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FEATURE / MOVEMENT

PERFECT MATCHING GUIDEもっと知りたい、EU食材

EU食材 × 日本食材 パーフェクトマッチングのコツとレシピ vol.1

2019.12.06

text by Kyoko Kita / photographs by Bungo Kimura

2019年2月1日に日欧EPAが発効したことを受け、今後、EUから輸入される食品や飲料の選択肢がより広がることが予測されます。ヨーロッパの豊かな食文化を体現した食材を日々の食卓に取り入れて、 毎日の暮らしをバージョンアップさせたいもの。活用術を地理的表示(GI)保護制度、農産物マーケティングを研究分野とする法政大学経営学部教授の木村純子さん、料理家の渡辺麻紀さんとともに探ります。

食材を選ぶ厳しい目




渡辺 私がフランスやイタリアにいて驚いたのは、ごく一般の人が、自分の口に入るものを選ぶのに、ものすごく真剣だということでした。パリのオーガニックマルシェで見かけたおばあちゃんなんて、私が端まで行って戻ってくるまでの間、ひたすらホウレンソウの葉を一枚一枚、厳選していました(笑)。そんな光景が当たり前なんです。香りをかいでみたり、ちょっと味見をしてみたり(もちろん、良識の範囲内で!)、納得した上で買い物をする。

個人店から市場、スーパーマーケットなどまで、選択できる場も充実していますね。

渡辺 ヨーロッパの人々は、食品についての知識も豊富で、きちんと選択する目を持っていますし、食材の品質と安全性に妥協しないのだなと感じました。

木村 確かにEUは、世界でも厳しい食品安全基準を設けていますし、遺伝子組み換え製品も禁止しています。自分たちの身体だけでなく、食料消費による環境への影響に対する意識も総じて高いと思います。

渡辺 私は食材の産地がEU加盟国というだけで、一枚フィルターが通っているという安心感があり、つい手に取ってしまいます。

「多様性」を楽しむ



渡辺 EUの食材にはアルチザン(職人)の存在が欠かせませんね。

木村 「均質」「効率」が偏重されすぎないので、食材によっては、気候風土を活かす中で季節ごとに品質が変化するものもあります。たとえば、ある地域のチーズは、春先に放牧されてハーブや花をたくさん食べた牛の乳で作ると、ほんのりタイムやカモミールの香りがして、心待ちにする消費者も少なくありません。また冬期に干し草を食べた牛の乳で作ったチーズを好む消費者もいます。オリーブオイルにしても、地域ごとに品種が異なり、ピリッと辛いものからフルーティなものまでありますし、搾り方によっても個性が出てきます。

チーズやオリーブオイル一つとっても、様々な個性や価値観が認められているのですね。

木村 EU食材の醍醐味は、そういった「違い」や「多様性」を楽しめるところにあると言ってもよいと思います。PDO(原産地呼称保護)とPGI(地理的表示保護)は、「作られた産品の特性」と「テロワールの特性」すなわち地形などの自然要件と人々が守ってきた伝統などの人的要件とが結び付いていることが登録条件です。その結果として得られる食材の個性に人は魅かれるのだと思います。



国や地域ごとに食文化がある

「彼らは自分の村の食材が最高だと胸を張って言います」


木村 生産地と消費地が近いことから、誰が作った食材か、どのような工程で作られているのかを、ヨーロッパの人々は直接知っています。PDO/PGIの登録マークを気にするまでもなく、たとえばオリーブオイルは、その年の搾りたての新物を馴染みの生産者から1年分まとめて購入し、自分で小分けにして1年で使い切ります。チーズにもお気に入りの作り手がいる。EUには国や地域ごとに郷土料理があり、地元の固有ブドウ品種を使って造ったワインがあります。彼らは自分の村の料理とワインが最高だと胸を張って言います。食材選びに厳しいからこそ、比較的近距離で顔の見える関係性の中で調達します。そこにあるのは、PDOの「マーク」ではなく、確かな信頼関係です。PDOは、生産地と消費地が時間的・空間的に離れている場合に、どこでどんな生産工程で作ったものか起源を証明し、模倣品と区別する役割があります。生産者の顔や名前に代わる、信頼の証なんですね。

渡辺 EUでは、消費者と作り手が互いにリスペクトし合っているようにも感じます。作り手は自身のやり方でものづくりに励み、買い手も品質に納得して購入する。

安全で確かな品質を追求していく環境を、作り手・食べ手双方から、築いていけたらいいですね。



EU食材で食卓に新風を

「日欧共通の素材でも違いがあり、バラエティに富んでいます」


渡辺 EUの食材を見ていると、日本から遠く離れているのに、意外と似たようなものを使っていることに気付きます。たとえば練りゴマ。日本のように焙煎したものではなく生のゴマをペースト状にしているので、同じような使い方をする中で風味の違いを楽しむことができます。ハチミツも甘味料という意味では万国共通ですが、日本は百花蜜のように穏やかな風味のものが多いのに対し、EUのハチミツはバラの香りやブルーベリーを混ぜ込んだものなどバラエティに富んでいます。いつも使っている国産ハチミツの代わりに使ってみると、粗さや仄かな苦味やミネラル分などユニークなキャラクターが、料理の印象をさりげなく変えてくれます。

また、EUからは様々なドライフルーツが輸入されていますが、ストックしておくと、持ち寄りパーティなどをする際、重宝します。各人がいろんなお酒や料理を思い思いに持ち寄ると、食卓がまとまりに欠けることがありますが、1〜2品ドライフルーツを使った料理があると、焼酎、日本酒、赤ワイン、白ワイン、どんなお酒とも不思議なほど違和感なく繋いでくれるんです。テーブルにドライフルーツを盛ったお皿を置いておき、自由につまんでもらうのもいいですよね。

木村 オリーブオイルは、油ではなく「調味料」として認識されている地域もあります。だからお皿に盛られた料理にかけてはじめて、料理は完成すると考えます。チーズも旨味を補うものとして使う場合もありますね。皮に近い硬い部分も、日本では捨てられてしまいますが、包丁で埃を削りとって使います。イタリアではミネストローネに欠かせないという人もいるくらいです。

渡辺 硬くなってしまった生ハムもスープや煮込みに入れると旨味が出ておいしいですよ。世界各国の食材や料理を取り入れて発展してきた日本の食卓には、EUの食材もきっとすんなり馴染み、新しい料理のアイデアに繋がっていくのではないかと思います。



(左)法政大学経営学部教授 木村純子さん
研究分野は地理的表示(GI)保護制度、農産物マーケティング、SDGs(持続可能な開発目標) 。2012年から14年までヴェネツィア大学客員教授。http://kimuraseminar.qee.jp/about_prof/

(右)料理家 渡辺麻紀さん
フランス料理家に師事の後、ル・コルドン・ブルー代官山校に5年間勤務。渡欧し、フランス、イタリアでの料理留学を経て独立。現在は企業、雑誌等へのレシピ提案などを手掛ける。『Quiches』『ごちそうマリネ』など話題の著書多数。 http://www.makiette.com/







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