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必要なものは、すでにここに豊かにある。

「三陸国際ガストロノミー会議2019」開催レポート

Feature / SdgsAug. 8, 2019

photographs by Shimpei Fukazawa

東日本大震災の後、被災者を温かく包み、復興に取り組む人々に力を与えたのが「食」でした。
「食」を新しい地域創造の推進力にとの狙いから、6月上旬、東日本大震災津波の被災地である岩手県宮古市を中心に開催されたのが「三陸国際ガストロノミー会議2019」です。

写真:「恋し浜ホタテ」で知られる大船渡市三陸町綾里漁協メンバーと交流するオリヴィエ・ローランジェシェフ、ルシア・フレイタスシェフ。日本からは「レフェルヴェソンス」生江史伸シェフなどが参加。





東日本大震災は、食の力を再認識させる機会でもあった。炊き出しのおにぎりと温かい味噌汁が被災者の心に働きかけた力。津波で損傷した田畑や海の再生が人々を前進させる動機になったこと。食を構成するひとつ一つが人や社会を動かす原動力だ。つまずけばほころび、立ち上がれば力を持つ。
食が生命をつなぐ。食が人をつなぐ。食が地域をつなぐ。食が世代をつなぐ。食は大地の上にあり、食が未来をつくる――東日本大震災はそう教えてくれた。

「三陸国際ガストロノミー会議2019」は、三陸防災復興プロジェクト2019の一環で、三陸の食のポテンシャルを発信する場として企画された。国内外の第一線で活躍するシェフ、研究者、ジャーナリスト、地元の生産者や料理人が「三陸の食、海と環境」をテーマに語り合うシンポジウム、沿岸13市町村の食材生産者を4日間にわたって視察する「三陸と世界をつなぐ食のキャラバン」、パリや日本各地で活躍するシェフと地元シェフとのコラボ「三陸美食サロン」という3部構成である。

食で地域活性を図る施策は数多くの自治体で行われている。農業や漁業が地元経済の重要な部分を担う地方にとって必然の流れだ。今回はさらに「ガストロノミー」「海と環境」という視点が掲げられ、世界的な視野と未来へのまなざしが打ち出された点で示唆に富む。


ガストロノミーを実践・表現する場

「美食学」「美食術」と訳されることが多く、ややもすれば贅を尽くした料理や先端的な料理をイメージしがちな「ガストロノミー」だが、ここ数年、世界の料理の最前線が「サステナブル」という地球の共通課題の上にクリエイションを展開してきたことによって、その意味も変化してきた。

食材の生産、その根幹となる資源や環境への配慮、流通・加工・調理技術、食卓上の表現、サービスやマナー、すべてをひっくるめて“より良い食べ方の探求”と捉えるのがガストロノミーの現代的解釈と言える。自然に必要以上の負荷をかけず、動植物本来の生態に沿うように食材を生産する、その特性を生かすように加工・調理する……それが現代のガストロノミーだ。
と考えると、都市よりも、自然環境を背景に生産現場を持つ地域のほうがトータルでガストロノミーを実践・表現できる。ことに震災を経験した三陸は自然との共生やサステナブルというメッセージを発するにふさわしく、今回の会議開催の意義は大きい。




海からの恩恵を再認識

シンポジウムに先立つキャラバンは、フランスからオリヴィエ・ローランジェシェフと山口杉朗シェフ、スペインからルシア・フレイタスシェフ、台湾からリッチー・リンシェフを迎えてスタート。地元岩手を牽引する「ロレオール」伊藤勝康シェフや東京から「レフェルヴェソンス」の生江史伸シェフも加わり、世界三大漁場と言われる三陸の海の魅力を紐解く視察となった。四国と同じ面積を持つ広大な岩手13市町村の沿岸部を縦断。ひと口に三陸といってもリアス式海岸と3つの海流が織り成す多様性がシェフたちを感嘆させる。



会期中は地元「ロレオール」伊藤勝康シェフ(中央)がホスト的な役回り。右はパリで活躍する「ボタニック」の山口杉朗シェフ。

「いわて食でつながろうプロジェクト」会長を務める盛岡「リストランテ シカザワ」の鹿澤靖幸シェフがホヤの捌き方を伝授。

キャラバンのランチは漁協の女性たちによる自慢の魚介をふんだんに使った料理でおもてなし。種市南漁協で。



三陸北部、下閉伊郡普代村のカネシメ水産では、独自に研究を重ねて神経締めの技を磨いた金子太一さんから、アイナメの神経締めを見せてもらう。10数分間、その見事なまでの美しい技術を海外シェフらは固唾を飲んで見守り、神経締め後5日経過したアイナメの旨味が増した味わいに驚く。



普代村の「カネシメ水産」金子太一さんが実演する神経締めに目が釘付け。



本州最東端に位置する宮古市重茂地区では、収量制限や生活排水制限を通じて海を守ってきた村の歴史と地域資源の豊かさが伝えられ、漁業あっての地域として住民が力を合わせた復興にみな心を動かされる。重茂の特産物のひとつであるアワビの種苗養殖場の見学では、貝の養殖が存在しない地域のシェフたちから様々な質問が飛び交い、その高度な技術を伝えていきたいという声があがる。



ローランジェさんと親睦を深める重茂漁協女性部メンバー。



大船渡魚市場で銀色に輝くカツオに圧倒される。



また、岩手大学三陸水産研究センターの後藤友明准教授による世界三大漁場たる所以の解説、海藻研究者・石川豊氏が語る三陸産ワカメの卓越性、「フロリレージュ」川手寛康シェフが提案するにがりの新しい活用法、生江シェフが披露したショートムービー「Dashi Journey」などシンポジウムで発表された知見は海からの恩恵を再認識させるに十分だった。




ローランジェシェフのメッセージ

一方、海からの恩恵に人間は甘え過ぎたのではないかという事実へと私たちを導いたのがローランジェシェフである。「海洋汚染、温暖化、乱獲によって、海は危機に瀕しています。今、30%の種類の魚が絶滅し、60%の種類の魚が絶滅の危機にあり、漁獲量の40%が陸に揚げられることなく廃棄されています」。

早くから海洋資源問題に着目し、09年より絶滅危惧種をメニューから外してきたローランジェシェフは海の現状への警告を発しつつ、三陸のウニ、ホヤ、カキなど天然採苗による養殖を「海から恩恵を受けながら、海洋資源を奪い取らないすばらしい方法」と指摘する。
「自然は壊れやすいもの。生命とは奇跡です。そのことをみなさんは誰よりも知っている。そんなみなさんは震災を糧として新しい可能性を伝えていくことができます」
ローランジェシェフの言葉は三陸を通して語る世界へのメッセージだ。




「三陸国際ガストロノミー会議2019」より

人類の食料庫である海を守ろう。

オリヴィエ・ローランジェ講演全文


“土地が語る味”

「食は命であり、命は自然から離れたところで存在しません」

まず、私の物語をお話しさせてください。
私はフランス・ブルターニュ地方のカンカルという町で生まれ育ちました。
理系の大学を出たものの、事故に遭い、それをきっかけとして料理の道に進みました。
生きることの幸せを、料理が教えてくれたからです。

海と陸の交わる地域で、私は妻のジャンヌと共に、レストランというより小さなテーブルと呼ぶべき場所を作りました。
そのテーブルで“土地が語る味”を表現したいと思ったのです。
“土地が語る味”とは、土地がもたらす文化であり、土地に対する愛でもあります。

ブルターニュは山の幸・海の幸に恵まれているにも関わらず、ブルターニュ自体がその恩恵をこうむることは長らくありませんでした。
なぜか?  良い食材はみなパリに行ってしまうからです。
ブルターニュという地域はずっとパリの食糧庫として存在してきたのでした。
ガストロノミーが存在しなかったブルターニュにレストランをつくろうという話は、当時は現実離れしていると捉えられていました。この夢のような話を、地域の生産者たちは信じてくれたのです。「土地の物語を料理で語りたい」という私の考えを、彼らは理解してくれたのでした。

次第に私のレストランはブルターニュのみならず、フランス全土、そして世界中に知られるようになりました。
様々な所から、私の料理、ブルターニュの料理を食べに来てくれるようになりました。
そして、2006年、ミシュランから三ツ星が与えられました。
この星は、私のみならずブルターニュという地域に対しての三ツ星だったと思います。
海の料理とは、三陸と同じように、ウニであったり、ホタテであったり、オマールエビであったり、様々な貝類や魚であったり、すばらしい食材に支えられていて、切り離しては成り立たないのです。

ブルターニュの料理は航海者の料理でもありました。
海外へ船で出かけていく人たち、冒険の精神を持つ人たちの料理です。
そんな航海者の精神を受け継ぐ者の料理として、私はスパイスを使いたいと考えました。
エキゾチックな要素としてではなく、航海者たちがブルターニュに持ち帰った宝物として、フランスのエスプリに基づくものとして、私の料理に使いたい、と。

三ツ星を10年前に返上することになったのは、私にとって自由が最も大事だと思ったからです。自由を表現できる料理を作りたいと思ったのです。
三ツ星を返上して、また別のレストランをつくることになりました。
それによって、小さな生産者たちとの関係をより密にすることができました。スパイスブランドを立ち上げるという、スパイスへの情熱を、夢を叶えることもできました。

ルレ・エ・シャトーというホテルレストラングループの副理事の役目を果たすことにもなりました。62カ国550のレストランのシェフ、44,000人のスタッフが集まるグループの副理事という立場です。

海洋資源を守るために。

ルレ・エ・シャトーは、2014年11月18日、ユネスコの会合でマニフェスト「料理とホスピタリティのための20のヴィジョン」を表明しました。
その中に、海洋資源に関わる項目が2つあります。

世界海洋デーの6月8日には毎年、私の名を冠した料理コンテストが開かれます。これは若い料理人たちに、資源量は多くともまだ知られていない魚を使った料理レシピを考案してもらうコンテストです。今年のその日、私は岩手に来ていたため、授賞式に出席できませんでした。「漁業資源の保存の現場を見て、私にできる助言をするために岩手にいるので授賞式にはいけない」という説明をしました。

現在、海は危機に瀕しています。
海洋汚染、温暖化、乱獲など、様々な要因によって、海は危機に瀕しています。
しかし、わたしたちは、青く緑色で時にグレーだったりする海を見て、その内部が危機に瀕していると感じ取ることはなかなかできません。

ここにいくつかの数字を挙げてみましょう。
30%の種類の魚がすでに絶滅しています。
60%の種類の魚が絶滅の危機に瀕しています。
漁獲された魚の40%が陸に揚げられることなく、そのまま海で廃棄され死んでいきます。

料理人は、大きな役割を持つだけでなく、大きな責任を持っています。
料理人は、資源がまだ十分にあり、まだ知られていない魚を使っていくことができます。

私は3日間のキャラバンでこの美しい地域、あなたたちの地域、岩手の地域を旅してきました。そこで多くの人々に出会いました。
私が感銘を受けたのは、彼らの持っている勇気、大胆さ。大震災があったにも関わらず、再び立ち上がり、生きることへの喜びを見出していこうという気持ちです。そのエネルギー、熱意、自然への尊敬の念に感銘を受けました。

この地域は、新しいヴィジョンを生み出していくことができる、と私は思います。この機会を大きな糧として新しい可能性、新しい世界へのメッセージを伝えていける、と。
自然は壊れやすいということを、みなさんは誰よりもわかっている。
生命とは、生きるとは、誰にでもあり得ることではなく、ひとつの例外、奇跡であることを、岩手のみなさんは、他の地域の誰よりも理解されていると思います。

私が岩手で発見した一番の宝物は連帯の力です。
連帯の力を通して、みなさんは復興への道を歩んでいるのだと思います。

新しい世界をつくり上げる時。

今、私たちは新しい世界をつくり上げる時に来ているのではないのでしょうか?
新しい関係は、食を通して、料理を通して見出されたりするものです。
そして、連帯、互いの弱さを補い合うことには、地球との関わりを新しく作り上げる上で、とても大きな意味があるのではないでしょうか?

産業革命以来、私たちは生産量を増やしていけばよいという強迫観念に取り憑かれていました。
しかし、今、それを変える時が来ているのではないでしょうか?
量よりも質を大切にするという考え方への転換です。

その意味において、世界中が日本に称賛の目を向けています。
和食、日本食というのは大変洗練されたエレガンスのある料理だと思います。
日本食という文化を持つみなさんだからこそ、新しい関係を世界と築いていけるのではないかと思うのです。

今、この会場には、若い人たちがたくさん来ています。
彼らが、自分のような年寄りのフランスの料理人の話を聞いてくれていることを、大変うれしく思います。
この機会を通じて、私が若いみなさんに伝えたいのは、みなさんは過去から解き放たれて、新しい料理をつくっていけるのだということです。

三陸は世界三大漁場の一つとされてきました。

ですが、海洋資源は今、枯渇しつつあります。 私は20年前より日本を定期的に訪ねていますが、その間にも、どんどん、どんどん魚の獲れる量が少なくなっているのを目の当たりにしてきました。
魚のサイズもどんどん、どんどん、残念ながら小さくなっています。

私は先ほど岩手の宝の一つは連帯ではないかと申し上げましたが、二番目の宝は魚ではありません。
それはプランクトンです。プランクトンの豊かな海に、この三陸は面しています。
プランクトンがどれだけこの地域のホヤ、ホタテ、牡蠣、ウニなどの養殖に役立っているかを、私はこの3日間の間に見ました。
これは、海の恩恵を受けながらも海から資源を取り上げないで済む素晴らしい方法だと思います。
そして、三陸が世界に誇るべきは海藻です。
海藻の養殖において、世界の手本になる技術をマスターしていると思います。

私が三陸の自然から感じたことは、フランス語で言えば“sauvage(ソヴァージュ)”。
手つかずの、野生の、いい意味であるべき形で残されている自然です。
海のことをずっとお話ししてきましたが、それだけではない。
深い印象を受けたのは、土地の持つ記憶です。そこで育つ野菜、穀物、木々、森。
岩手の森と海は、寛大であり、多くのものを語ってくれていると思います。生きものを貴ぶ精神が、地域で培われていると思います。
生きものを聖なるものとするその精神は、私たち西洋人にとって、「神道」とも結びつけられるように思われます。

私が住んでいるブルターニュは大陸の西、陽が沈む所にありますが、みなさんが住んでいるのは一番東、陽の出ずる所にあります。
世界各地から、陽の昇る国の味を味わいに来たがっている、そう思います。

自分たちから発信していく。

ここで少し不快に感じられるかもしれないことを言わなければなりません。
世界から見て、この地域は「大震災」というイメージと常に結び付けられてきました。
そして、世界中が、福島と「津波の被害があった地域」を混同してきました。
津波にあった地域が、同じように放射能の被害にあっているのではないかと勘違いしています。

私が住んでいるブルターニュでは、戦後、養豚場、養鶏場が多くつくられました。
その結果、養豚場で使われた抗生物質や農薬などが私たちの河川や海を汚染した過去があります。
これは染みのように貼り付いて、ブルターニュの悪いイメージになった。
私たちはフランスに、ヨーロッパ全体に向けて、ブルターニュの海岸へ来ても大丈夫だよ、ブルターニュの食材を食べていいんだよ、と一生懸命伝えなくてはいけませんでした。
ここでも起こっていることは同じだと思います。

世界中の人たちは震災で起こった事象を忘れることはできません。
この地域にできるのは、バクテリアや農薬の数値を検査するのと同じように、放射能の数値はなく安全だという事実を積極的にアピールしていくことだと思います。
トレーサビリティーや安全性に今までになく注目が集まっているのが現代です。
何かを伝えないとしたら、それは何か隠すべきことがあるのだろうと、人は考えてしまう。

私がお伝えすることをパラノイア的な発言だとお考えにならないでください。
明日、未来、将来、より多くの人たちに不安なく岩手の食材を食べてもらう、岩手に来てもらうために必要なことと考えていただきたい。

必要なものは、すでにここに豊かにある。

もう一度、私はこの会場にいる若い人たちにメッセージを送ります。
今の若者たちは、日本に限らず世界中どこでもそうですが、今までになかったような成熟さ、賢さを持ち合わせていると思います。
これからの時代に必要なのは、どんな空気を吸うのか、どんな水を飲むのか、どんな食べ物を食べていくのか……そういうことです。
この地域の新しい物語を書いていけるのは、若い人たちです。
みなさんには、ぜひ、この地域にとどまってほしい。
それは、たとえば農業でも漁業でもかまわない、料理人であってもよいと思いますが、東京に行ったり他の地域に行ったりする必要はありません。
必要なものは、すでにここに豊かにある。
自然と調和しながら生きていける、そういう土地にあなたたちはいるのです。

あなたたちは将来、食べる喜びを守る人たちになると思います。
生きるものの多様性、生態系の多様性を守る人たちになるでしょう。
そして、人の健康を守り、そのことによって地球の健康、自然の健康を守る人たちになるでしょう。

私は今、自分が25歳くらいだったらいいなと思います。
岩手は、自分が生まれ育ったブルターニュによく似ている。こんなにもよく似ている岩手……
これからあなたたちは新しい料理を描いていく。海の味、深い深海の味、それだけでなくて森の味、葉緑素の味、そういったものを表現する料理をつくっていくことになると思います。
そして、それらは100年後、岩手の伝統になっていくでしょう。

あなたたち若い人たちがこれから世界中にいる若い料理人たちの一員になった時、そこでつくられる料理は、おいしく、楽しく、同時に倫理的でもあります。
倫理的といっても堅苦しく考える必要はありません。自然との調和から成り立っているものです。その楽譜は豊かな音楽を奏でることでしょう。
この地域の味のパレット、香りのパレットは大変に豊かです。森の幸、キノコ、コケまでもの香りがここに広がっている。
世界中の人々がここへ来て、太平洋の香りを深く吸うことでしょう。繊細な自然へのリスペストに満ちた料理を食べにやって来ることでしょう。

この会場にいる生産者、料理人、そして、消費者という言葉を使いたくありませんので、食べる人たち、そのみなさんが互いにつくりあげているのは「意識の目覚め」です。エコロジーへと舵を切る時代に大きな役割を果たす人々になるのです。

「意識の目覚め」を、私はルレ・エ・シャトーでの活動を通して感じてきました。
ルレ・エ・シャトーというホテル&レストランのグループは、世界で最も恵まれた国々にあるかもしれません。
が、私は同時に、スパイスの活動を通じて、貧しい国々の小さな生産者との関わりを築いてきた。インド、スリランカ、エジプト、メキシコ、マダガスカルなどの地域です。
この「意識の目覚め」の一例をお話しすると、私の息子は30歳になりますが、私とは違ったやり方で料理をしています。
肉をあまり使わない、野菜を多く使う、資源を枯渇させないやり方で魚を使うなどの模索を続けています。

食は、現在、交差点になる大事なところに来ている。
食は社会的な問題を解決するだけでなく、文化的なもの、それから国民の健康に関わることでもあります。

食卓の様々なところに工業的な食が入り込んでいます。
それは一握りの多国籍企業によって支配されていたりする。肥満や糖尿病、癌、心臓病など様々な健康問題を引き起こすという側面もあります。
私たちはその力に対抗すべく立ち上がる時に来ていると思うのです。
先ほど私は、乱獲による海洋資源の枯渇の話をしましたが、当然、大規模農業による、例えば農薬などによる土地の汚染なども含まれます。
そのことによって、私たち自身が、私たちの土地を窒息させつつあるのです。

岩手はガストロノミーの新たな聖地になることでしょう。
そのガストロノミーとは、先ほど申し上げた“sauvage”野生、あるがままの自然を表現する、そういった聖地になることではないでしょうか?

日の昇る海のある岩手の料理を、みんなが食べに来るでしょう。
世界中がこの岩手という地域に注目しています。
私も飲んだ清らかな水を飲み、この清らかな水でできたお酒を飲み、この地で育つブドウでできたワインを飲むことになるでしょう。


命は自然から離れたところでは存在しない。

最後に、1975年に出版された偉大な日本人による著書を紹介して終えたいと思います。
その本は、フランス語にもヨーロッパ各国語にも訳され、ヨーロッパの農業者に大きな影響を与えています。
有機農法に携わる人々に影響を与えているだけでなく、オーガニックワインに携わっている人たちにもインスピレーションを与えています。
日本では有機農法の普及がかんばしくないと聞きますが、現在、フランスでは8%の畑が有機農法によって栽培されています。

その人物とは福岡正信です。
1975年に出版された彼の著書『自然農法・わら一本の革命』は有機農法を目指す世界中の人たちの手本となっています。

私が講演を始めるにあたって、最初に述べた「食は命であり、命は自然から離れたところでは存在しません」という文章も福岡正信から来ていますが、もう一つの文章を引用して、この講演を終えたいと思います。

人間は人間のよりよき生のために働く時、最善の仕事をなすことができます。
それはただ、生産性の向上や効率の良さだけを考えていては成し得ないものです。
そして、漁業の乱獲や大規模農業はそれを唯一の目的として行われてきてしまったのです。

という文章です。
命は自然から離れたところでは存在し得ません。
結論に代えまして、私は今ここにいる喜びを若い人たちと分かち合いたい。
またすぐに岩手に戻ってきたいという気持ちでいっぱいです。
この気持ちを岩手の生きとし生きるものに…。
生に満ちた料理にバンザイ…。
この言葉で終わりにしたいと思います。
(訳・関口涼子)

オリヴィエ・ローランジェ
フランス北西部、ブルターニュ地方の港町カンカルでレストラン「メゾン・ド・ブリクール」を1982年にオープン。2006年版のミシュランで三ツ星を獲得するも健康上の理由で2008年に閉店。ホテル「シャトー・リシュー」、スパイスブランド「エピス・ロランジェ」は継続して営み、後者はカンカル、サン・マロ、パリに店を構えている。早くから海洋資源問題に着目して2009年より絶滅危惧種をメニューから外す。世界57カ国の高級ホテル・レストラン約500軒が加盟する会員組織「ルレ・エ・シャトー」副会長。





ゴールとのつながり


11

住み続けられるまちづくり   地域の自然・風土の保全に努力し、地域資源を
               未来に向けて守っていく


12

つくる責任つかう責任   環境をめぐる問題を理解し、自然と調和した生活を心がける


14

海の豊かさを守ろう   海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する




  

<OUR CONTRIBUTION TO SDGs>
地球規模でおきている様々な課顆と向き合うため、国連は持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals) を採択し、解決に向けて動き出 しています 。料理通信社は、食の領域と深く関わるSDGs達成に繋がる事業を目指し、メディア活動を続けて参ります。









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