向き合う。それは、眠っていた人間の野生を呼び起こす儀式のようでもあり、目まぐるしい日々の中で、ともするとおざなりになってしまいがちな時間を慈しむひとときでもあった。


コースの一品。一度すり潰したサトイモを丸めてローズマリーとともに揚げ焼きに。サトイモの甘味と上に重ねたラルドのコクが一体化し、口の中でとろける。



薪で焼かれ、雄々しい旨味を湛えた塊の猪肉は、薄くスライスしてルーコラとともに。

ゲストが食事を楽しんでいる間も、庭の窯の様子を見るスタッフ。途中で焼き具合を見ることはできないため、自分たちの経験と時間の感覚だけを頼りにする。



火と交わり、共生する未来を

なぜ、「Maruta」はこれほどまでに火をフィーチャーし、私たちと繋げることを使命とするのか。
そもそもこのレストランは、オーナー・田丸雄一氏が代表を務める「グリーン・ワイズ」という、空間緑化事業を行う会社が母体である。百貨店の屋上庭園、舞台やイベント、国民的ドラマの造園を手掛ける一方で、人間が自然との共生関係を育む地域循環型の暮らし=スローグリーンを目標に掲げ、その表現の場として立ち上げたものだ。

「薪、シェア、野性、ローカルファースト」というテーマが物語る通り、「Maruta」では、薪火で料理をすることを身上とし、客は大きなテーブルを囲んで輪になり、その料理をシェアして食べる。私たちにとって「食べること」自体がそもそも野生的な行為であること、食べることで自然から生まれた恵みと密に繋がっていることを体感し、再確認できる場となることを目指す。「火」はその核であり、媒介者なのだ。


キッチンの明かりももちろん蝋燭。「調理に電気がないのは慣れているけれど、手元が暗いのは不安だね」とシェフ。自らも体感し、野生の感覚に耳を傾けていく。

灰窯を掘り起こし、肉を取り出すスタッフたち。日々こうして食材に対する感覚が研ぎ澄まされる。

蒸した鶏肉は、ゲストの前でほぐし、薬膳粥の具材に。

バンクーバー生まれのパティシエが作るマシュマロのスイーツ「スモア」をデザートに。現地のアウトドアでも定番の一品。


電気やガスなど火に代わる便利なものが当たり前になった現代、私たちは「火」に対して距離ができた。だから自然災害など、突然強大な火の力を目の当たりにすると、成すすべもなく立ちすくんでしまう。火は大切な熱源である以上に、人間の脅威ともなりうる事実に愕然とする。でも、それでは距離は開く一方だ。

環境保全や自然の循環問題、食に対する危機管理を通してサステナブルな活動がどんなに活発化しても、電気やガスを全く使わないことは、私たちの日常生活において不可能かもしれない。「それでも時には、人間が昔から共生してきた自然の力を意識し、繋がるということを楽しく考えていけたらいい。料理人も一緒です」と石松シェフ。イベントは不定期だが、続けていく予定だという。火を通して人間の野生を呼び覚ます神秘的で温かい空間を、ぜひ一度体感してほしい。






◎ Maruta
東京都調布市深大寺北町1-20-1
☎ 042-444-3511 (電話予約受付時間13:00〜18:00)
水~金曜
ディナー
(一部)18:00~ドアオープン/18:30~料理スタート
(二部)20:00~ドアオープン/20:30~料理スタート
土、日曜、祝日
ランチ12:00〜ドアオープン/ 12:30~料理スタート
ディナー
(一部)18:00~ドアオープン/ 18:30~料理スタート
(二部)19:00~ドアオープン/ 19:30~料理スタート
(月曜祝日の場合、翌日水曜休)
JR調布駅、三鷹駅よりバス20分
https://www.maruta.green/









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