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“食×SDGs” ウェビナー 開催レポート #1
「国連WFP」我妻茉莉さん×「おてらおやつクラブ」松島靖朗さん×「ユナイテッドピープル」関根健次さん

世界の飢餓、日本の貧困。
-「かれら」ではなく「わたしたち」の問題-

Sdgs Mar. 29, 2021

text by Kyoko Kita

3月6日、料理通信社主催で行われた「“食×SDGs” Webinar-Beyond Sustainability-#2」。最初のセッションでは、コロナ禍で深刻さを増す貧困と飢餓の問題を取り上げました。昨年ノーベル平和賞を受賞した国連WFP(世界食糧計画)日本事務所で広報コンサルタントを務める我妻茉莉(わがつま・まり)さんと、様々な事情により生活に困窮するひとり親家庭にお寺のお供え物を“おすそわけ”する全国ネットワークを組織している「認定NPO法人おてらおやつクラブ」の松島靖朗(まつしま・せいろう)さんをゲストに迎え、国内外の社会問題をテーマにドキュメンタリー映画を配給する「ユナイテッドピープル」代表の関根健次(せきね・けんじ)さん進行のもと、問題の現状や背景、解決に向けた道筋について考えました。



共に歩んでくれる人の存在が支えになる

飢餓に苦しむ世界中の人たちに食糧支援を行う国連WFP。彼らは各国政府や企業、個人から集めた寄付を、遠く離れた安全地帯から現地にばらまいているわけではありません。「職員の90%がフィールドで働いています」と国連WFPの我妻さん。


ノーベル賞受賞直後の取材では、WFPの活動について詳細にわたり解説してくれた我妻さん。取材記事は コチラ

フィールドとはすなわち、被災地や紛争地帯、スラム街や、水も手に入りにくい枯れた農村地帯など、人が人として当たり前に暮らすことが難しい地域です。時に危険を伴う現場に自ら足を踏み入れ、そこに生きる人たちに寄り添い、声を聞き、必要とされる物資や食料を届ける。彼らの存在は、毎日を必死に生きる現地の人々にとって、どれほど心強く支えになっていることでしょう。


「認定NPO法人おてらおやつクラブ」代表の松島さん

「貧困とは、貧しくて困っていると書きます。経済的に貧しいだけでなく、誰にも相談できずに孤立してしまう状況こそが、貧困の本当の問題です」と話すのは、「おてらおやつクラブ」代表の松島さん。お金や物の支援だけでは、根本的な貧困の解決にはならない。困っている人が「一人ではない」と思えること、共に歩んでくれる誰かと繋がることが大切だと松島さんは考えます。


食品ロスをテーマにしたプロデュース映画「もったいないキッチン」の制作・広報の現場で、国連WFP、おてらおやつクラブとも連携されたという関根さん

「ユナイテッドピープル」の関根健次さんはこう言います。「世界各地を訪ねて幸福の秘密について考える『happy―しあわせを探すあなたへ』という映画がありました。その中で、スラム街のお父さんが『自分は幸せだ』と言うんです。一人ではない、自分に何かあっても周りの家族が子供たちを助けてくれるという安心感がある。たとえ貧しくとも、コミュニティに支えられているという実感は、人を幸福だと感じさせるんですね」



「助けて」と言える“近くの他人”に

日本の子どもの貧困率は13.5%にのぼり、子ども(18歳未満)の7人に1人が貧困に苦しんでいます。さらに、ひとり親世帯では48.1%、2人に1人が貧困状態にあるといわれています。


子どもの貧困問題を解決するべく活動する「おてらおやつクラブ」。本セッション内の松島さんのプレゼンテーションより

ひとり親家庭が貧困に陥る要因は様々ですが、離婚や未婚、配偶者との別居に対して「自己責任」とされてしまう日本特有の風潮があることを松島さんは指摘します。「だから周囲の人に相談できず、一人で抱え込んでしまうのです」

生活保護が必要なほど困窮していても、世間の目や元配偶者の追跡などを気にして申請できない人、ダブルワークやトリプルワークが当たり前で、相談に行く時間や情報を得る機会すら持てない人も多いといいます。
「“遠くの親戚より近くの他人”という言葉がありますよね。私たちの役目は“近くの他人”として、孤立した方たちが『助けて』と声を挙げやすい一次窓口になることだと思っています。その声を行政や支援団体など次の窓口に橋渡しをしています」



お寺の“ある”と社会の“ない”を結ぶ

松島さんがこの活動を始めたのは今から7年前、大阪のマンションの一室で母子が餓死状態で発見された事件がきっかけでした。部屋には「最後にもっとたくさん食べさせてあげられなくてごめんね」と書かれたメモが残されていました。「ショックでした。この豊かな日本に飢餓があるなんて思いも寄らなかった。反省すると同時に、こんな悲劇を二度と繰り返してはいけないと思いました」。その時、目に入ったのが、たくさんのお供え物でした。

お寺では、檀家や信徒から仏様やご先祖様へのお供え物を日々たくさん預かっています。その“おそなえ”を、お坊さんたちは“おさがり”として修行生活の中でいただいています。それでも食べ切れず、無駄にしないためにどうするべきか悩むことがあったそうです。

ニュースを見た松島さんは、何かに突き動かされるように、目の前にあったたくさんのお供え物を段ボールに詰め、大阪の支援団体に向かいました。「どこに困っている人がいるのかも、どうしたら彼らと繋がれるのかもわかりませんでした。だから、これを届けてください、と。そんなことを半年ほど続けて、少しは世の中の役に立てているのかなと思ったら、『まだまだ足りません』と言われてしまった。自分が思っている以上に困っている人がたくさんいたんです。自分一人の力ではどうにもならないと、全国のお寺に呼びかけました」


「おてらおやつクラブ」による支援の仕組み。松島さんのプレゼンテーションより

お寺は全国津々浦々どこにでもあり、その数はコンビニよりも多いと言われます。松島さんの思いに共感するお寺は宗派を越えて広まり、現在、1,500 を超えるお寺が「おてらおやつクラブ」の活動に参加しています。お寺はそれぞれの規模や実態に合 った形で地域の支援団体におすそわけを送り、貧困問題の後方支援として500を超える支援団体や子ども食堂と連携し、毎月2万2000 人の子どもにおすそわけを届けています。

奈良県にある事務局からは様々な事情で支援を受けられない人と直接つながり、寄り添い、声を聞き、“おすそわけ”を送る取り組みをしています。そして、必要に応じて行政や相談窓口への橋渡しもしています。



コロナが露呈した社会のひずみ

コロナ禍は世界各地に“ハンガーパンデミック”を引き起こしています。途上国では都市部でも十分な食事を得られない人が増え、国連WFPは昨年、過去最高となる1億3800万人を目標に支援を行いました。


急性の食料不安をかかえる人の地域別状況。国連WFP日本事務所提供資料より(出典:WFP Global Response to COVID-19:June 2020)

国内でも状況は深刻さを増しています。65万世帯の母子家庭のうち、約半数が非正規雇用。緊急事態宣言下で多くの人が職を失い、収入はさらに減少、学校給食もなくなり食費を圧迫しました。
「おてらおやつクラブ」では、本部に直接助けを求める声が昨年の3.4倍まで膨らんだといいます。「緊急度や専門性の高い相談も増えています。連携先を増やさなくてはいけませんし、公的支援に繋げられるよう自治体とも連携を深めていきたいですね」と松島さん。
休校中は給食用の食材や常温保存できる牛乳がお寺に寄贈され、再配布を行うこともあったそうです。

関根さんは、世界的に見ても、全人口を賄えるだけの食料は十分にあると指摘します。「穀物の生産量は昨年、過去最高を記録し、一人1日1㎏弱供給できるだけ生産できています。にもかかわらず、6億9000万もの人が飢えている。社会の構造にひずみがあるのではないでしょうか」


「必要な人に必要な食料が届いていないという現状を認識してほしい」と説く。関根さんのプレゼンテーションより



一人の思いが社会を変える

「一人の思いと行動が社会を動かす。個人的な思いがとても大切だと感じます」と関根さん。関根さん自身、世界最貧国であるバングラディッシュを訪れた際、ストリートチルドレンの支援団体と出会ったことをきっかけに、ノウハウも資材も何もないところから映画配給の活動を始めました。そして、関根さんが上映した映画をきっかけに「自分も何かしなければ」と動き出した若者たちを何人も見てきたそうです。

一方、1万9000人いる全職員のうち日本人は1%に満たない国連WFPという職場を選んだ我妻さんも、その使命感の原点は幼少期の記憶にあるといいます。「母は食べ物を残すことを許さない人でした。幼稚園の頃、私が大根おろしをどうしても食べられずお皿に残していると、『世界には食べたくても食べられない子がたくさんいる。絶対に残してはダメ』と、食べ終わるまで席を立たせてくれませんでした。その日から冷蔵庫には何枚も難民の子どもたちの写真が貼られ、私が苦手を克服するまで毎日食卓に大根おろしが並びました」

何に心を動かされ、揺さぶられるのかは人それぞれです。その多くは日々の暮らしの中で風化したり流されてしまうもの。でも、心動かされた理由をもう一歩踏み込んで考えてみると、そして、その出来事の背景について知る努力をしてみると、もしかしたら明日や未来を変える次の行動に繋がっていくのかもしれません。



助けたい人と助けてほしい人を繋ぐ


世界の飢餓人口は、様々な要因が複雑に絡み合い、2014年より増加傾向にある。なかでも武力紛争の拡大に加え、気候変動の影響が追い打ちをかけている。我妻さんのプレゼンテーションより

「まずは現実を知ってもらうことが大切」と我妻さん。「食料問題への関心は高まっているのを感じます。毎年国連WFPが行っている食品ロス削減を呼びかける『 ゼロハンガーキャンペーン 』には2020年、前年の3倍を上回る51万の参加がありました。支援の形は寄付だけでなく様々で、『 ウォーク・ザ・ワールド 』というチャリティーウォーキングに参加していただくことや、給食支援に繋がる『 レッドカップ 』のマークがついた商品を選んで買っていただくこともできます」

「助ける役割を与えてくれてありがとう」、「おてらおやつクラブ」にはそんな声も届いているそうです。「何かしたいけど、どうしたらいいかわからない方がたくさんいる。そういう方たちにとっても、人の役に立てることが大きな力になるんですね。お寺は何百年もの間、地域のハブとして機能してきました。近年、その役割が少しずつ失われていて『いらないんじゃないか』と言われることもあります。でもこの活動をしていると、支え合いの場、見守りの拠点としてまだまだ可能性のあるインフラだと思うのです。今はSNSというツールもあります。地域を越えて、助けたい人と助けてほしい人のご縁を繋いでいけたらいいですね」

「早く行くなら一人で行きなさい、遠くに行くならみんなで行きなさい」というアフリカの教えがあると我妻さん。「一人ひとりができることをやりながら、みんなで力を合わせてこの大きな問題に取り組んでいく必要があると感じます」

我妻さん、松島さんの言葉に、関根さんも自身の考えを重ねます。 「自分一人で行動に移せることとして、まずは食べ方を変えることがあると思います。買い過ぎない、作り過ぎない、食べ残さない。一人一人の毎日の小さな心がけが、長期的には貧困や飢餓の問題の解決に繋がっていくのではないでしょうか。身近で困っている人に関心を持つこと、手を差し伸べることから、少しずつ行動の輪が広がっていくといいですよね」



困っている人が「困っている」と言える社会へ

「お坊さんへ。
和菓子はいいので、ポテトチップスをください」

ある時、松島さんのもとに度々支援を行っている家庭の子どもからこんな手紙が届いたそうです。「なんてわがままな」と思うでしょうか。でも裏を返せば、この子はポテトチップスを買ってもらえない境遇にあるのです。みんなが食べているポテトチップスを自分も食べたい、でも食べられない。
「おそらく支援を始めたばかりの頃は、和菓子だって文句を言わず食べていたのだと思います。お菓子を食べられるだけいい、と。でも本当に食べたいのはポテトチップスなんですよね。子どもらしい姿を取り戻してくれたんだと嬉しくなりました。子どもたちのこんな小さな変化を着実に作っていきたいですね」

困っている人が「困っている」と当たり前に言える社会、子どもが子どもらしく欲求を口にできる社会。それは、どれだけ小さな行動でもまず一人が動くことから始まり、そんな個人が繋がり輪になることで叶えていけるのではないでしょうか。


こちらは、本トークセッションをご覧になりたい方のためのアーカイブ動画となります。セッションの様子の録画・録音やスクリーンショット、および登壇者によるプレゼンテーション資料の無断転用は固くお断りいたします。



<寄付金に関するご報告>
本ウェビナーは合計323件のお申込みを賜り、74件の寄付つき参加チケット購入がございました。内訳は、国連WFPに35件(3万5000円)、おてらおやつクラブに39件(3万9000円)となります。売上は、手数料を除く全額を各団体の寄付窓口へ後日送金させていただきますことを、ここにご報告いたします。ご参加くださった皆さまにあらためて御礼申し上げます。





◎国連WFP(世界食糧計画)
https://ja.wfp.org/
Instagram @wfp_japanoffice
Twitter @WFP_JP

◎認定NPO法人おてらおやつクラブ
https://otera-oyatsu.club/
Instagram @oteraoyatsuclub
Twitter@otera_oyatsu

◎ユナイテッドピープル
https://unitedpeople.jp/
Instagram @united_people.inc
Twitter@upjp

(本セッションで触れた「もったいないキッチン」をはじめ、同社配給・制作映画単独のSNSアカウントもありますので、ご興味があるテーマの作品をぜひフォローください)

◎cinemo by ユナイテッドピープル映画上映会サイト
https://www.cinemo.info/





国連が、世界各国の報道機関とエンターテイメント企業を対象に発足させた「SDGメディア・コンパクト」は、SDGsに対する認識を高め、さらなる行動の活性化を支援することを目的としています。
料理通信社は「SDGメディア・コンパクト」の加盟メディアとして、今後より一層、食の領域と深く関わるSDGs達成に寄与するメディア活動を続けて参ります。













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