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FEATURE / MOVEMENT

フィンランドに学ぶスモールフードビジネスの始め方(全4回) vol.3 「世界のトレンド」「現代人のニーズ」「自分」を突き詰めた商品づくり 

1970.01.01


Photo by Four Sigma Foods

フィンランドを訪れて、一番衝撃だったのは、「水道の水を飲むのが当たり前」ということ。
国土の70%以上が森林。一年の半分以上を氷に覆われる土壌は、自然と浄化され、10万個以上存在する湖の水は、飲用可能という。ミネラルウォーターを買うのが当たり前の東京から見ると、うらやましい限りだ。そして、フィンランドの人々は都市に住みつつ、自然の恵みをとても身近に感じている。





お湯に溶かすだけのスーパーフード

Photo by Four Sigma Foods



「フィンランドでは“誰もが森の恵みを享受する権利”が法律で定められているんだ。ベリーやキノコの季節には、皆森へ出掛け、好きなだけ摘んだそれらを冷凍したり乾燥させたり、一年中様々な形で楽しむ。そんなキノコ狩りの文化と、フィンランド人のDNAに刻まれた健康志向に着目し、薬用キノコを摂取しやすい形で商品化しようと思ったんだ」と話すのは「Four Sigma Foods」のミカ・ランタネン。フィンランド人の若者3名が3年前に起業したベンチャー企業だ。

Photo by Four Sigma Foods

Photo by Four Sigma Foods

「たとえばチャガは、白樺のふもとに生育するキノコで、1グラムで人参18キロ分の抗酸化物質を含みます。ただ、それを薬用に摂取するには大変な手間がかかる。僕たちは、フィンランドの森で採れる“チャガ”“レイシ”、そして標高4000メートルの高地に生息する薬用キノコ2種を含む4種のキノコを、“お茶”“コーヒー”“ココア”という形で提供することを考えました」

薬用キノコを何代にも渡って扱う企業とパートナーシップを組み、安全性と品質管理は徹底しつつ、必要成分を余すところなく抽出。ハーブをブレンドして飲みやすく、かつお湯に溶かすだけという手軽さで商品化した。既に20カ国以上に販売店をもち、40カ国以上に通販をしている。
Four Sigma Foods
http://www.foursigmafoods.com





白夜が育むアロマ



サウナクラブで顔見知りになった工業デザイナーのミッコ、ファイナンス畑出身のミッカ、クラフトビール醸造家のカッレ、物流専門のヨーニ、造船業出身のミコの5人が、サウナの後でウイスキーを味わううちに「なぜ、フィンランドはこんなにライ麦畑があるのに、ライ・ウイスキーを造っていないのか?」という疑問からスタートした「キュロ・ディスティラリー(蒸留所)」。創業1年目で日本への輸出も実現した。



Photo by Kyro Distillery

「フィンランドのライ麦は、白夜のお陰でアロマが豊かに育つんだ。そして澄んだ水もある」とキュロ川近くの、もとチーズ工場を買い取って蒸留所を設立。ビール醸造家のカッレが、スコットランド、オランダ、デンマーク、ドイツで研修を積み、初めて蒸留したサンプルをロンドンのクラフトウイスキーフェアに出品。ライ・ウイスキーの他、白樺の葉や野生のベリー、花などフィンランド産ボタニカルを使ったライ・ジンも製造し、わずか1年で9カ国に輸出を広げている。
kyro distillery
http://www.kyrodistillery.com/





「北極圏のベリー」という宝



北極圏の野生のベリーは、ビタミンもアロマも豊富で、栽培されたベリーに比べ80%以上も抗酸化物質を多く含むという。そんなベリーを使った商品を作り続けるファミリー企業「Lignell & Piispanen」のリキュールは、手摘みのベリーを数間月間アルコールに漬け、プレスした後、6~7カ月間熟成させたもの。6代目曰く、「今、カクテルのトレンドは、ナチュラル&クラフト志向。東京のバーシーンにもぴったりだと思いました」とアジアマーケットに注目している。
Lignell & Piispanen
http://www.lignellpiispanen.com/



同じくベリーを使ったスムージーやジャムを手掛けるファミリー企業「Roberts」のマーケティングディレクターは、「味がよいこと。健康的であること。消費しやすい形態であること。天然由来のものであること。この4つを満たすことが、国際市場で競争できる条件。スムージー200mlあたり260個の野生のベリーを使う私たちの商品は、“森からの天然の良薬”」と話し、パッケージも「割れない&燃やせる」素材で環境と利便性に配慮する。
Roberts
http://www.roberts.fi/en

フィンランドの食産業のうち、従業員数5人未満の中小企業が6割以上を占めるという。小さくて強い企業のお手本が集まったフィンランド。その強さの秘訣は、「世界のトレンド」「現代人のニーズ」「自分たちしかもっていないもの」の突き詰め方にあるようだ。





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