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PEOPLE / PIONEER

山口歩夢さん、篠原祐太さん、関根賢人さん (左から、やまぐち・あゆむ、しのはら・ゆうた、せきね・けんと)
昆虫食スペシャリストチーム

People / PioneerFeb. 18, 2021

地球を味わう喜びを。




人は何を食べて、何を食べないか。その前提を一度リセットして、地球に生息するすべての動植物をあらためて同じテーブルにのせたい。今の調理方法やプレゼンテーションで、おいしい食材の地図が塗り替わるかもしれない。特に知ってほしいのは昆虫の味わいだ。そんな提案を企む若き3人がいる。

昆虫の仕入れを担当し、広報役でグループの代表でもある篠原祐太さん、料理人でメニュー開発を行う関根賢人さん、そして醸造の専門家で独自の発酵食品や飲料を開発する山口歩夢さんだ。今年(2020年)の春、彼らは昆虫食をメインに地球を味わうレストラン「ANTCICADA(アントシカダ)」をオープンさせる。これまでポップアップイベントを中心に活動してきた彼らだが、レストランという自分たちの城がようやく見えてきた。そして、その先も見据えている。【注】
text by Kaori Shibata / photographs by Hide Urabe


ラーメン、スピリッツ、ガストロノミー

代表、篠原祐太さんの昆虫食歴は長い。幼少期から野原で昆虫を採って食べてきた。食習慣としてありなしの物心がつく以前から、虫は原体験としておいしかった。しかし思春期を迎える頃から、周りの空気を読み、その嗜好を隠してきた。転機は慶應大学に進んだ時だった。「いろいろなサークルがあり、背中を押されました」

“地球少年”と名乗った篠原さんは、SNSで昆虫関連の記事をシェアし、情報発信をするようになる。すると「山に行きたい、昆虫を食べてみたいという人がメッセージをくれて、ワークショップを行なうようになりました。山で蝉をとって一緒に炒めて食べる。皆が喜んでくれて、自信がつきました。一番の後押しは、FAO(国連食糧農業機関)の2013年のアジェンダです。昆虫食がこれからの食糧危機を救うというポジティブなメッセージが出されてから、昆虫食をメジャーに語る空気が出てきました」。

同じ慶應大学出身の関根健人さんは、大学卒業直後、篠原さんのワークショップに参加し、その姿勢に共感した。彼もまた、幼い頃から身近にある、食べられそうなものを全て食べてきた。「タンポポとかパセリ、エビの尻っ尾、人が当たり前に残すものを食べてきました。大学時代はアジアの屋台で昆虫も食べた。おいしいのに、どうしたら皆がもっと食べるのかなと考え始めたのです」

関根さんは、一度は銀行に就職するも、早々に退職してフランス料理店「ル・スプートニク」の厨房に入る。「既に、篠原と一緒にやりたいと思っていました。人のおいしい、を増やしたい気持ちが強くなってきた」

関根さんは、篠原さんが開発した「コオロギラーメン」のイベントを手伝うようになる。コオロギラーメンは、篠原さんを有名にした昆虫食。人気ラーメン店「凪」の協力を得て、2種類のコオロギから合わせ出汁をとり、麺にもコオロギ粉末を練り込んだ。ラーメン店でのイベントは好評を得、関根さんが入って、他でもポップアップを行うようになっていった。

そこに加わったのが、東京農業大学醸造学科を卒業し、現在も院生として醸造や発酵の研究を続ける山口歩夢さんだ。篠原さんは、ラーメンの材料全てをコオロギでやってみたいと考えていた。そこに妙案を出したのが山口さんのコオロギ醤油だ。「コオロギは高タンパクで大豆よりも風味豊か。面白い醤油になると思った」。コオロギを洗って蒸して麹菌をつける。醤油麹の製麹に則ったやり方だが、麹菌がコオロギの体にうまく入るのは難しかった。苦心の末、コオロギならではの香ばしさのある醤油が完成した。

準備中のレストランでは、コオロギラーメンに加えて、旬の昆虫を使用した四季折々のコース料理も提供する予定だ。
(写真左)フィールドワーク時の携帯必需品。ヘッドライト、加熱調理できるキャンプ用のミニクッカー、虫刺されの毒抜き。洗濯ネットは昆虫収集の虫籠代わりに便利。
(写真右)山口さんが蒸留所や発酵・醸造学のエキスパートと共同開発する発酵食品。タガメを使用したクラフトジンや、コオロギを原料にした醤油など。

昆虫の仕入れについては、コオロギは徳島県と福島県の養殖ファームから、その他の旬の昆虫は、彼らが知る良い採集場で自ら採集する。冬なら慈味深い旨味を持つざざ虫、秋にはスズメバチの蛹(さなぎ)になる直前の幼虫を。おいしい段階の見極めは、独自の経験によるものだ。「見た目の偏見から離れてもらうため、一見では昆虫とわからない皿も提供したい。ペアリングにも、僕ら独自のドリンクを合わせます」。昨年夏(2019年夏)に完成した、タガメのオスのフェロモンのアロマを生かしたジンは、気鋭の小規模蒸留所「辰巳蒸留所」(岐阜・郡上八幡)との協業で完成した。飲料は山口さんの担当だ。

昨年(2019年)は、日本でも昆虫食の話題が増えた。大方の文脈は、食糧危機を救う効率的な栄養源としての昆虫食だ。しかし、彼らが夢みるのは、地球の味を味わう喜びのある社会の構築。レストランをベースに、昆虫のファンを増やす商品開発、食教育、昆虫を地域の食の強みにするコンサルティングも行ないたいと言う彼ら。その根底にあるものは、強くて純粋な、昆虫への愛だ。
(写真左)徳島大学と共同研究しているビールの搾りかすを飼料にした養殖コオロギの乾燥品(左)はビール原料に。桜の葉を食べた毛虫の糞をドライに(右)。茶のように煮出せば桜の上品な香り。
(写真右)害虫として駆除されるスズメバチも、駆除の仕方によっては貴重な食材として活用できる。そうした食資源としての価値の再提案も積極的に行う。スズメバチの巣は2020年春に開業を予定しているレストランのオブジェに。

【注】2020年6月オープン


◎ ANTCICADA
東京都中央区日本橋馬喰町 2-4-6
☎03-6881-0412
各線浅草橋駅より徒歩5分
https://antcicada.com/
Instagram:@antcicada.jp


(雑誌『料理通信』2020年3月号掲載)





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