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“食×SDGs”カンファレンス 開催レポート #3
北里研究所病院 糖尿病センター長 山田悟医師

ロカボが築く健やかな未来

SdgsJan. 16, 2020

text by Kaori Shibata / photographs by Hide Urabe, Shinya Morimoto

サステナビリティというテーマを考える時、私たち自身の体の持続性という視点もまたあると言えるでしょう。健康な体でおいしいものを食べ続けるにはどうしたらよいのか?「ロカボ=緩やかな糖質制限食」を提唱する北里研究所病院 糖尿病センター長の山田悟先生に、最新の医学的見地から私たちの体のサステナビリティについて語っていただきました。併せて実施したワークショップの様子もレポートします。


山田悟医師。医学博士 北里研究所病院 糖尿病センター長、一般社団法人 食・楽・健康協会 代表理事。『糖質制限の真実』『カロリー制限の大罪』(共に幻冬舎刊)を上梓。持続可能で真に効果がある食事法とは何かを世に問い続けている。


メタボは、人生にも国家にもマイナス。

「私は2012年に『奇跡の美食レストラン』(幻冬舎刊)という本を出版いたしました。これは、“ロカボ=緩やかな糖質制限食”を実際に味わうことができるレストランやパティスリーをまとめたガイドブックで、40名ほどの料理人やパティシエの方々にご協力いただきました。出版後、多くの料理人さんから『この本に載ったおかげで、糖尿病でお店に来られなくなってしまったお客様がまた来てくれた』といううれしい報告をいただきました。オーボンヴュータンの河田勝彦さんからは、何年ぶりだろうと泣きながらイチゴタルトを食べられていたというお客様の話も伺いました。
私はロカボという食べ方、ライフスタイルによって、食べ手である生活者の方々、そして料理を提供されるお店や料理人の方々、また社会経済的にもwin-winの関係になるというのを夢見ています」

「本日はまず、糖尿病とメタボの実態というところからお話させていただこうと思います。
2006年、国連の決議で“Unite for diabetes (糖尿病のために世界は団結しよう)”が採択されました。2019年には、世界の糖尿病の人口は4億6千3百万人に達し、2000年時点の1億5千1百万人から、たった18年で3億人も増えたと国際糖尿病連合は報告しています。



“Unite for diabetes (糖尿病のために世界は団結しよう)”の国連決議は、世界的な糖尿病の深刻さを物語る。


みなさんも聞いたことがあると思いますが、メタボリックシンドロームという現象は、高血糖・高血圧・高脂質が重なるようにして糖尿病を発症させ、他の病気の発症をも引き起こします。それは、長い間、食べ過ぎ、すなわちエネルギー過剰摂取による肥満が原因で、肥満を元に高血糖・高脂血症・高血圧症につながると信じられてきました。ところが、昨年、新たな糖質・インスリンモデルが発表になりました。新たなモデルは、食べ過ぎ(エネルギー過剰摂取)ではなく、糖質過剰摂取がすべての元になっており、糖質過剰摂取による食後の高血糖が過剰なインスリンを分泌し、これが飢餓感を生んで食べ過ぎを引き起こし、肥満、高脂血症、高血圧症になるというものです。


様々な病気の源流に「食後高血糖」がある。

食べ過ぎではなく、糖質摂取過剰が原因であるとの論文が2018年発表された。

メタボリックシンドロームになると、健常者よりも年間の医療費が9万円以上も余分にかかります。これは、生活者の経済にとっても、また国の医療費にとっても由々しき問題です。


健康が損なわれるとお金がかかる。個人にとっても国にとっても負担。

日本人は、1日約300gの糖質を摂取していると言われています。そこで私たちが推奨するロカボ=緩やかな糖質制限食では、1回あたりの糖質を20~40gにするように指導しています。糖質の量だけ制限すれば、肉も魚も、タンパク質はたくさん食べていい。お酒に関しては、蒸留酒は糖質がゼロですし、醸造酒も糖質の極めて少ないワインはOK、日本酒も2合までなら大丈夫、としています。続けられる糖質制限食です」



低糖質食の優位性

「低糖質の食事がどうして体にいいのか? 他の食事方式との比較実験の結果を例にお話したいと思います。
これは、2008年にイスラエルのグループから発表された研究です。約300人の被験者を、a:低脂質・低カロリー食、b:地中海食・低カロリー食、c:低糖質・カロリー無制限食、のグループに分けて食事を摂ってもらい、経過を追って体重を計りました。結果、最も体重減量に有効だったのはcでした。また、低糖質の食事を継続すると、脂質代謝の改善や血糖改善にも有効でした。


低脂質食より低糖質食のほうが減量効果があった。

低糖質食は脂質代謝の改善にも有効。



では、糖質の多い食材とはどういうものでしょうか?
糖質=炭水化物と食物繊維です。糖質は、パンやご飯、麺などいわゆる主食や果物、スイーツなどに多く含まれています。糖質が体内に入ると、ブドウ糖という形で血管の中に取り込まれ、血液中を巡ります。このブドウ糖の濃度が血糖値です」。


糖質の少ない食材を知っておくとメニュー作りに役立つ。


「糖質制限にもいろいろな考え方があり、極端に糖質を減らすダイエットも見ますが、大切なのは持続性、続けられることです。ですので、みなさんに気にしていただきたいのは、食事1回あたりの糖質の量、そして食後血糖が急激に上がったり、急激に下がったりすることがないかどうかに注意することです。血糖値の乱高下は血管に負担がかかりますし、認知症のリスクも上がることが報告されています」


1食あたりの糖質を20~40gに抑えることがロカボの目安。



「三方よし」の食事のあり方

「私は、2013年に『食・楽・健康協会』という団体を立ち上げました。この協会には大手食品メーカーや外食チェーンが参加して、ロカボ関連の商品開発や意見交換を行なっています。冒頭で『奇跡の美食レストラン』の紹介をさせていただきましたが、全ての人たちがこういったレストランで食事できるとは限りません。健康格差のない社会の実現を目指す上で、メーカーによるロカボ商品の開発は重要です。私は、ロカボという食の選択肢が広く浸透している社会であってほしいと願っています。
もし、世の中からメタボが減り、糖尿病が減れば、国の医療費の大きな削減にもなります。
つまり、ロカボが普及すると、人々は健康になる、企業は活性化する、医療財政が健全になる、つまり、売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」が成立するのだと言えるでしょう。「三方よし」とはすなわち社会をサステナブルにする可能性を秘めている。
みなさんご自身の健康が国の医療財政を健全にするというイメージを持って、楽しく健康な食事を続けていただきたいと思います」




【コラム1】
―ロカボワークショップ
日頃の食習慣を見直すことから始めよう。




当日は、山田先生の講演を挟んで、料理人をはじめとした飲食業界関係者などを対象にワークショップを実施しました。
料理人など飲食業に携わる方々は、不規則な営業体制や忙しさから自分自身の健康管理が不十分となり、病気を患ってしまうこともあると言われています。「心身ともに健康的でおいしい、また来たい」とお客様に感じてもらえるサービスを続けていくためには、料理人自身の健康維持が不可欠。自身の健康維持の重要性を理解し、食生活を含めた生活習慣のなかから改善したほうがよいポイントを可視化することがこのワークショップの目的です。

まず、食事内容による血糖値上昇の差異を見るため、2つのグループに分かれて異なる食事を摂り、それメンバーの食前・食後の血糖値を計り、平均値を割り出します。

A おにぎり2個、ヨーグルト(脂肪0・加糖)、野菜ジュース、お茶 計480kcal
B ブランパン、ナッツ、バター、味付けゆで卵、チーズ、唐揚げ、お茶 計720~730kcal


右側がAグループの食事、左側がBグループの食事。

どちらもコンビニで購入できるものばかりです。朝や忙しい昼時など、パパッと済ませようという場合、人はAのような食事を摂りがちです。「脂っこい食品は避けておにぎりと食物繊維の摂れる野菜ジュース、ヨーグルトでタンパク質と乳酸菌も」とポジティブにAのような食事を摂っている人は多いのではないでしょうか。Bはやや脂肪分過多でカロリーが高く、不健康そうなイメージをもつ方もいるかもしれません。

※あくまでも食品の組み合わせとしての言及であり、個別の食品・特定の商品を言及するものでは有りません 


食前・食後に血糖値を計って、食事内容による血糖値の上昇の違いを見ます。


食前の血糖値92 mg/dlは標準的な値。

食前・食後で比較したところ、次のような結果でした。
(数値は、各グループメンバーの血糖値の平均)
A 食前 98mg/dl ⇒ 食後 167mg/dl
B 食前 99mg/dl ⇒ 食後 106mg/dl

Aは食後血糖が69mg/dl上昇しているのに対し、Bは、カロリーが高いにも関わらず、食後血糖は7mg/dlしか上昇しませんでした。血糖値的にはBのほうが優れていることになります。
ちなみに、一般的に食後血糖値が140㎎/dl以上で血糖値異常(いわゆる予備軍)であり、200mg/dl以上は糖尿病の診断基準を満たしていることになります。


Bの食事を摂った人の中には血糖値がまったく変化しなかった人も。

参加者は、自分の食前食後の血糖の差、他の参加者の平均値を見て、血糖値への意識を高めた上で、次に「自分自身のサステナビリティ」をテーマに4つのグループに分かれてワークショップを行いました。


グループワークの中で課題解決法を見出していきます。

はじめに自己紹介とこのワークショップに参加した理由について。
「自分の体調が万全でないと良い料理が作れないと思って参加した」
「健康情報は何を信じればよいかわからない。ロカボでは、お米がダメで、揚げ物の衣も外すまでしないといけないのか、という疑問がある」
「カロリーや栄養素は気にするが、ロカボについての知識がないので」
「お客様にロカボメニューを知ってほしいが、ロカボと言うとおいしいイメージを持たれないのが悩み」
などの声が。
各グループとも緊張がほぐれたところで、いよいよワークショップの開始です。
ワークショップは次のようなスタップで進みます。
1) 日頃の食生活・生活習慣で気になっていることを各自、黄色い付箋に書き出して貼る
2) 付箋の内容について、グループ内で、改善案をピンクの付箋に書いて貼る
3) 皆でディスカッション後、各自が一番気になっている生活習慣上の課題を選択し、今日から取り組むことを決める(可能な人は宣言する)


グループワークの様子を山田先生も興味深く見ています。


気になっていることを黄色の付箋に、改善策をピンクの付箋に記していく。


今日から改善に努めることを宣言!

料理人やパティシエにとっては、自分自身の食生活をふり返り、他人とディスカッションしながら、自分自身の食生活を客観視することで、どういう食事を提供すべきかを考える機会となったようです。









【コラム2】
―出展ブースから
みんながロカボに取り組める社会を目指して。




カンファレンス会場内には、ロカボに取り組む企業のブースが設けられました。
ロカボ食をサポートしてくれる食材・食品が充実していく背景には、各企業ともに人々の健康に貢献する商品づくりをとの思いがあります。

▼サステナブルな甘味を目指して――サラヤ
サラヤは、「世界の衛生・環境・健康に貢献する」を掲げ、SDGsを積極的に企業活動目標に取り入れています。主力の衛生事業ではもちろん、健康においてもロカボに取り組む方や糖尿病の方でも安心して「甘味」を楽しめるよう、砂糖に代わる自然素材の甘味料として「ラカントS」を開発しました。「ラカントS」はウリ科の果実である羅漢果とトウモロコシ由来の甘味成分を合わせた100%天然素材の甘味料。ロカボ糖質0gながら自然な甘味が特長です。また生産地の桂林では、現地農家と契約し、無農薬で羅漢果を栽培。自社工場で甘味成分の抽出を行うなど商品の製造を通じて雇用を生み出し、地域経済の発展にも貢献しています。




▼ロカボ実践のポイントは脂質――竹本油脂
ロカボを実践していくポイントのひとつに、良質なタンパク質や脂質の摂取があります。糖質はそれ単体で摂るよりも、タンパク質や脂質と一緒に摂るほうが血糖値の上昇が抑えられるからです。また、油は、脂質代謝を上げる上でも必要な要素と位置付けられています。従来、油に対する社会のイメージは否定的でしたが、ロカボの考え方の浸透と共に変わりつつあります。胡麻油を主力商品とする竹本油脂は、元々植物油脂は体に良いと考えてきましたが、ロカボによって、よりポジティブに打ち出すようになりました。
胡麻油は東京の天ぷら屋で使用されてきた歴史があり、熱の劣化に強く、素材の良さを引き出すことができる油です。
また、同社では油脂を採った後の油粕は粉砕して飼料として循環しています。




▼糖類ゼロの甘味料――日本リコス
日本リコスは、糖類ゼロの甘味料、ステビア甘味料を主力商品としています。業務用が主な事業領域でしたが、近年、小売用商品の発売を始め、一般の人々も広く活用できるようになりました。
「ステビアヘルス」は人工甘味料を想像しがちな名称ですが、100%天然のステビアを使用した低糖質甘味料です。カンファレンス当日は、ブースに鉢植えのステビアを置いて、参加者に葉の試食体験(「甘い!」という声があがっていました)を提供するなど、自然甘味料であることの認知向上に努めています。
キャラメリゼが可能であるなど、他の代替糖にはないメリットも持っています。





◎ ロカボオフィシャルサイト
https://locabo.net









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