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with コロナ時代を飲食店はどう生きる?

いろんな顔を持つ店は強い。

「クインディ」 塩原弘太さん

Feature / MovementSep. 3, 2020

text by Kyoko Kita / photographs by Atsushi Kondo

コロナ禍で、「自粛」に伴う経済的打撃をもろに受けた飲食業界。
それぞれの店がその時に何をすべきかを悩み、考え、店を守るための対応策を講じました。
未曾有の出来事は私たちの生活を一変させましたが、飲食店で食事をする価値を再認識する機会にもなりました。飲食店の灯を絶やしてはならないと応援する動きが全国各地で起こりました。
自粛要請が解除され、飲食店の営業が再開されると、以前とは異なるスタイルに変化した店が少なくありません。先行き不透明な状況の中を生きていくために、これまでのあり方からの変革を余儀なくされているのです。
飲食店がこの経験から学び得たことは、「次の波」や他の災害といった将来に起こりうる危機的状況に対応する力になるはずです。
甚大な打撃を受けても起き上がる底力、レジリエンスを備え、ニューノーマル時代を切り拓く、飲食店の取り組みを紹介します。


物販でレストランと食卓を繋ぐ

「クインディ」はイタリア料理店だが、ワインや食材の販売も行うユニークな店づくりが特徴だ。定石通りのやり方にとらわれないフレキシブルな発想が、困難な状況を切り拓く力になる。


塩原弘太さん
シェフの安藤曜磁さん、ソムリエの今田秀樹さんと共に2018年に開店。丁寧に作られた食材の価値や食を巡る社会課題を伝え、日常の食卓に意識の変化を届けるきっかけとして、レストランに物販を併設した。



お土産と共に食体験を持ち帰る


33坪(広い!)、子連れ歓迎、物販併設。
従来のセオリーにとらわれず、自分たちがやりたいことに正直に作り上げたこの店のスタイルは、まるで未来を予見したかのように、今回の危機で強みを発揮した。「季節を映し手間暇かけて作られた食材の素晴らしさや、食を取り巻く様々な課題を、カジュアルなスタイルで伝えたい。その体験を持ち帰り、日々の食卓を少しでも豊かなものにしてもらえたら」。オーナーの塩原弘太さんはじめ、メンバーの思いがそこには詰まっている。ベビーカーも通りやすく、隣を気にせず食事が楽しめるように配した席幅は、ソーシャルディスタンスを保ちやすい空間となり、物販という手段を持つことで自粛中も客との繋がりを保つことができた。「物販をやっていてよかったとつくづく感じた2カ月でした」


広く取られた通路や席幅は“新しい生活様式”を予見したかのよう。物販機能もwithコロナ時代の活路を広げた。

コロナ対策として塩原さんが最初にしたのは、フレキシブルに動けるよう足場を固めることだった。「思えば2月頃からワインがよく売れました。家飲みをする人が増えていたんですね」。レストランの売り上げは堅調だったが、国内外の状況は全く先が見通せず、3月頭には3カ所から融資を取りつけた。「早めに借りられるだけ借りておこうと。手元の資金が日々目減りしていく状況では、不安に押し潰されて冷静さを失うことがわかっていました。お金に余裕があれば、やりたいことをやってみようという前向きな気持ちになれます」



非常時こそ、スピード感が大事


4月頭、緊急事態宣言を受けてレストランの営業をやめ、レストランとは別メニューのテイクアウトと物販のみに切り替えた。その頃始めたのが100㎖ワインの量り売りだ。
「一本買っても飲みきれない、少しずついろんなワインが飲みたいというお客さんの声がきっかけでした」。容器については、オー・ド・ヴィーを同じ100㎖で販売している千葉の『mitosaya薬草園蒸留所』に相談。再現性がない蝋やキャップでコルクを覆ってしまうと、酒販免許だけでなく瓶詰食品製造業の免許が必要になってしまう事情などを伝えると、新たに密閉度の高いコルクを特注し、瓶と共に分けてくれた。本来は薬品用というコロンと愛らしいフォルムの小瓶には、手製のラベルと共に、小分けの証として7等分したエチケットの一片を貼りつけた。

生産者の許可を得て、100mlワインの通販を開始。ソムリエがユニークなテーマを掲げ3種セレクト。


これをインターネットでも販売しようとオンラインショップを開設。「レストランでソムリエにグラスワインを選んでもらうのを楽しみにしている人がいるだろう」と、懇意のソムリエたちにテーマを掲げて選んでもらった3銘柄を、彼らの名前を冠してセット販売することにした。そのテーマがまたユニークだ。〝奥さんの束の間の休息に捧げるワイン〞だったり、〝イタリアマンマはお料理中だってワインを愉しみたい〞だったり。ちなみにトップバッターとなった塩原さんが掲げたテーマは〝Zoomでいっしょに〞。「オンラインで飲み会をする時、同じワインを飲んでいたら距離が縮まるし、盛り上がるんじゃないかと」

もちろん変化の少ないワインを選ぶことが前提であり、通販を始める前には現物をインポーターに送って状態の確認や相談に応じてもらった。また瓶詰め後に数日寝かせてみたり、スタッフ同士で互いの家に送り合うなどの実験も重ね、生産者にはきちんと許可を取った。結論として、「状態が悪くなることはほとんどありませんでした」。お客さんや同業者からの反応も良く、このやり方を採用してオンライン試飲会を行うインポーターも出てきたほどだ。

オンライン上でのユニークな企画は続く。インポーターの協力を得て実施したのが、Zoomを使ったエミリア=ロマーニャのワイナリーツアー。参加者にはあらかじめ訪れるワイナリーのランブルスコと、それに合わせてクインディが用意したつまみと食事を発送。次期当主が通訳を介して畑や醸造所を案内し、参加者からは質問や感想が飛び交った。「中にはお子さんと一緒に参加してくれた方もいました。それもオンラインだからできたことかもしれません」

また、料理を盛り付けるのに、「自宅の皿では楽しくない」と店頭で購入する客が増えたことから、オンラインで皿と料理のセット販売を開始。皿はシェフの実家であり普段から店で使っている鳥取の「皆生窯」と、在庫が充実していた千葉の「菅原工芸硝子」に発注した。「こういう時は、スピード感が大事ですから」と塩原さん。「迷っている間に他の誰かが始めてしまいます。二番煎じじゃつまらない、見切り発車くらいがちょうどいいんです。やってみて、ダメなら変えればいい」

物販を併設するにあたり「今必要なものだけでなく、いつか必要になりそうな免許も取得しておいた」ことも功を奏した。酒類販売、通信販売酒類小売業、菓子製造業、そうざい製造業、食糧品等販売業、食肉製品製造業。思い立った時、すぐに次の手を打てるカードが揃っていた。


一部メニューを真空パックで販売。店頭には国内やイタリアで丁寧に作られたワインや食材、皿が並ぶ。

「 皆生窯」の皿と、同じ鳥取から仕入れた鹿肉のパテ、埼玉「芥子屋四郎」の粒マスタードをセットで販売。



モノではなく、体験を売る


実はこの物件には、かつてコンビニが入っていた。店を作る時、デザイナーや建築家からは「コンビニらしさを残した方が面白い」と言われたらしい。今コンビニは、地域住民のインフラとして商品を売るだけでなく様々な機能を担っている。クインディも物販スペースやオンラインショップを、ただモノを売る場としてではなく、グラスワインを愉しむ、知的欲求や食欲を満たす旅をする、上質な皿で食卓を彩るといった、豊かな食体験を提供する場として機能させた。モノはワンクリックで何でも手に入るけれど、自粛期間中はあらゆる体験の機会が失われた。そんな中でクインディが打ち出したアイデアは、欲求不満を抱えた客たちのツボをピンポイントで刺激したに違いない。

「お客さんから出てきた声を形にしてきただけなんです」。店からの一方通行な発信ではなく、お客のニーズをくみ取り、それが自分たちの価値観に合っているなら始めてみる。そんな店と客との有機的な関係と、アイデアをスピーディに実践する機動力が、非常事態を「これからに繋がるトライアル期間」に変えたのだろう。

*本記事は雑誌『料理通信』2020年9・10月合併号 第2特集「未来のレストランへvol.2」より抜粋してお届けしています。









◎ Quindi
東京都渋谷区上原2-48-12-101
☎ 050-5340-7914
11:30~14:00LO、
18:00~22:00LO
無休
各線代々木上原駅より徒歩5分
http://www.quindi-tokyo.net/















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