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日本 [青森] 

独自の品種を開発して産地を守り、世界を目指す。
青森県が生んだ新品種「ジュノハート」

Journal / JapanMar.30, 2020

text by Saori Bada / photographs by Kouichi Takizawa

果物栽培に恵まれた土地、青森県南部町

澄んだ青空が広がる7月の初旬。新しいさくらんぼが誕生したという話を聞き、青森県の南部町を訪ねた。りんごでつとに有名な青森県だが、実はりんご以外の果物も豊富に作られている。特に県の南側に位置する南部町は日照時間が長く、りんご以外の果樹栽培も盛ん。町の人の言葉を借りれば「パイナップルとバナナとみかん以外はなんでもつくれる」という土地だ。実際さくらんぼ以外にも、桃や洋梨、ぶどうにあんず、ブルーベリーなど、多くの農家が様々な果物を手掛けている。




青森県でのさくらんぼ栽培は、りんごより少し遅れて大正時代に始まっている。最初はりんごを強風から守るための防風林として植えられていた。やがて、さくらんぼ自体が、この地域の農作物を悩ませる冷たい季節風のやませに強いという特性が生産者に好まれ、味わいの向上とともに、さくらんぼ狩りなど行楽としても地元の人気が高まり、次第に様々な品種の栽培が盛んになったという歴史を持っている。

さくらんぼの旬は6月後半から7月中旬ごろまでだが、細かく見ると佐藤錦や紅秀峰、南陽、サミットなど、品種によって収穫時期が少しづつ違う。それぞれの旬は2週間ほどだ。実が張って重くなり、色が濃くなると収穫のタイミングだ。



500円硬貨ほどの大きさも!?新品種「ジュノハート」


農園に入ると、緑の葉が茂る木々の間から、たわわに実ったさくらんぼの鮮やかな赤が目に飛び込んできた。近づいて新種の粒を見て驚いた。実がぷっくりしたハートの形をしていて、圧倒的に可愛いのだ。このハートの形だけでも十分に特別感がある。夏の太陽を浴びて深みが増した赤い皮はつやつやと光り、張りのある果肉が食べ頃を迎えている。

ひと粒口に含むと、ぱりっとした食感。口の中で種がほろりと果肉から離れ、とても食べやすい。甘みがかなり強く、さりとて酸味もあるので味のバランスがいい。そして、粒がひと際大きい。500円玉よりも大きいのだから、食べ応えが抜群だ。こんなに華やかで見栄えのするさくらんぼは、きっと国内だけでなく、海外でも話題になるに違いない。初めて見て、その場で食べて、たちまちそう確信した。



この新しいさくらんぼの品種名は「ジュノハート」。青森県が研究開発に24年もの長い月日をかけ、ようやく今年デビューしたものだ。名前の由来はローマ神話の女神ジュノ(Juno)と、ハートの形の意味が込められている。自社の農園で新品種の試験栽培に協力した沼畑総合ファームの沼畑俊一さんは、「今年で70歳になりますが、生きている間に出荷できて本当に良かった」とひと際嬉しそうだ。それにしても、新品種の開発にそんなにも長い時間が必要だったとは。


ジュノハート生産者 沼畑俊一さん 俊吉さん親子。俊吉さんはNPO法人青森なんぶの達者村の代表理事も務める。



海外の品種に頼らず、独自に開発する
それが産地を継承し、生産者を守る道だから

青森県がさくらんぼの新品種を研究開発し始めたのは、平成のはじまりの頃。当時海外では果物の品種が知的財産として登録されはじめていた。そんななか、久保隆さん(青森県職員・果樹育成担当)は、「海外の優れた品種に頼ることなく、自分達の独自品種を持たなければ、この先さくらんぼの産地を維持し、生産者を守ることができなくなってしまう」という強い危機感を感じ、新しい品種を作りだすための事業計画を立て、2名の職員と研究をはじめた。ゴールがまったく見えない、完全に手探りの出発だったという。


青森県三八地域県民局地域農林水産部 農業普及振興室分室 総括主幹 久保隆さん。ジュノハートの開発の第一人者。


果物の品種改良は、聞けば聞くほど気の遠くなる仕事が続く。毎年品種ごとの掛け合わせを15種前後行い、数年で実が成ると、今度はひたすら実の出来を調べ、食べて味を確認する。糖度や酸味、果肉の柔らかさ、果汁の具合、色、形、香りなどを、実際に食べながら調査していくというもの。もちろん、1本の木から1粒ではない。時期や箇所を変えていくつものサンプルを取り、ひたすら食べ、平均値や特徴を探る。このような試みを続けた結果、掛け合わせで生まれた種類は150を超えた。そんな中、甘みの強い紅秀峰と、果実が大きいサミットの掛け合わせによって生まれたのが、ハート型で大粒の新品種、ジュノハートだった。


試験栽培中の平成17年には、県南果樹部の近隣で大規模な山火事が起こり、ジュノハートの原木があわや消失という危機にも直面したが、強運にも一歩手前で山火事は鎮火し、原木は奇跡的に燃えずに残った。そんなエピソードを持つ幸運の木でもある。


試験栽培から通常の栽培に移し、さくらんぼ農家に実際に育ててもらうと、苗木を預かった果樹園主たちはその出来を見て驚き、喜んだ。その一人、留目秀樹さんは「人気品種の佐藤錦は、収穫はじめは果肉がしっかりしているが、7月に入ると果肉がどんどんやわらかくなっていくのが唯一の欠点。でもジュノハートは常温で数日たっても果肉はしっかりしていて、『これは世界に通用する、いける』と感じた」と最初の感動を話す。

三戸町の山田仁志さんも初めて実った大粒で甘いジュノハートを見て、味わって「凄い子が生まれた、100年に1度ではないかと思った」と、驚いた。何十年とさくらんぼを育ててきた農家の人達がこんなに素直に喜べる、そして驚くというほどの新種だ。今後もさらに現場での育成技術が進み、品質が高まっていくだろう。



さくらんぼは、りんご同様実が成るまでの手入れが大変な果物だ。出来上がる果実のために、絶えず余計な枝葉を切り落とす作業が欠かせない。春先に花が咲き、やがて花芽が5つ出ると、まず一つ一つの花芽の表情を見ながら3つに摘果する。さらに大きく育ったところで、2つに摘果する。農家の人達は経験上得た知識をもとに、実の付く様子をイメージしながら選抜し手入れしていくわけだが、ジュノハートを育てるみなさんも、期待の新人のデビューを前に、きっといつにも増して育成に熱が入っていることだろう。2019年は青森県内限定での販売だが、2020年からいよいよ全国デビューの予定。きっと世界の果物チャートを席巻するに違いない。

ジュノハートの中でも、4L(横経3.1cm以上)サイズの大玉で、かつ「秀」「特秀」と品質検査で認められたものだけを「青森ハートビート」という名でブランド化。「青森ハートビート」は、化粧箱に並べて入れるとまるで宝石のように美しく、特別なギフトにぴったりだ。




◎「ジュノハート」について
https://www.umai-aomori.jp/junoheart/









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