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大地からの声――11
自然界から都市を見ると……
食猟師 「アントラー クラフツ」 小野寺 望さん

People / ProducerMay. 28, 2020

photographs by Hide Urabe


小野寺望さんから届く森の恵みを心待ちにするシェフが全国にいます。宮城県石巻市の牡鹿半島で長年にわたって狩猟を手掛け、山菜やキノコ、木々の実りをレストランへ送ってきました。自身の体験を通して自然と人との関わり方を考え続けてきた小野寺さんの言葉に耳を傾けてみたいと思います。

問1 現在の仕事の状況

環境整備に充てています。

2017年、「Reborn-Art Festival」の一環で「FERMENTO フェルメント」(食用加工設備や冷蔵冷凍設備を完備した鹿肉解体処理施設)が建設されて、仕留めた鹿を無駄にすることなく、適切な処理による良質な食肉として流通させられるようになりました。
その流通は今、止まっている状態です。

鳥獣捕獲に関しては自粛要請や規制がかかっていないので、粛々と続けています。
食肉流通の業務が止まった分、時間を環境整備に充てています。たとえば、鶏を飼う計画があるため鶏舎を作ったり、木の伐採や下草を刈ったり、ビオトープを作ったり。

昨秋、フェルメントが台風による大きな被害を受けました。敷地の入口に流れる川が鉄砲水によって決壊し、土石流がフェルメントを襲ってきたのです。床上10cmほど浸水し、加工・貯蔵中の食肉の8割を損失しました。
元々、この場所は東日本大震災で被災して、土地と資源の新しい使い方としてフェルメントが建てられたという背景があります。自然と共に生きる以上、自然災害も受け入れて生きていかなければならない。それは自然の中で生きる上での必然です。

心配なのはレストランのシェフたちです。どうか淘汰されないようにと心底思っています。これまで築き上げられてきた食文化、レストラン文化が絶えることなく続いていってほしいと願うばかりです。


2019年夏の「Reborn-Art Festival」では、小野寺さんのガイドで森を歩くフードアドベンチャーが実施された。



問2 今、思うこと、考えていること

誰もが日常的に肉を食べる生活は当たり前か?

自給自足的な生活を送っている私は、新型コロナウイルスのせいで暮らしが困ったりはしていません。食肉の売上はほぼゼロになったけれど、森があるから自分が食べていく分には困らない。

今、都市部で起きていることが意味するのは、経済中心に出来上がった都市のもろさ、ひずみ、ゆがみじゃないでしょうか。社会に対する考え方はいろいろでしょうし、一概に否定はできないけれど、消費社会のありようについて考えさせられることは多いですね。

まず、肉を食べるための農業が当たり前になった今の社会に疑問を持っています。戦後、日本人の食生活が欧米化するに伴い、農業も大きく変化しました。しかし、元々備わっていた日本独自の自然環境があり、その中で生きてきた動植物がいて、その風土の上に農業と食生活が育まれてきたはずです。そんな昔ながらの農業を振り返ってみると、今、誰もが日常的に肉を食べられるのって実は自然なことではないのでは? と気付くのです。

なぜ、今のような食生活になったのかを手繰り寄せていくと、自国で武力を持たないことや穀物の輸入などと関係している問題だと思う。つまり、自立できる国にならなければいけないといった、国や人のありようと結び付いてくるんですよね。

問3 シェフや食べ手に伝えたいこと

地球にはN極とS極があります。

地球にS極とN極、2つの磁場があるように、「物事には両極が存在する」と認識することは大事です。 陰と陽、動と静、対立するものが共存してバランスがとれる。地球に生きる者のはしくれとして、その真理を理解しなければと思う。

紛争が地球上からなくなることはたぶんないでしょう。主義主張の異なる者同士の対立はなくならない。だからこそ妥協点を見出して協調していく努力をする必要があります。
自然の中で生きていると、両極の共存は当たり前なんです。N極とS極のどちらか一極になったり、どちらかに重心が偏れば、地球は存続できなくなってしまう。動と静、陰と陽にしたって同じです。


森の動植物の生態を全身で感じ取る。小野寺さん自身が森の生きものの一員だ。



国として、今後どうしていくのかを考える時なのだと思います。
いまや、第一次産業、第二次産業、第三次産業のバランスが崩れているのは明らかです。国のなりたちや国民を養おうと思うなら、まずは第一次産業の基盤を固めて、その上で第二次産業と第三次産業をどう築くのかを考えるべきではないかと思っています。

小野寺望(おのでら・のぞむ)
宮城県まれ。ニホンジカの解体処理をはじめとした鹿肉や鴨肉の卸販売、アウトドア料理の指導や自然との関わり方や食育に関するワークショップを行う「Antler Crafts(アントラークラフツ)」として活動。2017年より「Reborn-Art Festival」に関わり、フェルメントの運営を担う。捕獲した鳥獣を料理人の創造性にふさわしいジビエに仕立てるべく「食猟師」を名乗る。

アントラークラフツ
宮城県石巻市小積浜字谷川道44
https://www.facebook.com/antlercraftsbynozomuonodera/





大地からの声

新型コロナウイルスが教えようとしていること。




「食はつながり」。新型コロナウイルスの感染拡大は、改めて食の循環の大切さを浮き彫りにしています。

作り手-使い手-食べ手のつながりが制限されたり、分断されると、すべての立場の営みが苦境に立たされてしまう。
食材は生きもの。使い手、食べ手へと届かなければ、その生命は生かされない。
料理とは生きる術。その技が食材を生かし、食べ手の心を潤すことを痛感する日々です。
これまで以上に、私たちは、食を「生命の循環」として捉えるようになったと言えるでしょう。

と同時に、「生命の循環の源」である生産現場と生産者という存在の重要性が増しています。
4月1日、国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、関連機関の世界貿易機関(WTO)、3機関のトップが連名で共同声明を出し、「食料品の入手可能性への懸念から輸出制限のうねりが起きて国際市場で食料品不足が起きかねない」との警告を発しました。
というのも、世界有数の穀物生産国であるインドやロシアが「国内の備蓄を増やすため」、小麦や米などの輸出量を制限すると発表したからです。
自給率の低い日本にとっては憂慮すべき事態が予測されます。
それにもまして懸念されるのが途上国。世界80か国で食料援助を行なう国連世界食糧計画(WFP)は「食料の生産国が輸出制限を行えば、輸入に頼る国々に重大な影響を及ぼす」と生産国に輸出制限を行わないよう強く求めています。

第二次世界大戦後に進行した人為的・工業的な食の生産は、食材や食品を生命として捉えにくくしていたように思います。
人間中心の生産活動に対する反省から、地球全体の様々な生命体の営みを持続可能にする生産活動へと眼差しを転じていた矢先、新型コロナウイルスが「自然界の生命活動に所詮人間は適わない」と思い知らせている、そんな気がしてなりません。
これから先、私たちはどんな「生命の輪」を、「食のつながり」を築いていくべきなのか?
一人ひとりが、自分自身の頭で考えていくために、「生命の循環の源」に立つ生産者の方々の、いま現在の思いに耳を傾けたいと思います。

<3つの質問を投げかけています>
問1 現在のお仕事の状況
問2 今、思うこと、考えていること
問3 シェフや食べ手に伝えたいこと






























































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