HOME 〉

JOURNAL / 世界の食トレンド

COVID-19対策―― 世界の飲食店はどう動いたか? 香港編

2020.06.15


COVID-19対策――

世界の飲食店はどう動いたか? 香港編

Jun. 15, 2020

text by Rie Suzuki

世界の飲食店や飲食業に携わる人々はこの危機にどう対応し、何を学び、何を模索しているのか?コロナの渦中にいる、各国のジャーナリストがリポートします。

(5月15日時点の各国の状況に基づく。)





美食都市を支える飲食業へのダメージを最小限に

感染者の情報開示という政府の強い管理下で行なわれた香港のコロナ対策は、ロックダウンはせず経済活動を維持しながらも、5月15日時点で死亡者数4名という成果を収めている。そして人と人との出会いによって歓びを生む産業ゆえに、世界的に大きなダメージを受けている飲食業界において、イースター休暇の売り上げが大幅アップという驚くべき結果を出した。そこには美食都市を支える飲食店、それらを支える第一次産業への、行使力のある政策と手厚い保障をセットで打ち出す政府の強い決意が見える。

3月27日に飲食店への“6つの防疫措置”が発表されてから約1カ月。規制を遵守している「ネイバーフッド」オーナーシェフ、ディヴィッド・ライ氏は、政府による手厚い助成金は経営者と従業員への大きな支えになっているという。「香港では他国のような都市封鎖はなく、危機管理をしながら営業できることは大きな幸運です。さらに6カ月間耐え抜けば、市場が回復した時、飲食業界はすばらしい転機を迎えていることでしょう」。

この10年間、経済成長による市場の混雑過多で、家賃と人件費が持続不可能なレベルまで上昇した香港では、人材不足からサービスの低下も見られていたが、コロナ禍に直面したことで、過熱した市場の圧力がやっと緩和されたと考える。

「今は料理人、経営者、生産者、客が立ち止まり、互いに感謝する貴重な機会。不況時に あっても支えてくれる常連客は、成功した店にとって大事な宝であるということにも気がつくだろう。今後、輸入が制限されれば食材を工夫して活用したり、持ち帰りサービスにも柔軟に対応していくでしょう。まず私がすべきことは、事態の早い収束に向けて、経営者として責任をもって規制を遵守すること。たとえ顧客を減らすこととなっても」。




<世界のコロナ対策:香港の場合>


▼行動制限要請、地域・全国封鎖の時期
1/25~ 在宅勤務および学校休校
1/28~ 中国本土からの入境制限
1月下旬~ 感染者全員の詳細(居住先や感染経緯など)について、政府公式HP上での情報開示
3/25~ 海外からの非居住民入境禁止(中国本土、マカオ、台湾からの入境は別途規定あり)、香港国際空港での乗り継ぎ禁止

▼飲食業への要請や命令内容
【3/27発令】
レストラン、飲食店、バーに対して下記の6項目の防疫措置
① 客数は通常の座席数の50%を超えない(~4/22)
② テーブル間は1.5メートル以上空ける、または仕切り等で隔てる
③ 1テーブルの利用は最多で4名まで(5/4~8名まで)
④ 店内での客・従業員のマスク常時着用義務(飲食中を除く)
⑤ 入店前の客・従業員の体温検査を実施
⑥ 店は消毒液を提供

罰則:違反した店舗・施設の責任者・管理者は最高5万香港ドル(約70万円)の罰金と6カ月の禁固刑。
③については、違反者は定額2千香港ドル(約2万8千円)または最高2万5千香港ドル(約35万円)の罰金および6カ月の禁固刑

【4/3発令】
・バーとパブの閉鎖(~4/16)
・ケータリングビジネスの閉鎖
・レストランなど全ての飲食店でのアルコール販売禁止(~4/16)

罰則:違反した店舗・施設の責任者・管理者は最高5万香港ドル(約70万円)の罰金と6カ月の禁固刑

▼飲食業(企業全般)への主な救済策
【2/21発令】
◎ 飲食業への支援金
計37億8千万香港ドル(約543億2千万円)
・一般の飲食店、工場食堂には20万香港ドル(約280万円)
・軽食店、食品製造業、ベーカリー、生鮮食品販売には8万香港ドル(約112万円)
・屋台には5千香港ドル(約7万円)


◎ 漁業への支援金
計2億7千万香港ドル(約37億8千万円)

◎ 給付金
18歳以上の居住民に対して一律1万香港ドル(約14万円)

【4/3発令】
◎ 事業補償
漁師を雇用する漁船の船主には、船の大きさにより1隻当たり8万~20万香港ドル(約112~280万円)

【4/8発令】
◎ 飲食業への支援金
店舗の面積に応じて25万~220万香港ドル(約350~3080万円)

*条件として最低80%は従業員の給与に充てること、従業員の6カ月間解雇禁止


4/3発令を受けて閉鎖したバーやパブには5万香港ドル(約70万円)

【4/14発令】
◎ 賃金補償
従業員1人当たり毎月9千香港ドル(約12万6千円)を上限に、賃金の50%を半年間支給

*条件として従業員の解雇禁止

◎ 事業支援
オンライン化による新しいビジネスモデル(フードデリバリーなど)に対して、1社当たり30万香港ドル(約420万円)

【4/20発令】
◎ 融資
中小企業向けに融資額100%保証の即日実行の支援






◎ Neighborhood
Facebook @neighborhoodhk
Instagram @davidtlai

(『料理通信』2020年7月号/「ワールドトピックス」より)



料理通信メールマガジン(無料)に登録しませんか?

食のプロや愛好家が求める国内外の食の世界の動き、プロの名作レシピ、スペシャルなイベント情報などをお届けします。