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JOURNAL / 世界の食トレンド

COVID-19対策―― 世界の飲食店はどう復活へ向かう? イングランド編

2020.08.20


COVID-19対策――

世界の飲食店はどう復活へ向かう? イングランド編

Aug. 20, 2020

text & photograph by Yuka Hasegawa

世界の飲食店&飲食業に携わる人々はこの危機にどう対応し、何を学び、何を模索しているのか?“ウィズ・コロナ時代”を歩み始めた、各国在住のジャーナリストがリポートします。

(2020年7月15日時点の各国の状況に基づきます。)





この夏、ソーホーの一角を歩行者天国にして、
地域一体で屋外飲食スペースを確保

7月4日、ロックダウンによる100日余りの営業停止が解除され、イングランドのレストランやカフェ、パブやバーが鳴り物入りで営業を再開した。特にロンドン一の繁華街ソーホーは、予想をはるかに超えた多くの人々が路上を埋め、メディアでも大きく取り上げられた。

この大舞台の仕掛け人が、老舗や独立系の個性的なレストランやカフェ、気鋭のバーやパブが軒を連ねるソーホーの不動産管理会社「ソーホー・エステート」のMDジョン・ジェームズ氏だ。“セーブ・ソーホー(ソーホーを救え!)”と銘打ち、英国飲食業界のハブ的存在でありながら、緊急事態宣言後はゴーストタウン化していた同地区の復興キャンペーンを展開。一部を歩行者天国にすれば、レストランやカフェは路上にテーブルを張り出してキャパシティを広げることができ、人々は屋外で安全に飲食を楽しめると提案した。このユニークな アイデアは、6500人以上の署名と共にウエストミンスター市議会に嘆願され、7月上旬許可を得た。  

とはいえ営業初日の土曜日は、待ちに待った日を祝うソーホー・ファンが路上に大挙、ストリート・パーティの様相を呈し、ロビー活動により縮められたソーシャルディスタンス“1メートル”さえも遵守していないと、大きな批判を浴びることに。

同市議会からも厳しい警告を受けるに至ったが、2週目の週末は、“ノー・テーブル、ノー・サーブ(テーブル席のお客以外にはサーブしない)”のルールを徹底し、またSNSを通して予約を奨励したことも功を奏し、人々がリラックスした雰囲気を満喫する光景が至る所で見られた。ロックダウン解除以降、試行錯誤をしつつも、再興への第一歩を踏み出したソーホーの底力に、今後も期待がかかる。

TOP写真:歩行者天国は夏季のみ施行され、平日は夕方から、週末は昼からソーホー東部で車の侵入が禁止される。




<世界のコロナ対策:イングランドの場合>


▼行動制限要請、地域・全国封鎖の時期
3/16 不要不急の外出の自粛を要請。
パブ、ナイトクラブ、劇場など人が集まる場所を避けるよう要請。できる限り在宅勤務を要請
3/23~ 全国封鎖、全国休校
外出制限が自粛要請から罰金を伴う法令に。生活に必要な店以外は営業停止
(以下、イングランドの解除の流れ)
5/11~ 1日1回の外出回数制限を解除。屋外であれば同居家族以外の1人と会うことを許可
6/15~ アパレル、書店、一般小売店など営業再開。公共交通機関でのマスク着用義務化
7/4~ レストラン、カフェ、パブ、バー、ホテル営業再開。
美容院、映画館、美術館・博物館、図書館、歴史的名所、キャンプ場、遊園地など営業再開

▼飲食業への要請や命令内容
3/23~ ロックダウンに伴い、全国の飲食店、ホテルは休業
(テイクアウト、デリバリーのみ可)
(以下、解除の流れ)
7/4~ 解除プランに沿って営業再開
●2メートルの社会的距離を、感染防止の措置を最大限取れば1メートルで可
●営業再開にあたり感染防止のためのガイドラインを配布
●客の連絡先を把握しデータを21日間保管することを義務付け

▼飲食業(企業全般)への主な救済策
◎ 賃金補償
休業中、従業員の給与の80%を国が負担。2500ポンド(約33万7500円)が上限(7/31まで)*その後条件付きで、同スキームが10月まで延長される

◎ 納税猶予
企業のVAT( 付加価値税)納税期間を6/30まで延長。(飲食・ホテル・観光は、6カ月間税率20%から5%に引き下げ措置も)

◎ 家賃支払い猶予
6/30まで家賃の支払い猶予

◎ 融資
中小企業向け、2000~5万ポンド(約27万~6750万円)の融資が数日で受けられるスキームThe Bounce Bck Loan開始(12カ月間無利子、オンライン手続き可能)

◎ 事業支援
事前に登録されたレストラン/カフェ/パブで外食する際、勘定の50%をディスカウントするスキームを発表(最高10ポンドまで、月~水のみ有効、料理とソフトドリンクが対象。アルコール飲料は除外)






◎ Save Soho
saveoursoho.co.uk

(『料理通信』2020年9・10月合併号/「ワールドトピックス」より)



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