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生涯現役シリーズ #05
86歳の和菓子職人。「ここで生まれて、ここで生きてきた」

東京・銀座「柏屋菓子店」保坂嘉一(ほさか・かいち)

People /Pioneer Jun. 2, 2021

text by Kasumi Matsuoka / photographs by Masashi Mitsui

世間では定年と言われる年齢をゆうに過ぎても元気に仕事を続けている食のプロたちを、全国に追うシリーズ「生涯現役」。超高齢化社会を豊かに生きるためのヒントを探ります。


保坂嘉一(ほさか・かいち)
御歳86歳 1933 年(昭和8年)1月4日生まれ
「柏屋菓子店」

中学生から二代目の父の仕事を手伝い始め、20歳頃から本格的に店の仕事を任されるように。父が他界した41年前、46歳で三代目に。一緒に店を切り盛りする妻・絢子(あやこ)さんとは、近所に住んでいた叔母さんの紹介で、54年前にお見合いで知り合い、結婚。娘2人、大の和菓子好きの孫1人。好きなお菓子は、桜餅、柏餅、草餅、おはぎ。

(写真)店に立つ三代目店主、保坂嘉一さん。普段は奥の仕事場でお菓子を作り、妻の絢子さんが店に立つが、嘉一さんが店に立つことも。「二人でやってるから、何ごとも臨機応変にね」(嘉一さん)。


お菓子は毎日同じように作ることが、一番難しい。


うちは歌舞伎座が現在の地に完成した翌年、1890年の創業。私は祖父、父と続いて三代目です。これまでずっと歌舞伎座の真裏にいながら、まだ一度も歌舞伎を観たことがないの。死ぬまでに歌舞伎座、それからディズニーランド、東京ドーム、東京タワーには行ってみたいもんだねえ。ハハハ。

初代が昭和の区画整理の後に、この場所に店を構えました。私は中学生ぐらいから配達や店番をして手伝い始めて、それからずっとこの店で働いてきた。親父から仕事を教わったというよりは、手伝いながら見て覚えたね。お菓子作りも然りで、一生懸命手伝っていたら自然と覚えた。小豆の煮方に始まって、下ごしらえから手伝いながら、和菓子作りのイロハを身につけてきました。

お菓子はね、毎日同じように作ることが、一番難しいんです。砂糖の量も、毎日同じ量を入れたら、同じ甘さになるとは限らない。例えば夏場は砂糖そのものが湿気を含んでいる分、少し量を減らしたりと、季節や天気に合わせて、調整が必要。その感覚は、毎日毎日、お菓子を作り続けるうちに体に染み込みました。


冬の定番の人気菓子「栗蒸し羊羹」(\200/個・税込)。小倉餡に小麦粉を揉み混ぜ、少量の片栗粉と塩を加え、1時間半ほど蒸した羊羹に、蜜漬けの栗を加える。秋口から3月頃まで購入できる。取材中も栗蒸し羊羹を求めて店に立ち寄る人が絶えなかった。

私は生まれてこのかた、1階にある仕事場での生活で、2階の座敷は寝る時だけ上がる場所。だから人生のほとんどを、店と仕事場がある1階で過ごしてきました。日曜日は、夕方から夜10時頃まで栗蒸し羊羹と鹿の子の仕込み。何せ私一人で作ってるから、全部その日に作ってたら間に合わない。だから店に出すお菓子の一部は、日曜日に仕込んでおくんです。

平日の朝は7時頃に起きて、パンと牛乳の朝食を食べて、店を開けます。それから仕込みを開始。お客が来ない午前中は、お菓子もほとんど並んでませんよ。一日に一人で作れる量は、頑張っても5~6種類。数も少ないんだけど、入手できる中で最高の材料を使って作ってます。

昼ごはん?そこらへんにあるものをつまむぐらいで食べないね。こんな商売してるだけあって甘いものが好きだし、味見を兼ねて作ったお菓子を食べるから、糖分を摂り過ぎかもしれない。夜8時半に店を閉めて、また翌日の仕込みをして、本格的にごはんを食べるのは、夜10~11時頃。家に一つしかない台所をお菓子作りに使ってるから、料理する隙なんてない。だから夜は、ご飯と味噌汁、豆腐なんかと合わせて、妻が近くのデパートで買ってきた出来合いのものを食べることが多い。夜ごはんを食べ終える頃には、もうクタクタ。体を引きずるようにして2階に上がって、バタンと寝ます。

こんな生活だから、土曜はくたびれて寝るだけで、日曜は仕込みもあるから、なかなか出かける時間がない。歌舞伎を観られないのもわかるでしょ?(笑) しかし、いつの間にか何十年と時間が過ぎて、気づいたらこの歳になっちゃった。続けてきて良かったこと? いや、良かったも悪かったもないです。ここで生まれて、ここで生きてきた。それだけのこと。「やめないで」と言ってくれるお客も多いけど、自分の代で終わらせるつもり。

さて、仕込み中だから話はこの辺でいいかな?
今日ももうちょっと頑張らないとね。


毎日続けているもの「和菓子」


柏屋菓子店
東京都中央区銀座4-11-5
☎03-3541-8053
8:30 ~ 20:00
土曜、日曜、祝日休
東京メトロ東銀座駅より徒歩3分

雑誌『料理通信』2020年1月号 掲載)
※年齢等は取材時・掲載時点のものです










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