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飲食の現場から:おいしさと安全性を担保するために――

発揮できる価値に合わせた営業スタイルを。

Feature / MovementMay. 8, 2020

text by Kyoko Kita

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、政府は5月6日を期限としていた緊急事態宣言を、5月31日まで延長することを発表しました。
飲食の現場では、それぞれの見解のもと自粛継続、業態変更など様々な判断がなされるなか、テイクアウトサービスを始める飲食店が増え続けています。しかしこれまで店内で提供してきた全ての料理がそのまま持ち帰り可能かというと、必ずしもそうではありません。中には衛生上、また法律上、グレーゾーンと言える事例も見受けられます。
おいしさと安全性を担保しつつ、この緊急事態に飲食店はどう対応していくべきなのか。「オギノ オーガニック・レストラン」他、オーガニックデリとシャルキュトリーを販売する「ターブル・オギノ」を駅中や商業ビル内に4店舗展開する荻野伸也シェフに聞きました。

平時以上に衛生面に配慮を

一般的にすべての飲食店が持っている「飲食店営業許可」で認められているのは、店内での料理の提供と、店内の厨房で調理された惣菜や弁当を対面で受け渡しすることです。

“惣菜”というのは、すぐに食べられる状態で販売されている食品を指すので、生餃子や揚げる前のコロッケといった自宅で加熱調理が必要な食品は含まれません。対面販売でも、ソーセージやリエット、ハム、ハンバーグなど食肉を50%以上含む惣菜については「食肉製品製造業」の免許が別途必要になります。たとえばモツ煮込みなども、肉が50%以上入っていれば申請の対象になるのです。

ターブル・オギノでは、商品の製造アトリエがある品川区の規定を満たす形で、食肉製品製造業をはじめとする必要な免許をすべて取得し営業を続けている。

さらに、パンや菓子を販売する場合は「菓子製造業」、ソースを販売するには「ソース類製造業」、生麺を販売する場合は「めん類製造業」など、個別に食品を販売するには細かく免許が分かれています。惣菜でも、真空パックにしたり、-10℃以下に冷凍したものを販売するには申請が必要です。
たとえば「お肉料理を家庭に届ける」ために、肉を加工する、真空パックにする、冷凍にする、ネットで販売する、流通に乗せ宅配便で届ける、という方法をとるとします。この場合、食肉加工や冷凍流通の各工程で必要な免許が異なり、また栄養表示、成分表示義務も伴います。コンプライアンス的に複雑なところがあり、そのあたりはまだまだ周知されていないのが現状だと思います。

これらは管轄の保健所によって解釈や規定の範囲が異なるので、まずは製造場所がある自治体の保健所に問い合わせてみるのが良いと思います。

法律の範囲内で営業していくことはもちろんですが、料理が出来上がって3分以内にお客さんの口に入るレストランとは異なり、テイクアウトでは、持ち帰り時間や保存方法、食べ方など店側がコントロールできないリスクが多くあります。そのことを肝に銘じ、いつも以上に衛生面に配慮しなければならないでしょう。

需要に合わせて調理法やメニューを変える

「レストラン・オギノ」は3月27日からレストランを閉めていて、現在は3店舗でデリの販売を行っています。外出自粛の影響で客数は減りましたが、まとめ買いをしてくださる方が増えました。日持ちがしたり、冷凍可能な惣菜を求める声が多いので、商品ラインナップや調理法も見直しました。

新たに加えた商品ラインナップのひとつ「豚肉のコンィと自家製ソーセージのシュークルート」。脂の中でゆっくりと素材に火を通すコンフィにすることで、保存性を高めることができる。

たとえばソーセージは茹でたものだと賞味期限は2〜3日程度ですが、コンフィにすれば冷蔵で2週間近くもたせることができます。添加物に頼らずとも、賞味期限を伸ばす工夫はいろいろできると思います。

コロナ後の社会をどう生き抜くか

緊急事態宣言が解除されたところで、お客さんがすぐにレストランに戻ってくるかというと、そうではないでしょう。だとしたら、国からの補助金でこの場を凌ぐことだけでなく、コロナ後の社会をどう生き抜いていくか、長期的な視点で考えることが大切ではないかと思っています。

僕にとって料理とは、食材を加工して付加価値をつけること。だからレストランという形態にこだわる必要はない。たとえばコンサルティングであったり、小売店であったり、レストラン経営以外の形で料理に関わっていくことも選択肢になると考えています。これまで好奇心に任せて畑をやったり猟に出たり、料理人という仕事の枠を飛び越えて様々なことをしてきましたが、そこから得られた視点や見えてきた課題があります。そういうことも含め、これまでの経験やスキルを見つめ直し、可能性に投資する時が来ているように思います。

「自ら体験すること」を大切に、数年前からは日常的に畑を耕す生活に。 photograph by Bungo Kimura

荻野シェフが自然栽培で野菜を育てる平塚の畑に5歳の長男も連れて。春を迎えた畑にテントウムシも。

レストランを続けていくにしても、長時間労働の改善や休暇の取得など、働き方を見直すきっかけにするべきではないでしょうか。これまで通りの営業を闇雲に続けていくのでなく、自分たちが発揮できる価値に合わせた営業スタイルを柔軟に考え直しても良いはずです。

店を開けたくても開けられない、そんなジレンマを抱えている方も多いと思います。飲食店は都市生活者にとってのインフラでありながら、人が来てくれることで初めて成立する場です。新型コロナウイルスの流行は、人口が極端に密集した都市生活の負の側面を露呈し、そこに依存するビジネスの脆弱さも露わにしました。

僕自身こういう事態に直面し改めて、一人の人間として、どうしたら社会状況に左右されず生き延びていけるかを考えています。自給自足を目指し、今年は家族が1年分食べられるだけの米を栽培してみるつもりです。

今、自分に必要なこと、足りないことは何かを突き詰めてみる。これまでの当たり前に疑問を持ち、考え方を変えてみる。今回の危機が、多くの人にとって新しい一歩を踏み出すきっかけになればよいと思います。




◎ ターブル・オギノ
http://table-ogino.net/
*5月7日現在、品川店、渋谷店、湘南TSITE店は施設の方針に準ずる形で営業中。













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