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FEATURE / MOVEMENT

日本の魅力 発見プロジェクト ~ vol.1埼玉県 秩父地域 ~

2017.03.02

武甲山

昨今、日本を訪れる外国人観光客が増えてきている。それは、日本に魅力を感じる外国人が多いからであるのは間違いないが、いったい多くの外国人は何を求めて日本にやって来るのだろうか。いつもの風景、毎日食卓に並べられる品々、普段使っている道具・・・。しかし、その『当たり前』は、長い歴史の中で名もなき人々が作り、大切に守り継がれたものである。そこに住まう者からすれば『当たり前』のことであっても、外から来た者にとっては、その土地ならではの魅力となっていることが多い。日本にもきっと、私たち自身がまだ、気づいていない「日常の宝」があるはず。海外からの注目が高まっていることを好機と捉え「日常の宝」を探しに、まずは、物が作り出される現場を訪れ、自らの目で見て、肌で感じ、可能であれば、その行程を少し体験してみようと、東京から比較的近い距離にある地域へ、小さな旅に出た。




ネオ・トラディショナルな町 「ちちぶ」




トラディション=伝統とは、広辞苑によると、「ある民族や社会・団体が長い歴史を通じて培い、伝えてきた信仰・風習・制度・思想・学問・芸術など」を指す。伝統は、長い歴史を通じて培われるのが常であるが、そこには必ず出発点があり、その時点では『新たな挑戦』であったはずである。長い歴史を持つ、ここ「ちちぶ」でも、その伝統の踏襲と新たな伝統<ネオ・トラディション>となるべく生まれている『新たな挑戦』がある。





「あ、秩父があった。」




「行こう。」と、きっぱり断言している西の都と比較すると、やや控えめなキャッチコピーがつけられている。「ちちぶ」と言えば、狼を守り神とし、毎月1日に配布される特別な『気守り』で人気の三峯神社や、開国後の日本に来日したナウマン博士によってその地層の特殊性が明らかにされた岩畳と急流下りで人気の高い長瀞、そして40万株以上の芝桜がパッチワークのように咲き誇る羊山公園の芝桜の丘が有名である。しかし、意外にも、「ちちぶ」は、日本の歴史を太古の昔から支えていた地域であり、その歴史は紀元前にまで遡る。縄文時代以前から人が生活をしていたと言われ、また、東国では最も初期の段階に知知夫彦命(ちちぶひこのみこと)という国造が派遣された武蔵国の原点でもある。平安時代には馬の産地であり、秩父の馬は天皇に献上されるとともに、当時の日本の輸送の一部を支えていた。そして、馬の飼育や管理に携わっていた人々はやがて武士の始祖となり、武蔵国から多くの武士が地頭として全国各地に派遣され、武士の国「日本」の基盤が作られていった。

「ちちぶ」の町を歩いている時、ふと目線を上げると見えるのが武甲山(ぶこうさん)。秩父盆地を囲むようにそびえる秩父連山からは少し離れた独立峰の雄雄しさでとても目を引く。高さは比べ物にはならないが、「ちちぶ」における富士山のような山だ。事実、人々は朝起きるとまず武甲山に手を合わせていたという聖なる山でもある。先ごろユネスコ無形文化遺産に登録が決まった、毎年12月3日を中心に行われる秩父夜祭も、秩父神社が祀る女神である妙見菩薩(みょうけんぼさつ)と、武甲山に棲む男神の年に一度のデートが由縁であるとも言われている。この「ちちぶ」を守る武甲山の姿が印象的なのは、その山肌が削られていることでもある。武甲山は日本屈指の良質な石灰岩の山で、大正時代に大規模な石灰採掘が始まった。採掘した石灰を運ぶべく鉄道もひかれ、武甲山は「ちちぶ」を支える基幹産業を生み出した。ひいては、日本の近代化、そして戦後の東京のインフラの整備を支えたのである。



西武鉄道 レッドアロー号 車内で地域の食材を優雅に堪能しながら旅のプロローグやエピローグを楽しむことができる特別列車の運行が2016年4月に始まった。池袋駅から80分。気軽に、そして快適に行ける秘境「ちちぶ」の玄関とも言える西武秩父駅も、その姿を変えつつある。2017年春には、以前からあった仲見世通りに「祭」をテーマとする温泉が加わった新しい駅舎がお目見えし、「秩父路」の新しい歴史がさらなる魅力とともに始まる。



日本という国が始まって以来の有史の中で、『日本のバックボーン』の一つとしてあり続けた「ちちぶ」。そんな、奥が深い「ちちぶ」地域の、まだまだ掘り尽くされていない魅力を発見するべく、我々は西武鉄道レッドアロー号に乗った。





※本プロジェクトは、経済産業省関東経済産業局が実施する「平成28年度地域とホテルコンシェルジュが連携した、新たなインバウンド富裕層獲得のための支援事業」と連携して、グランド ハイアット 東京 コンシェルジュ/明海大学ホスピタリティ・ツーリズム学部教授 阿部佳氏のアドバイスを得て実施しています。



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