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大地からの声――12
地域資源を活かす畜産に目を向けて。
「柿木畜産」 柿木敏由貴さん

People / ProducerJun. 5, 2020

「海外のほうが土地は広く、飼料も安く、コストが抑えられる。日本で畜産を営む意味をお客さんに伝えるのはむずかしい」。岩手県久慈市で約250頭の短角牛を飼育する柿木敏由貴さんはそう語ります。「でも今、食のあり方を見直す気運が生まれて、耳を傾けてくれているのを感じます」。



問1 現在の仕事の状況

人々が関心を寄せてくれる。

100頭ほど生まれた仔牛の身体がしっかりしてきて、5月から放牧が始まりました。11haの畑では、餌にするデントコーンの栽培を進めています。
レストランからの注文は止まったままですが、宅配(「大地を守る会」)のほうは、ステイホームの影響で好調です。うちの場合、宅配事業が9割ですので、お陰様で牧場の仕事に大きな影響は出ていません。

東日本大震災の時にも感じたことですが、同じ発信をしていても、人の受け止め方はその時の社会状況によって違います。今、新型コロナウイルスの影響で、人々がこちらに意識を向けてくれていると感じます。

私は小さい頃から短角牛に囲まれて育ちました。牛と言えば短角牛。この牛が当たり前と思っていた。農業学校で黒毛和牛など他の牛の育て方を知り、いっそう短角牛の良さを認識するようになりました。

岩手県の短角牛は主に放牧で育てられます。黒毛の多くが人工授精による交配で、生まれるとすぐ母牛から引き離されて飼育されるのに対して、短角牛の場合、自然交配で、母子一緒に北上山地の標高700~800mの高地に放されます。5~11月頃まで山で過ごし、雪の深い冬になると牛舎に入れる「夏山冬里方式」。人と自然が手を取り合う畜産です。

大きな災害が起きたりすると、人は我に返ります。知ろうとするし、聞こうとする。考えようとする。私自身はずっと変わらずに短角牛の良さを言い続けてきましが、東日本大震災の時、そして今回も、人々がいつもより理解しようとしてくれていると感じます。



問2 今、思うこと、考えていること

日本で畜産を営む意味を考える。


日本で畜産を営む意味をずっと考えてきました。海外の方が土地は広いし、飼料も安く、コストが抑えられる。それでも日本で畜産をする意味は何なのか?

短角牛の前身は、南部藩で物資運搬のため飼われていた使役牛の南部牛です。祖先をさかのぼれば1000年の歴史を持つとも言われます。明治の初め、南部牛に外国種のショートホーン種を交配・改良したのが短角牛。
放牧地の北上山地は、標高が高く冷涼な気候の上に岩盤質の土壌で、稲作には向きません。田んぼは作れないけれど、牛を放牧すれば、牛が草を食べて私たち人間に牛乳や食肉をもたらしてくれる。畜産や酪農は、険しい自然環境を活かしながら食料を生産する手段でもあるのです。
この土地で短角牛が飼育され続けてきたのは、土地に合っていたから。理屈に合っているからなんです。

歌い継がれてきた南部牛追い唄が、南部牛の歴史の証。室町期までさかのぼるとの説も。


私は自分が畜産を営む意味をそこに見出した。だから、短角牛しか飼わないし、飼料となるデントコーンは自家栽培します。それ以外の飼料も国産の小麦や丸大豆などを独自にブレンドして与える。牛糞は堆肥にしてデントコーンの栽培に使います。
輪っかみたいに循環しているんです。その輪っかを経済効率とかのために省略したりすれば歪みが生まれて、輪っかじゃなくなります。



問3 シェフや食べ手に伝えたいこと

柿木がいるから大丈夫と思ってもらえるように。


日本では、黒毛和牛の霜降り肉が食肉市場のメインストリームであるため、赤身の強い短角牛は市場で認めてもらえずに苦労してきました。見た目が輸入の牛肉に近いこともあって、輸入牛の肉質と混同されがちだった。
今、どの和牛産地も飼育技術が向上して、優れたA5肉を産するようになり、産地による個性の違いが少なくなってきています。優れたA5肉が食べられる反面、産地で食べ分ける楽しみが希薄になってきた。ましてや海外でもWAGYUが飼育され、食べられる時代です。
短角牛はここの地域資源を活かして育てているから、まぎれもなくこの土地の味がします。最近話題のグラスフェットかどうか以上に、この土地の味と胸を張って言える。多様な肉の魅力がもっと認められていいのにと思うし、僕は短角牛の肉質が好きで飼育しているけど、みんなどうなんだろう、と思ったりもするのです。

短角牛が好きで好きで仕方がない。短角牛生産者の中でも確固たる信念の持ち主。


マスクが街から消えて、自分で手作りする人が続出しました。マスクは自分で作れるけれど、食材はそうはいかないでしょう。たぶん「故郷の親戚が野菜を作っていたおかげで、スーパーから食材が消える不安が解消された」という人がいるように、柿木がいるから肉は大丈夫と思ってもらえるような関係性をシェフや食べ手と築けたらいいなと考えています。
それは消費者にとって、食料がなくなったらどうしようという心配を取り除くことであり、国産食材の生産者を支えてもらうことでもあります。国としての食の安全安心をみんなでつくっていきましょうという、肉を超えた話だと思うのです。

シェフたちとはさらに進んだ関係性を持ちたいと望んでいます。こちらからも働きかけたいし、シェフたちにも生産現場に足を運んでもらって、互いの行き来を増やすなど、深くコミットしていきたい。まだ具体的な取り組みはイメージできていないのですが、日本の食を形作っていくパートナーとしての意識を共有できたらと願っています。

柿木 敏由貴(かきき・としゆき)
1973年、岩手県生まれ。岩手県久慈市山形村において、短角牛を国産飼料100%で飼育する。闘牛(短角牛の前身である南部牛には江戸時代から闘牛の歴史があり、今も平庭高原で闘牛大会が開かれる。今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止)も育てる。

柿木畜産
http://www.kakiki-chikusan.com/




大地からの声

新型コロナウイルスが教えようとしていること。




「食はつながり」。新型コロナウイルスの感染拡大は、改めて食の循環の大切さを浮き彫りにしています。

作り手-使い手-食べ手のつながりが制限されたり、分断されると、すべての立場の営みが苦境に立たされてしまう。
食材は生きもの。使い手、食べ手へと届かなければ、その生命は生かされない。
料理とは生きる術。その技が食材を生かし、食べ手の心を潤すことを痛感する日々です。
これまで以上に、私たちは、食を「生命の循環」として捉えるようになったと言えるでしょう。

と同時に、「生命の循環の源」である生産現場と生産者という存在の重要性が増しています。
4月1日、国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、関連機関の世界貿易機関(WTO)、3機関のトップが連名で共同声明を出し、「食料品の入手可能性への懸念から輸出制限のうねりが起きて国際市場で食料品不足が起きかねない」との警告を発しました。
というのも、世界有数の穀物生産国であるインドやロシアが「国内の備蓄を増やすため」、小麦や米などの輸出量を制限すると発表したからです。
自給率の低い日本にとっては憂慮すべき事態が予測されます。
それにもまして懸念されるのが途上国。世界80か国で食料援助を行なう国連世界食糧計画(WFP)は「食料の生産国が輸出制限を行えば、輸入に頼る国々に重大な影響を及ぼす」と生産国に輸出制限を行わないよう強く求めています。

第二次世界大戦後に進行した人為的・工業的な食の生産は、食材や食品を生命として捉えにくくしていたように思います。
人間中心の生産活動に対する反省から、地球全体の様々な生命体の営みを持続可能にする生産活動へと眼差しを転じていた矢先、新型コロナウイルスが「自然界の生命活動に所詮人間は適わない」と思い知らせている、そんな気がしてなりません。
これから先、私たちはどんな「生命の輪」を、「食のつながり」を築いていくべきなのか?
一人ひとりが、自分自身の頭で考えていくために、「生命の循環の源」に立つ生産者の方々の、いま現在の思いに耳を傾けたいと思います。

<3つの質問を投げかけています>
問1 現在のお仕事の状況
問2 今、思うこと、考えていること
問3 シェフや食べ手に伝えたいこと






























































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