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PEOPLE / 食の世界のスペシャリスト

三水亜矢さん(さみず・あや)産直コーディネーター

第4話「必要とされ続けるために」(全5話)

2016.08.01

世の中の細分化とマニアック化

「国産、安心で安全、だけでは売れない。農業の分野でも、どういうお客さんに買ってもらいたいか、ターゲットを絞ることが求められています。通り一遍のことではなくて、よりコアでマニアックに追求する必要を感じています。栽培のこだわりやトレーサビリティは当たり前になった。差別化するものを見つけ、それを打ち出す努力も必要だと感じています」

扱う果物は多品種が売り。リンゴも洋梨も各20品種程度を揃え、早生〜名残までの味わいの違いも楽しんでほしいと、区切って販売しています。“旬”“完熟”“食べ頃”の状態での発送を基本にしつつ、希望があれば熟度やサイズ違いにも応えるなど、生産者の協力のもと様々な出荷体制を整えています。

2013年には、西洋野菜の栽培を始めました。中でも力を入れるのは、「プチレギューム」という小さな野菜、そして「ベジタブルブーケ」(2013年に





Photographs by Masahiro Goda,text by Reiko Kakimoto




商標登録)という野菜の花で作った食べられるブーケ。どちらも、三水さんの命名です。
「西洋野菜というだけでは絞り込みが足りないから」と、“丸ごと使える小さいサイズ”と“野菜の(食べられる)花”と売り出し方を絞り込んで展開。ブーケには、フラワーアレンジメントの技術が生きています。

シェフたちにまずは試してもらいたいけれど、生産者にサンプルを出してもらうだけでは負荷をかけてしまうかもしれない。だから、自分が試験台になろうと畑に立つことに決めました。三水さんが作った野菜リストにはこんな言葉が添えられています。

「北アルプスが望める大地に立てば、夏冷涼・湿度が少ないヨーロッパに環境が似ている。
見渡せば、農業者の高齢化に耕作放棄地・・・。
環境を活かし、若い生産者が安定収入を得られるように、特徴ある野菜栽培の産地を目指して!」

新たな市場を開拓することは、生産者の未来を作ることになる。

“死ぬまで現役”はプロじゃない





会社は13期目に突入しました。
「以前は、死ぬまで仕事をしていたい、と思っていました。でも私は今、60歳での引退を考えているんです」

長い自分探しは、“使命”を探す旅でもあった、と三水さん。それを明確にできた今、そこに固執するのではなく、今のビジネスを続ける努力をしなければ――そう思うようになりました。

持続可能性はスモールビジネスが抱える課題のひとつ。
「若いシェフたちが出てきているのに、私が対応しているのでは感性にずれがでるかもしれない。物忘れでご迷惑をかけるかもしれない。そうなる前に若い人に少しずつ事業を託して、若い感性での提案ができたほうがこの会社は続けていける、と感じています」

幸い会社も成長し、後継者も育ちそう、と三水さん。
「もちろん課題もあります。引き継ぐ子たちたちがきちんと生活できるよう、売り上げを2倍に伸ばしたい。出資金を全額自分で出していることもあり、公私が甘い部分もあります。今後10年間は、会社の体制を変え、誰かに引き継ぐ準備を整える期間です」

還暦を過ぎたら、引退ですか?

「いいえ! 還暦まであと10年。この間に新しくやりたいことを見つけようと思っています。きっと食に関わる新しい仕事でしょうね」




三水亜矢(さみず・あや)
大学卒業後、製菓材料メーカー勤務等を経て、長野県に移住。県内の果樹生産者との出会いがきっかけで、業務用(パティシエ、料理人)に限定した果物の産地直送コーディネートビジネスを立ち上げる。現在は、特徴ある野菜栽培の産地を目指して「プチレギューム」「ベジタブルブーケ」の栽培・販売にも力を入れる。

























































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