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FEATURE / MOVEMENT

限りなくナチュラル。米澤文雄シェフが訪ねるカリフォルニア プルーンの魅力を探す旅2018

2018.10.06

FEATURE / MOVEMENT




カリフォルニアを代表する食材、カリフォルニア プルーン。
その豊かでナチュラルな味わいを育む風土、生産者を東京・青山「THE BURN(ザ・バーン)」の米澤文雄シェフが訪ねます。

米澤文雄 Fumio Yonezawa
NY「Jean-Georges」、東京・六本木「KENZO ESTATEWINERY」、「ジャン・ジョルジュ東京」を経て2018 年9月、青山「THE BURN」のシェフに。NPO 法人「スーパーダディ協会」の理事として食に関する活動も多数。



ナチュラルなまま収穫・乾燥

カリフォルニアの乾いた大地に、燦々と陽が降り注ぐ8月下旬。州都サクラメントの北、ユバシティにあるプルーン農園では、紫色の果実が収穫の時を待ち構えていた。たわわに実ったプルーンに、思わず手が伸びる。ひとかじりすると、みずみずしい琥珀色の果肉。「甘い!」。驚きの声が上がる。
「皮の部分の酸味と果肉の甘味のバランスが素晴らしい。純粋においしいです」。そう言って顔をほころばせたのは、東京・青山「ザ・バーン」の米澤文雄シェフ。カリフォルニア プルーンの産地と生産者を訪ねる、今回の旅のナビゲーターだ。



プルーンの実を覆う白い粉はブルームと呼ばれる天然のワックス。果実の成熟に伴なって現れ、水分を失うのを防ぐ。

まずはカリフォルニア プルーンの歴史をおさらいしよう。19世紀中頃、ゴールドラッシュで一攫千金を夢見た男がいた。フランス人の植木職人ルイ・ペリエ。しかし金脈を掘り当てることは叶わず、夢破れたルイは故郷から持ち帰った苗木を植え、植木職人として再スタート。そのひとつが、南フランス原産のダジャン種のプルーンだった。カリフォルニアの気候に適合するよう接ぎ木して改良したプルーンはすくすく育ち、灌漑設備などの農業技術も手伝って一大産業に。現在カリフォルニア プルーンは、世界の生産量の約40%に相当する。

Day 1 @Neill Mitchell Ranch in Yuba City
次世代へ受け継がれる、ファーマーの熱意と誇り

米澤シェフが最初に訪れたのは、冒頭のプルーン畑を有し、収穫から乾燥までを行うミッチェル農園。思わず目を丸くしたのは収穫風景。シェーカーと呼ばれる機械がぶるぶると勢いよく木を揺らし、完熟した紫色の実を振り落とす。「糖度が25%を超えた頃に収穫します」とは農園スタッフ。糖度が高くないと乾燥の際に発酵してしまうため、糖度を慎重に見極め収穫が行われる。収穫後、水洗いされたプルーンは乾燥機へ。約18時間、80℃の熱風で乾燥される。何も足さず、余計な手は加えない。乾燥したての温かいドライプルーンは「果実の甘味が素直に濃縮されている」と米澤シェフ。



収穫期を迎えた農園では、木を揺さぶり完熟した実を振り落とす機械“シェーカー”が大活躍。

収穫後に洗浄され、乾燥機で乾燥されるプルーン。工程はすべてナチュラル。

乾燥させたプルーンの水分値は、保存に適した18 ~ 20%。その後、水分値を調整し出荷される。

工場を見学したら、農園主のニール&サンディさん夫妻と、息子ジョセフさんお手製のランチを囲む。「プルーンは幅広く応用できる食材です」とはシェフの経歴を持つジョセフさん。夫妻は農園の2代目、ジョセフさんは3代目。「毎年同じスタッフ、同じ笑顔で収穫を迎えられ幸せです。私たちは大家族みたいなもの。4代、5代と引き継いでいきたいですね」と夫妻。家族で農園を守ってきたことを「誇りに思う」と晴れやかに話す笑顔が印象的だった。



取材チームを温かく迎えてくれた、家族経営のミッチェル農園のみなさん。



Day 2 @Joe Turkovich Farms in Winters
サステイナブルな栽培が、100年後の未来を切り拓く

続いて向かったのは、日光が当たるよう剪定された果樹が整然と並ぶターコヴィッチ農園。「日本のプルーンはもっと酸っぱいんです」と話す米澤シェフに、「それにはカリフォルニアの気候・風土が関係しています」と農園主のターコヴィッチさん。カリフォルニアは日照時間が長く乾燥した夏と、極端に寒すぎない冬が特徴。その気候が、甘く栄養価の高いフルーツを生みだすという。「なるほど、興味深いです」と熱心に耳を傾けるシェフ。プルーンの栄養価には血圧を下げるカリウム、消化を助けるソルビトールなどが含まれ、近年の研究ではビタミンKなどが骨を強くし、骨の健康維持に効果的ともいわれている。



持続可能な農業の未来を語るターコヴィッチさん。



大自然にゆだねるプルーン栽培

「プルーンは元々、農薬などをあまり必要としない果樹。さらにその使用を減らす栽培方法を大学や研究機関が研究し、生産者に向けて発表しています」と話すターコヴィッチさんも、研究成果を取り入れたサステイナブルなプルーン栽培で知られる。そのひとつがフクロウ。プルーンの木の根を食べるホリネズミの駆除に薬品を使わず、それらを捕食するフクロウの力を借りている。生態系を理解し、自然にゆだねる農業。そのメソッドは裏手にある紅花畑でも実践されていた。その畑は土壌の微生物環境を改良するために休耕している、かつての果樹園。土壌改良剤に頼らず、紅花やトウモロコシ、小麦を輪作し、4〜5年かけて土作りをしてプルーンの苗木を植えるという。循環する畑。そこには未来がある。



収穫期を迎えたプルーン農園。「フレッシュなプルーンプラムを初めて食べました」と米澤文雄シェフ。サステイナブルなプルーン栽培に取り組む農園主ターコヴィッチさんの話に耳を傾ける。

外敵駆除を担うフクロウの小屋は農園内に5~ 6カ所。

カリフォルニア大学デイヴィス校猛禽類センターの協力で、農園に飛来するのと同じメンフクロウを見せてもらう。

カリフォルニアのプルーン果樹は良質な果実を約30年実らせる。

収穫前に果実の柔らかさと糖度を確認。



Day 3 @Sunsweet in Yuba City
ナチュラルな素材をそのまま加工する、ピュアな製法。

最後に訪れたのは創業100年を迎えたサンスウィート社。州内10カ所の乾燥工場から届くプルーンを保管し、注文に応じ水分値を調整、製品にして出荷している。日本市場が求める厳しい品質基準に真摯に応える姿勢と、特許を取得しているプルーンの種抜き技術で、高い評価を得ている。



サンスウィート社の保管庫。夜に外気を取り込み、夏でも庫内を22℃前後に維持。

ドライプルーンのほか、さまざまな製品を製造。

種抜きの技術に定評のある同社は1917年創業。




プルーン愛の溢れる一皿に

プルーンの産地や工場を巡った米澤シェフは言う。「今回あらためてカリフォルニア プルーンのおいしさを実感しました。体に優しく、日常的に食べられるところもいい。何より生産者の方たちの愛を感じましたね。自らの仕事に誇りをもっている。そういう人たちが作るものを、積極的に料理に使いたい。そう思います」
そんなシェフの熱い思いと、カリフォルニア プルーンが一皿に昇華される。その味わいには、ナチュラルで飾らないカリフォルニアの、ピュアな恵みが生きている。




カリフォルニア プルーンを使って @THE BURN

ローストビーツサラダ カリフォルニア プルーンのライムピクルス 豆乳ヨーグルト
Roasted Beet Salad, Pickled California Prunes, Soy yogurt

カリフォルニア プルーンをライム果汁とクローブでピクルス仕立てに。ローストしたビーツの甘味、まろやかなヨーグルトに、酸味を加えたプルーンがアクセント。栄養バランスもよく、ヴィーガンにも対応する一皿。

RECIPE
◎ 材料( 2 皿分)

ビーツ(皮付き)……1個
赤ワインビネガー……少量
<ピクルス>
カリフォルニア プルーン(種ぬき)……50g
ライム果汁……40g
クローブ……5個
アンディーブ(赤、白)……各適量
オリーブ油……適量
塩……少量
パッションフルーツ……適量
イタリアンパセリ(ちぎる)……少量
豆乳ヨーグルト……40g
ニンニク(すりおろす)……少量

◎ 作り方
1.ビーツに赤ワインビネガーをふってアルミホイルで包み、180℃のオーブンで約3時間ローストする。串を刺して火の通りを確認する。
★POINT:ビネガーが色鮮やかに保ち、土臭さを抑える。

2. 1の皮を剥き、くし切りにする。

3.ピクルスを作る。鍋にカリフォルニア プルーン、ライム果汁、クローブを入れて弱火にかける。汁気がなくなるまで煮詰めて冷ます。半分に切る。

4.豆乳ヨーグルトにニンニクを混ぜる。

5.皿に42の順に盛り付け、オリーブ油と塩で和えたアンディーブ、パッションフルーツ、3のピクルスを添え、イタリアンパセリをちらす。



News!
2018年10月6日(土)~11月5日(月)まで、米澤シェフによるカリフォルニア プルーンを使った料理が東京・青山「ザ・バーン」にて期間限定でオンメニューされます。





◎ THE BURN
東京都港区北青山1-2-3 青山ビルヂングB1F
☎ 03-6812-9390
11:30~14:00LO 17:30~22:00LO
日曜・祝日休
東京メトロ青山一丁目駅直結




[カリフォルニア プルーンに関するお問い合わせ]



◎カリフォルニア プルーン協会
☎ 03-3584-0866
http://www.prune.jp 



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