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JOURNAL / 世界の食トレンド

Spain [La Rioja]

洗浄時間4分!マイクロ波でワイン樽を洗う新技術

2021.05.17

  • text by Yuki Kobayashi



  • ワイン醸造に使われる木樽が最良の状態を保つのは、大体5年程度だという。空になった樽は、水やお湯で洗浄または硫黄で燻蒸され、再利用するのが常だ。5年を超えると木目や節に染み込んだ古いワインの成分が、味に悪影響をもたらすようになる。ボデガ(ワイン醸造所)にとって新樽の購入は大きな投資だ。

    どのボデガにもついてまわるこの課題において、革新的な技術がリオハに登場した。「クリーンウッド(Cleanwood)」と命名されたこの技術は、高周波のマイクロ波を樽に通すことで、水や蒸気が入り込めない微細な隙間にある汚れを除去。しかも樽一つにかかる洗浄時間はたった4分だ。

    リオハの「ボデガ・ベロニア(Bodegas Beronia)」では、早速この技術を導入している。ベロニアで有する樽は全部で4万本。初期投資は必要だが、洗浄に費やす時間も電力も大幅に節約できる。

    最大の魅力は、マイクロ波が樽全体を貫き、木材の品質を損ねることなく湿気を除去し殺菌するため、樽自体の寿命を伸ばすことができる点だ。これまで5年前後で買い替えが必要だったオーク樽は、12年間使用可能になる。再生した樽で熟成させたワインは雑味が除かれ味わいはクリアに、色合いもはっきりするという。

    ボデガにも、環境にも優しいこの技術。クリーンウッド社では所蔵本数が大きいボデガには設置型機械を、また小さいボデガには可動型機械を用意してサービスを提供している。2019年に立ち上げたばかりの若い会社だが、すでに国内外のクライアントから高い評価を受け、特許も取得した将来有望な新技術だ。

    (写真)樽の硫黄燻蒸は健康被害を踏まえて、EUでは2022年に全面禁止になる。ブレットと呼ばれるワイン醸造で好ましくない酵母の一種もクリーンウッドの技術で完全に排除することに成功した。




    ◎Cleanwood Technology
    Polígono El carrascal
    Nave 16, 01308 Lanciego (Alava)
    https://www.cleanwood.es/

    作業工程動画
    https://vimeo.com/334428598

    ◎Bodegas Beronia.S.A
    Carretera de Ollauri a Nájera.
    km.1,8. 26220 Ollauri-La Rioja
    https://www.beronia.com/es



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