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JOURNAL / JAPAN

日本 [茨城]

土壌を万全にして、逆転する旬に対応

未来に届けたい日本の食材 #04イチゴ

May 10, 2021

変わりゆく時代の中で、変わることなく次世代へ伝えたい日本の食材があります。手間を惜しまず、実直に向き合う生産者の手から生まれた個性豊かな食材を、学校法人 服部学園 服部栄養専門学校理事長・校長、服部幸應さんが案内します。

text by Michiko Watanabe / photographs by Daisuke Nakajima


口に含むとポタポタと果汁がしたたるほど瑞々しく香りが良い「村田農園」のイチゴは、その品質の高さから、全国の一流料亭やホテル、有名パティシエたちからの引き合いが後を絶ちません。甘く酸味もほどよいイチゴを作るにはどんな工夫があるのか。農園主の村田和寿さんを訪ねました。

茨城はメロンの生産が盛んで、中でも鉾田(ほこた)は若い後継者も多く一大産地です。うちも父の代はメロンが中心でしたが、自分は新しいことをやってみたいと、イチゴをメインに据えることにしました。栽培を続けるうちに、イチゴに何より大事なのは健康な土作りだと思うようになりました。というのも、ある時、イチゴの味が落ちたと言われて調べてみたら、根が水分を吸えない土になっていた。それから土の勉強を始めて、根の健康と環境を第一に考え、太陽熱を利用した安全な土壌還元消毒に変えたんです。
高畝式で水はけのよい環境に。作業性ももちろんだが、畝を高くすることで水はけがよくなり、果汁はたっぷりでも水っぽい味のイチゴにならない。
まず収穫シーズンが終わると、役目を終えた苗をすき込みます。次は米糠と堆肥。堆肥は豚の排泄物と籾殻、土壌に合う菌体も一緒に混ぜて発酵させたオリジナルです。これをすきこんだら、灌水チューブを張って48時間、田んぼみたいにたぷたぷになるまで水を撒きます。フィルムで密閉して2カ月おき、熱に弱い悪い菌の密度を減らして、生育に役立つ良い菌の密度を上げていきます。

同時に土壌分析をして足りない栄養分を肥料で補います。土壌も人間と同じで、土地ごとに必要な栄養分は異なります。リンや窒素、カルシウム、魚粉、昆布、コラーゲンなど有機系の肥料で補って、土を万全にします。こうすることで甘味と香りはもちろん、ほどよい酸味とコクのあるイチゴが作れるようになりました。毎年、土壌検査をするので、連作障害もありませんし、年を重ねるほどにいい土になってきたように思います。

本来、イチゴの旬は5月からですが、日本ではクリスマスケーキのシーズンに合わせてイチゴの栽培サイクルを組むので逆転します。うちも35年ほど前(1985年)から今のサイクルになりました。
(写真左・手前より)現在は、よいひめ、とちおとめ、白イチゴを栽培。軟らかな果肉は共通で、白イチゴにはシルキーな艶っぽさも。
(写真右)土壌検査はもう30年以上続けている。
(写真左)敷地内には堆肥の山が。発酵が進むにつれ、山はだんだん小さくなっていく。
(写真右)暖房は使用せず、ハウスを二重に建て、間に水温15℃の井戸水を噴射して温かさを維持する。イチゴ栽培は換気も大事。モワッとくる息苦しさはない。
イチゴは蜜蜂の受粉から1カ月〜40日後に収穫できるのですが、最初の花芽からできるイチゴは大きすぎて、ケーキの飾りには向きません。そこで、最初のイチゴは11月20日ごろに実るよう定植時期を決めて、ちょうどサイズのいいイチゴが12月20日ごろに収穫できるようにします。そして6代目まで収穫して、5月いっぱいで終了。イチゴはだんだん小さくなっていきます。

以前から作業場まで買いに来てくださる方が多く、4年前(1996年)に直売所も兼ねたカフェを作りました。お客様に喜んでもらえることは何か、と考えていったら自然に6次化も形になった感じです。今も少しずつ新しい試みにチャレンジしています。この仕事に終わりはないですね。

イチゴは先端から上に向かって赤く染まる。受粉は蜜蜂が行うため、熟すタイミングは同じ株でもバラバラ。
(写真左)イチゴの収穫シーズン(12 ~ 5月)だけオープンするカフェでは、イチゴシェイク(600)やイチゴの酵素サイダー(500)を提供。
(写真右)やさしい甘さはコンフィチュールになっても変わらない。ラム酒とミントがアクセントになった商品も。各¥1500。
「イチゴ栽培に大切なのは、土、健康な根、換気です」と語る村田和寿さん。




◎村田農園
茨城県鉾田市子生796-14
☎0291-37-2345
https://murataichigo.com/
※カフェは12 ~ 5月までの営業

( 雑誌『料理通信』2020年6月号 掲載)






















































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