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JOURNAL / 世界の食トレンド

America [New York]

2050年までに環境再生型のフードシステムを構築するプランTop10

2021.04.26

  • text by Kuniko Yasutake / photograph by Stone Barns Center



  • ロックフェラー財団主催の「フード・システム・ヴィジョン・プライズ」は、2050年までに現実的かつ理想的な、環境再生型フード・セキュリティ構築案を明示する団体に与えられる賞だ。世界119カ国から寄せられた食糧生産・流通・分配システムの改革プランは1300以上。その中から2020年12月、1年以上に渡る選考期間を経てトップ10ファイナリストが発表された。

    マンハッタンの北部に拡がり、植民地時代から農耕地として知られ近年米国国家遺産に指定されたハドソンバレー。ここに拠点を置く非営利団体、ストーン・バーンズ・センター・フォー・フード&アグリカルチャーは、コロナ禍に被った地域の農作・畜産物の流通破綻を目の当たりにした。そこで、生産者/地域コミュニティ/シェフをつなげる新ネットワークと、それをサポートするインフラの開発・発展を示したタイムリーな改革案で、見事トップ10入りの栄誉に輝いた。

    パンデミックで露呈した問題とは、周辺の家族経営農家がNYCや近郊のレストランと一対一で取引していたこと。緊急事態宣言に応じて飲食店が閉まると、大量の青果、精肉、乳製品が販路を失い廃棄された。今後30年で、食に関わるあらゆるルートを直線的から循環型に移行し、さらに地域の民族文化を反映した生産物のバイオ・ダイバーシティをより豊かにさせることが目標だ。

    今秋、世界食料デーには「国連食料システムサミット」の開催が予定されている。人口増加や環境汚染、食糧不足の懸念。暗くなりがちな食の未来を明るくするために今現在私たちが何をすべきか、考える機会も増えている。

    (写真)ストーン・バーンズ・センターが拠点を置くハドソン川流域は、植民地時代「ブレッド・バスケット」の愛称で呼ばれ、小麦生産が主だった。現在は野菜に加え、リンゴ、メープルシロップ、酪農、ワインの生産地として知られる。


    ◎Stone Barns Center for Food & Agriculture
    https://www.stonebarnscenter.org
    ◎Food System Vision Prize
    https://www.foodsystemvisionprize.org
    ◎UN Food Systems Summit 2021
    https://www.un.org/en/food-systems-summit

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