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JOURNAL / JAPAN







日本 [沖縄] 

アジアのベスト・ペストリーシェフ、
ジャニス・ウォンが沖縄で生産者の情熱に触れる旅

Feature / MovementDec. 2, 2019

text by Eri Sasaki / photographs by Shigehisa Uesugi

リゾートアイランド「沖縄」には、今や年間1000万人近い旅行者が訪れ、6年連続で過去最高を更新中。海外からも大型クルーズ船の来訪、アジア諸国からの直行便路線拡充などの追い風が吹き、訪日リピーター達にも「ネクスト・ゴールデンルート」(次なる旅の候補地)として熱い視線が注がれている。

沖縄の魅力と言えば、琉球王朝時代から受け継がれる文化の独自性だ。なかでも亜熱帯性気候が育む山海の恵みを活かした食文化には興味が尽きない。沖縄ならではの食材の魅力を探ろうと、シェフ、アーティストとして世界各国で活躍し、二年連続でアジアのベストペストリーシェフに輝いたシンガポール出身のジャニス・ウォンシェフが、8月初旬の沖縄本島を訪れた。

複合型リゾートの開業後、一気にファインダイニングの層が厚くなったシンガポールには世界中の高級食材がズラリと並ぶ。その多くを輸入に頼らざるを得ないため、産地の繫がりを肌で感じる機会に乏しいのが実情だ。

「質の高い食材が作られる日本は、私にとって特別な国。沖縄で食材の産地を訪ね、生産者と触れ合い、お皿の上で表現できることが何よりも楽しみ!」と期待を胸に旅は始まった。


アセローラの粒に
沖縄の農の未来を込めたパイオニア

アセローラの実は、グリーンがかった果実を収穫し、半日、一日で徐々に完熟し、真っ赤に色づいていく。完熟のものはピューレ、ジュースやジャム、マスタード等に自社で加工、販売されている。

那覇から北へ車で90分、深い緑に包まれた本部町並里地区。国内アセローラ栽培のパイオニアとして知られる農園「アセローラフレッシュ」を訪れた。


亡きご主人・康文さんと二人三脚で仲間の農家さんと共にアセローラ栽培を根付かせようと取り組んできた会長の並里哲子さん(写真左)。

沖縄におけるアセローラの歴史は1958年にハワイから伝えられたとこに始まるが、すぐには根付かず、農作物としての栽培は定着しなかった。並里康文さんは、大学在学中にアセローラの存在を知り、県の農研センターにあった1本のアセローラの木を見つけ、本部町の環境に合った栽培方法を研究。大学院卒業後に仲間と共に栽培を本格的に手掛ける。200軒の農家に栽培を呼びかけるも、当初は8軒。現在は本部町だけで年間10トンを収穫するまでになり、町外も含めると約50軒の農家が栽培を行っている。


収穫したアセローラは、用途に合わせ、色ごとに選別する。中間の色の実が一番ビタミンCが豊富。ポリフェノール、アントシアニンを含む。美容にもピッタリのフルーツ。

日本で生産されるアセローラは、ほとんどが沖縄産。本部町は沖縄のアセローラ栽培の先駆者として名を馳せる。
アセローラ100gあたりのビタミンCは、レモンの34倍もの量を含んでおり、美容によいと人気だ。

「沖縄には年間何度も台風がやってくる。風雨が激しいと実が傷みはしないかととても気にかかります。私たちは健康と美容にもよいアセローラの栽培を通して、地域の農家と共に歩んできました。雇用も生み出し、多くの人々にもっと楽しんでもらいたいと商品開発にも力を入れています。」


小さなショップには、「ニッポン全国ご当地おやつランキング」で1位を獲得したことのある「アセローラフローズン」など人気メニューが楽しめるスペースも。

「とても新鮮! 自然の甘酸っぱさが何とも言えませんね。地域の農家さんと共に挑戦を続けコミュニティと共に歩む姿勢が素晴らしい。是非デザートに使ってみたい!」と感激するジャニスシェフ。果実は柔らかくて傷み易くほとんど流通しない。産地でのみ楽しめる貴重な生のアセローラを手に触感、香り、味をじっくりと堪能した。


地域の農家とともに栽培規模を広げ、雇用を生んできた。明るいメンバーによるチームワークが栽培から加工までを支える。

アセローラ栽培に情熱を傾けた哲子さん、地域の方と共に大切に育てられたアセローラを自らのクリエイションに活かしたいというジャニスシェフの思い、二人の心の中でバトンが渡されたような一瞬のやり取りだった。

◎ 農業生産法人 株式会社アセローラフレッシュ
沖縄県国頭郡本部町並里52−2
☎ 0980-47-2505


爽やかな風を運ぶ酸味と香り、
シ―クヮーサーが実る畑へ

実はサイズこそ小さいものの、厚くて硬い果皮を持ち、枝にしっかりと実を付けてなかなか外れない。「酸っぱくて、とてもフレッシュ。見た目は、シンガポールでも目にするカラマンシーに似ています」。



古くから沖縄北部で栽培されてきたミカン科の在来柑橘「シークヮーサー」。山間部に植えられていたシークヮーサーを平地である現在の広大な農園へ移植し2万本以上を栽培、年間200~300トンを収穫する、もとぶウェルネスフーズ株式会社の平良 淳さんにお話を聞いた。

「一般的に青い実として知られるシークヮーサー、その『青切り』の収穫期は、夏場の8~9月から。主に加工用に使われるが、11月以降は徐々に黄色く色づき実も大きくなるので、みかんのように皮を剥いて食べることができます」

農園では、栄養素を多く含んで皮が厚く、果汁に酸味と強い香りがある品種「カーアチー」を栽培している。農園から数分の距離にある自社工場で鮮度を保って搾汁し、冷凍保存して各商品に使用する。
近年の研究によると、シークヮーサーは他の柑橘類と比べて生活習慣病予防などにも役立つ「ノビレチン」が豊富なことがわかり、人気に拍車をかけているという。身体に良い食生活に深く関心を寄せるジャニスシェフ。さらに興味を深めたようだ。

◎ オキハムグループ 農業生産法人 もとぶウェフネスフーズ株式会社
沖縄県国頭郡本部町字豊原742
☎ 0980-51-7710


循環農業で、パインアップルの美味しさを
追求する情熱のファーマー 

写真左からゴールドバレル、N67-10、沖縄19号(2個)、スナックパイン、塩パイン(2個)。並べてみると、サイズ、果皮の表面、色などに様々な特徴があることがよくわかる。



Welcome ! カナンおきなわの依田啓示さんに流暢な英語で迎えられたジャニスシェフ。是非沖縄のパインアップルを使ってみたいと、依田さんの畑がある県内一の生産量を誇る東村を訪ねた。




かつての沖縄では、サトウキビと並んで缶詰用のパインアップルが重要な農作物として栽培されていた。戦後のパインアップルブームで産業は活気づくも、輸入缶詰との価格競争に遭い荒波にさらされ、加工用のパインアップルは衰退を余儀なくされた。そこで現在沖縄のパインアップル農家では、付加価値の高い生食用の栽培に力を入れるようになった。

依田さんはハワイの大学を卒業後、就職経験を経て2003年から農業に取り組み始めた。現在、パインアップルの他にも様々なフルーツや野菜の栽培、豚の飼育を手掛け、強い信念のもと、人にも環境にもよいサステイナブルな食材の生産と提供を目指した「循環農業」を実践している。14年前から特に力を入れているのがパインアップル栽培だ。

土壌作りからすべてがはじまる。大事なのは、水分を与え、絞るタイミング。大きさだけを目指すのではなく、小さくとも美味しさが凝縮したパインアップルとは? 自問自答をくり返しながら挑戦を続けてきたという。


パインアップルは収穫後にはほとんど追熟しないため、完熟した食べごろの状態で収穫。



「パインアップルの収穫は年に一度。栽培方法の研究も、10回の挑戦をしようと思うと当然10年掛かることになる」と語る表情からも、これまでの試行錯誤の日々が伝わって来る。



デザートに向く品種は、との問いに依田さんがまず薦めたのはピーチパイン。熟すと外側の皮もほんのり赤みがかり、桃のような甘い香りが漂う品種で、果肉は白っぽく食感はクリーミー、芯の部分まで楽しめるのが特徴だ。食品の廃棄、環境問題にも関心の深いジャニスシェフ。芯まで美味しく食べられるという特徴にしっかり反応した。


「Wow! 初めての食感。本当にクリーミー。しかも芯まで楽しめるなんてクール!」。食材は余すところなく使いたい。「皮はギリギリのところで切りますね」とナイフで皮を剥くにも細心の注意を払う。



カナンファームでは、パインアップルの栽培で出た屑や泡盛粕を豚に与え、その糞を畑に戻す。生産者がサステイナビリティについて考え行動し、消費者もそうした食材を選び支えて行くことは、今や世界的なムーブメントと言っていいだろう。ジャニスシェフもその理念に強く賛同し、食材の皮や種をローストして使うなど、日頃から様々な試みに余念がない。
沖縄のパインアップルを使う度に、味の背景にある生産者の挑戦がジャニスシェフの言葉で語られていくに違いない。

◎ 農業生産法人 有限会社カナンおきなわ
沖縄県国頭郡東村字平良271-1
☎ 0980-43-2468


ビーグ(照間ビーグ)
日本伝統の清々しい香り、スーパーフードの注目株

照間は、沖縄産ビーグの95%を占める産地。



日本の住宅から和室が減り、畳表(たたみおもて)も海外産の輸入が盛んとなった今、材料となる「い草」は全国的に生産者が激減している。沖縄では「ビーグ」と呼ばれ、強い陽射と潮風を受けて生長するため害虫が付き難く、農薬をほぼ使用せず丈夫に育つことが知られている。

そんな沖縄産ビーグに新たな価値を見出だそうという動きが生まれている。ラフィアのように編まれたビーグ帽、アロマディフューザー、なかでもユニークなのは食品への利用。研究の結果、主に7つの栄養素、食物繊維、マグネシウム、鉄、ビタミンE、ビタミンB2、ビタミンB6、 葉酸が含まれたスーパーフードとも言うべき食品であることがわかったという。


スッとまっすぐに空に向かって伸びるビーグは、90-120cm、畳の幅になると刈り取られ、それより短いものや切れ端がビーグパウダーとして加工される。



「タタミマットレス? その草がエディブルだなんて!」とジャニスシェフも意外性に驚き、興味を持ったようだ。抹茶パウダーのように使用できるため汎用性が高く、青々としたビーグ本来の香りに加え、ほのかな甘味、きな粉のような風味がある。パウダーにしたビーグの淡い「うぐいす色」を活かし、何やらアイデアを思い付いたようだ。


「甘さと、沖縄の大地で育った素朴なビーグの風味のバランスを楽しんでほしい」との思いで作った、ビーグチョコレート。ホワイトチョコレートとビーグパウダーを合わせ、アラレのクランチを入れた。口に運ぶとほんのり青いビーグの香りが広がる。



キッチンスタジオでのクリエイション

沖縄の生産者との交流を経て、現地のキッチンで披露してくれたジャニスシェフのクリエイションをご紹介しよう。


マンゴーシークヮーサーパラダイス
ハニーパルフェ、蒟蒻ブラウンシュガーゼリー、マンゴーシークヮーサームース、シークヮーサージェル、フレッシュマンゴをグラスデザートに仕立てた。(器:琉球ガラス村)


パインアップルアセローラ
生とグリル、2種のパインアップルをメインに、ドラゴンフルーツのアイスケーキ、バニラパイナップルブリュレ、アセローラアイスクリーム、パイナップルバブルを盛り付けた一皿。(器:琉球ガラス村)


チョコレート ボンボン
花の形:アセロラ
バラの形:アセロラ
ブルーのダイアモンドとスクエア:ブラウンシュガー
白ベースにピンクとブルーの模様:シークヮーサー


photograph by Janice Wong

バタフライピーティーのモクテル
バタフライピーのお茶にシークヮーサー果汁を加えると青から紫に色が変わるノンアルコールカクテル。


photograph by Janice Wong

チョコレートシークヮーサーチューインガム
シークヮーサーパウダーを練り込んだガムをチョコレートでコーティング。




◎ Janice Wong
https://www.janicewong.com.sg/
Instagram
https://www.instagram.com/janicewongjp/

◎ トップパティシエがみた沖縄食材の魅力
https://kuwachii-okinawa.com/top_chef/











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