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大地からの声――8
自然の恩恵に応えているか?
とおの屋 要 佐々木要太郎さん

People / ProducerMay. 20, 2020


岩手県遠野市でオーベルジュ「とおの屋 要」を営む佐々木要太郎さんの仕事の根っこには、遠野の風土と土地に伝わる先人の知恵や技があります。自ら栽培する「遠野1号」を蔵付き酵母で醸すどぶろくやどぶ酢、発酵や熟成の技を巧みに取り入れながら発想豊かに仕立て上げる料理。国内外から高い評価を得る所以は、要太郎さんが土や微生物と向き合ってきたことに起因すると言っていいでしょう。4月末、要太郎さんの話を聞きました。



問1 現在の仕事の状況

田んぼとどぶろくに注力しています。

4月に入って宿泊のキャンセルが相次ぎ、「とおの屋 要」はほぼ休業状態になりました。
(その後、テイクアウトと昼夜共に1組限定の食事提供をスタート)
現在は、田んぼとどぶろくに注力しています。田んぼでは、くろ打ち(水漏れを防ぐ目的で畦を叩く作業)、種籾の選別・消毒・浸種などを行なっています。

昨年、新会社を設立しました。これまで個人で勤しんできた「米」の可能性の追求を会社という形に落とし込んで展開したいと考えたからです。講演などの場では「文化的ビジネス」という言葉でお伝えするのですが、日本人が培ってきた稲作文化や米文化にスポットを当て、それらにまつわる知恵や技を活かした商品化を目指しています。どぶろく、日本酒、酢、料亭、旅館……、米には様々な展開と伝承の可能性がある。その構築のために奔走しています。


要太郎さんが育てるのは、モチ性遺伝子を交配していない「遠野一号」。昭和初期に開発されながら普及しなかった品種だ。1年間寝かせて使う。photograph by Yasuhiro Yahata


21歳から独学で稲作とどぶろく造りに取り組み始め、3年後には無農薬・無肥料の米作りに移行しました。独自に試行錯誤を重ねて現在の栽培法と造りにたどり着いたという経緯があります。
そもそも日本人は米とどう向き合ってきたのか、日本の米は元来どんな性質を持っていたのかを掘り下げる中で見えてきたものは少なくない。現代人がいつしか捨て去り忘れ去ったものも多く、次代に伝えておかなければと考えました。

手始めとして、木桶によるどぶろくとどぶ酢の醸造所にレストランを併設した建物を建設中です。その一方で、シチリア・モディカのチョコレートの老舗との仕事が進んでいます。ジャンルは違うけれど、古い文化を継承しながら新しい形で提示していくヴィジョンは同じ。意気投合して、私のどぶ酢とモディカのチョコレートのコラボを進めようとしています。

「とおのや 要」を立ち上げた直後、東日本大震災に遭ったことを思い出します。今回もまた新しい会社を立ち上げたところでコロナ禍が起きた。なんというタイミングだろうと思う。でも、おかげで自分がやろうとしていることを深く見つめ、本質を凝縮して形にしようと決意する自分がいるのもまた事実です。



問2 今、思うこと、考えていること

太陽も土も無償で人間に恩恵を与えている。

稲を育て、微生物を相手とする発酵や熟成を探求し続けてきましたが、それは「声なきものの声を聞き、姿なきものの姿を見る」ことです。先人は「声なきものの声を聞き、姿なきものの姿を見る」を突き詰めて、実りを手にし、味を生み出す術を導き出してきた。
その根底にあるのは土にほかならない。人間は土から生まれる生命を活用している。麹ひとつとっても田んぼに生えたカビから作り上げたのだと知ると、土が拠り所であるとよくわかります。


「声なきものの声を聞き、姿なきものの姿を見る」意識が大事。農業も発酵も。


新型コロナウイルスの報道を見ていると、こいつら賢いんだなって感心します。感染しても症状が出ない場合も多く、その間に感染が拡大するなど、勢力を広げる術を持っている。

そんなコロナの影響で人間社会は騒然としていますが、一方、自然の草木は何も変わりなく生きているんですよね。自然のありようは変わることなく、季節はどんどん進んでいく。田植えのタイミングも待ってはくれない。

人間は自然の恩恵の上に生きているのだと改めて思うのです。太陽も土も無償で私たちに恩恵を与えている。発酵にしたって、自然の恩恵によるプロダクトです。コロナによって社会活動が止まろうとも、人間に対する自然の恩恵に変わりはありません。
では、その恩恵に人間は報いているだろうか? 自然に還元していくことを、生きている人間すべてが求められているはずではないか? そういう価値観をもって事物と接しているか? 今、問い直すべき時機のように思います。



問3 シェフや食べ手に伝えたいこと

地中深くに根を張る生産者に意識を向けて。

自分にしても、誰にしても、掴み取った自分の好きな仕事を当たり前のようにやってきた。それって当たり前じゃなかったんだなと、今、気付かされています。
目に見えないウイルスによって、あっという間に壊されている。でも、僕たちが壊してきたんだよね、とも思うのです。ここ数年の気候変動などはその端的な例証でしょう。
今まで僕たち、当たり前じゃないことをさんざんやってきたんだから、これからは当たり前のことをやっていきませんか、という教訓なんじゃないか?

自分だって、トラクターに乗り、自動車に乗って、完璧ではないけれど、だからこそ、田んぼでは自然のありのままの栽培に取り組み、自然に恩返ししようと心掛けているつもりです。

生産者には2つの局面があります。
自然と対峙して生きていけるか? 人間社会の市場相手に生きていけるか?
今後、自然相手と市場相手、どちらに対しても向き合いが問われるでしょう。
食べ手のみなさんには、より生産者の生き方に関心を持ってほしい。そして、地中に深く根を張って生きている生産者に意識を向けてほしいと思います。


「遠野1号。今朝の様子です。まだ可愛いらしいですが、秋には、ふてぶてしくなってるはずです!」5月吉日、要太郎さんからの便りより。



佐々木要太郎(ささき・ようたろう)
1981年、岩手県生まれ。家業の民宿を継ぎ、2002年、遠野市がどぶろく特区認定地域になったのを機に、独学で無農薬・無肥料の稲作とどぶろく造りに取り組み始める。2011年、オーベルジュ「とおの屋 要」をオープン。どぶろくの他にも、生ハムやチーズなど様々な発酵食品づくりに取り組む。

とおの屋 要
岩手県遠野市材木町2-17
☎0198-62-7557
昼12:00~13:00
夜18:00~19:00
完全予約制(2日前まで)
http://tonoya-yo.com/




大地からの声

新型コロナウイルスが教えようとしていること。




「食はつながり」。新型コロナウイルスの感染拡大は、改めて食の循環の大切さを浮き彫りにしています。

作り手-使い手-食べ手のつながりが制限されたり、分断されると、すべての立場の営みが苦境に立たされてしまう。
食材は生きもの。使い手、食べ手へと届かなければ、その生命は生かされない。
料理とは生きる術。その技が食材を生かし、食べ手の心を潤すことを痛感する日々です。
これまで以上に、私たちは、食を「生命の循環」として捉えるようになったと言えるでしょう。

と同時に、「生命の循環の源」である生産現場と生産者という存在の重要性が増しています。
4月1日、国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、関連機関の世界貿易機関(WTO)、3機関のトップが連名で共同声明を出し、「食料品の入手可能性への懸念から輸出制限のうねりが起きて国際市場で食料品不足が起きかねない」との警告を発しました。
というのも、世界有数の穀物生産国であるインドやロシアが「国内の備蓄を増やすため」、小麦や米などの輸出量を制限すると発表したからです。
自給率の低い日本にとっては憂慮すべき事態が予測されます。
それにもまして懸念されるのが途上国。世界80か国で食料援助を行なう国連世界食糧計画(WFP)は「食料の生産国が輸出制限を行えば、輸入に頼る国々に重大な影響を及ぼす」と生産国に輸出制限を行わないよう強く求めています。

第二次世界大戦後に進行した人為的・工業的な食の生産は、食材や食品を生命として捉えにくくしていたように思います。
人間中心の生産活動に対する反省から、地球全体の様々な生命体の営みを持続可能にする生産活動へと眼差しを転じていた矢先、新型コロナウイルスが「自然界の生命活動に所詮人間は適わない」と思い知らせている、そんな気がしてなりません。
これから先、私たちはどんな「生命の輪」を、「食のつながり」を築いていくべきなのか?
一人ひとりが、自分自身の頭で考えていくために、「生命の循環の源」に立つ生産者の方々の、いま現在の思いに耳を傾けたいと思います。

<3つの質問を投げかけています>
問1 現在のお仕事の状況
問2 今、思うこと、考えていること
問3 シェフや食べ手に伝えたいこと






























































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