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JOURNAL / 世界の食トレンド

COVID-19対策―― 世界の飲食店はどう動いたか? ペルー編

2020.06.25


COVID-19対策――

世界の飲食店はどう動いたか? ペルー編

Jun. 25, 2020

text by Keiko Harada

世界の飲食店や飲食業に携わる人々はこの危機にどう対応し、何を学び、何を模索しているのか?コロナの渦中にいる、各国のジャーナリストがリポートします。

(5月15日時点の各国の状況に基づきます。)





高級店も国内の客層に合わせたデリバリー業態へ

3月16日にロックダウンを開始したペルーでは、ライフライン関連の一部企業を除くすべての事業が活動を停止している。休業補償や家賃補助のような制度が全く準備されていなかったにもかかわらず、自国の脆弱な医療体制や経済格差による社会的な問題をよく理解している国民は、これを素直に受け入れた。大統領の強い指導力の下、挙国一致での短期終結に賭けたのである。しかし、富裕層から下位経済層へと感染が拡大するにつれ、新規感染者数は飛躍的に増加。早期解決に期待していた飲食店を絶望の淵へと追い込んだ。

「このままでは飲食店の8割が廃業に追い込まれる」と考えたペルーホテル・レストラン 関連協会は、当局にデリバリー解禁を要請。ゼロ金利を含む中小企業向け低金利融資や返済期限の延長も訴えている。政府は段階的な経済再生プログラムを5月4日から開始すると発表。接客営業禁止の飲食店も、テイクアウトとデリバリーについては解禁される見通しだ。ただし、防疫を最優先とする政府の条件* は厳しく、22万軒におよぶ国内正規飲食店のうち即時対応できるのは1%にも満たないと言われている。

「世界のベストレストラン50」では常に上位に名を連ねる「セントラル」のヴィルヒリオ・マルティネス氏は、国内有力紙のインタビューに「(外国人観光客が来ない今)飲食店は値下げを始め、国内の客層に合わせた見直しが必要」と答えた。
彼が経営する「マヨ・バー」は、業態をカジュアル料理のデリバリーに変更するという。高級料理店としてのプライドより、従業員の雇用確保が先決というセントラル、ブランドイメージと変革の共存が生き残りのカギとなりそうだ。

*ペルーのテイクアウト、デリバリーの条件
・事前予約事前支払いの上、時間を決めて取りに来ること。(5月頭時点公共交通機関がほとんど停止、通行許可のない自家用車の使用は禁止されているため、徒歩圏内の店に限られる)
・配達員経由による感染拡大防止のため、配達員の防疫管理責任があいまいなアプリの利用は禁止。自社雇用の配達員を使用するケースのみ許可。






<世界のコロナ対策:ペルーの場合>


▼行動制限要請、地域・全国封鎖の時期
3/16~ 全国封鎖(経済活動は5/4から段階的に再始動)
3/18~ 夜間外出禁止令(リマ州20:00~翌4:00、州により異なる)

*夜間外出禁止令より食料品店や薬局も含め、営業時間が短縮

▼飲食業への要請や命令内容
3/16~ ロックダウンに伴い、全国の飲食店・ホテルは全面休業(テイクアウト、デリバリーも不可)

▼飲食業(企業全般)への主な救済策
◎ 賃金補償
月収1500ソレス(約45,000円)以下の労働者には国が35%を補償

◎ 給付金
中小企業の労働者で月収2400ソレス(約72,000円)以下かつ退職金積立(CTS)所持者には3カ月にわたり760ソレス(約22800円)支給

◎ 年金等前払い
労働者は退職金積立(CTS)のうち2400ソレス(約72000円)まで、民間年金基金(AFP)の掛け金の25%まで引き出し可能

◎ 雇用保障
労働契約一時凍結制度(労働雇用促進省の許可を受けた企業のみ、7/9まで期限・延長可能)

◎ 融資
経済再生プランで300億ドル(約3兆1,500億円)を拠出(国内GDP12%に相当。中小企業向け低金利融資など)






◎ Central
http://centralrestaurante.com.pe

(『料理通信』2020年7月号/「ワールドトピックス」より)



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