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FEATURE / MOVEMENT

おいしいパルマハムの極意

パルマハム スペシャリストへの道

サルメリア「コメスタ」千葉元気さん

Dec 17, 2020

text by Reiko Kakimoto / photographs by Hiyori Ikai

2017年に当サイトによる「パルマハム・スペシャリストを志す熱い食のプロ募集!」の公募で選ばれた、仙台のサルメリア「コメスタ」の千葉元気さん。日本人唯一のパルマハム職人・多田昌豊さんにパルマハムの扱い方を学びました。
適切な目利きとトリミング、そしてスライスの技術でレストランクオリティの「一皿」に昇格するパルマハム。あれから2年。研鑽を積んだ千葉さんがいよいよ「パルマハム スペシャリスト」に挑戦です。


「パルマハム スペシャリスト」とは、良質なパルマハムを見極め、ベストな状態で提供し、かつパルマハムの魅力を語り伝えられるプロフェッショナルのこと。世界11カ国で316名のスペシャリストがいて(2020年11月10日現在)、うち日本には5名のスペシャリストがいます。多田さんは日本でのスペシャリストの育成に貢献している一人です。

「スペシャリストの条件は、美味しいパルマハムを見極めて、それを広く啓蒙することに貢献できる人。今回、千葉さんには、スペシャリストの資格を取得して欲しいと思っています」と多田さん。本来、パルマハムの骨付き原木から骨抜きをするのはスペシャリストの条件ではありませんが、千葉さんは骨抜きしたパルマハムを提供しているため、骨抜きから皿盛りまで実践してもらいました。

トリミングでクリアな味わいに

千葉:よろしくお願いします。2年前に多田さんに指南を受けてから、日々研鑽を重ねてきました。では、トリミングから始めます。まず真空パックから開ける時に香りをチェックし、異臭がないか確認します。そして周りのスーニャ(豚の脂、米粉、塩、胡椒をペースト状に練ったもの)をそぎ取ります。

多田:パルマハムの生産過程を説明すると、まず豚肉を塩漬して水分を抜き、むき出しの赤身部分にスーニャを塗り、さらに乾燥熟成させます。乾燥熟成を始めて7カ月くらい経つと、表面は石のように硬くなるのですが、実は内部には水分がキープされているんですね。スーニャを塗って「フタ」をすることで、内部の水分が表面近くまで浸透し、しっとりとしたハムに仕上がる。パルマハム生産にとってスーニャは不可欠なものです。

千葉:スーニャは全て取り除きます。また酸化して黒ずんでいる表面に近い肉も適宜トリミングします。


多田:おいしいパルマハムでも、トリミングをしっかり行わないと、カビ臭のような嫌な味になるんだよね。口の中にイガイガした味が残ってしまう。トリミングはかなり大事な作業です。

千葉:黄色く酸化していたり、カビが入っている部分も切り落とします。


多田:骨抜き・成形をする日とスライスする日の間が開くようならば、スーニャを取って最低限のトリミングでいい。カットした面から酸化や劣化は始まってしまうため、スライスする直前にトリミングした方がいいからね。

千葉:はい。トリミングが終わったら、骨盤の一部を取ります。深めに刃を入れて…。


日本では「メガネ」ともいわれる部位。

多田:熟成させている間に、肉は収縮します。乾燥・劣化を防ぐため、骨盤の一部をしっかり残し、長期熟成に耐えられるようにしています。

骨抜き:匂いで状態と味を確認する

千葉:次は骨抜きをします。まずは左右どちらの足か見極め、骨の位置をイメージします。脚先の方から骨に垂直に包丁で切り込みを入れ、その後骨抜き用のナイフで、大腿骨の骨頭に沿って刃を入れていきます。

多田:骨に沿って、なるべく綺麗に骨と肉を外します。刃が入ったところから肉が酸化=劣化するので、なるべく刃を入れる手数を少なくすることを意識して。


多田:骨の周りの肉、特に膝の裏側の肉は血管が集まっていて匂いが出やすいので、試食して確認。


千葉:(口にパクッと入れて)問題なく美味しいと思います。

多田:まず匂いを嗅ぐようにしよう。「おいしい匂い」を知ることはとても大事。一つひとつの工程で、匂いを嗅いで覚えて、次に味わいを覚えるとより鮮明に覚えられる。


千葉:わかりました。最後に、膝の部分に残った「皿」(膝蓋骨)と、肉に残った骨膜を取ります。骨膜はザラザラしてスライサーに引っかかるので、綺麗に取り除くことがポイントです。

成形:洋梨やラグビーボール型が理想形

千葉:次は紐で縛っていきます。まず中に丸め込む部位をきれいにします。ぎゅっと縛るのは酸素に触れる面を最小限にして、酸化劣化を防ぐため。内もも=スネ側を中に折り込んで縛ります。


写真右側が「すね側」。この部分を骨が入っていた空間に巻き込み、上から外もも側の肉を被せる。すね側の皮は一部を切り開く。


多田:すね側を巻き込む理由として、もともとすね側の肉は水分が少ないから、熟成していく間にパサつきやすい。だから乾燥しやすいすね側を巻き込んだほうがいいと思うよ。

千葉:なるほど、理解しました。巻き込む(すね)側のトリミングをして、皮を一部切り開き、巻き込みます。(革手袋を装着)


千葉:(ギリギリと紐を縛りながら)…くっ。最初は力がなくて、本当に縛れなくて…。


多田:わかる、本当に大変な作業だよ。きれいな形に仕上がったと思います。洋梨とかラグビーボール型にすると言われているけど、おいしさのためというよりイタリア人的美意識です。

スライス:部位ごとの味わいの違いは、スライスの仕方で際立つ

千葉:次はスライスをします。


多田:パルマハムは生もの。必ずスライサーは、作業前に消毒、作業後に消毒!アルコールは、吹き付けてから紙でふき取ると、ほとんど意味がない。だからアルコールシートで拭くか、拭いた後にアルコールを吹き付けて終わる、のどちらかで。

——パルマハムは極薄にスライスすることを推奨していますが、それはどうしてですか?


多田:口の中でとろけるのがパルマハムの美味しさを感じる方法のひとつであること。そして日本の人たちは肉の塩味や旨味の強さに慣れていない人も多いので、なるべく薄くスライスするようにしています。さらに味わいが違う「すね」側と「お尻」側を一枚にしてスライスしたいので、1枚が大きめになることも、薄くスライスする理由です。でも正解はありませんので、好みで薄さは変えてもらって構いません。ただ、薄くスライスできれば厚くスライスすることは容易なので、まずは薄くスライスできるよう技術を磨いてほしいと思います。


千葉:いずれにせよ、大切なのはトリミングですね。なるべく薄くスライスし、空気を含ませるように皿にプレゼンテーションしました。


多田:スペシャリストに値すると思います。これからも研鑽を積んで、さらにおいしいパルマハムの極意を極め、お客さまにおいしいパルマハムを届けて下さい。


仙台のサルメリア「コメスタ」千葉元気さんは「パルマハム スペシャリスト」となりました。これから「おいしいパルマハム」が食べられるお店が、益々日本で増えていくことを期待しています!





◎サルメリア コメスタ
宮城県仙台市青葉区大町2-11-13
今泉コーポ1F
☎ 022-796-8726
10:00~22:00(平日14:00~17:00 店内飲食は休)
ランチタイム 11:00~14:00
火休
https://salumeria-comesta.jimdofree.com/

※イベントなどにより営業日が変更する場合あり。
詳しくはサイト又はお電話にてご確認ください。






お問い合わせ先
パルマハム・インフォメーションセンター (旭エージェンシー内)
☎ 03-5574-7834
info@parmaham.org





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