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MEETUP

「栽培」と「醸造」から紐解く日本ワイン Vol.1

テイスティングと食材の合わせ方編

2015.12.25


国内のワイナリー数が220軒を超えるなど、日本ワインの勢いが止まりません。
トップレストランで、バルで、居酒屋でオンリストされ、バイ・ザ・グラスで提供される光景が当たり前になりました。
今、日本ワインを知ることは、ワインを語る上でも楽しむ上でも絶対必要条件。
そこで、日本ワイン界をリードするサントリー「登美の丘ワイナリー」の渡辺直樹ワイナリー長と「コンラッド東京」の森覚ヘッドソムリエによる日本ワインセミナーを、2015年12月8日、コンラッド東京で開催。
「登美の丘ワイナリー」の6種のワインを通して、日本ワインのつくりや味わいの特徴、上手なマッチング法を学びました。

text by Kei Sasaki / photographs by Tsunenori Yamashita



「登美の丘ワイナリー」
渡辺直樹ワイナリー長
1989年から登美の丘ワイナリーにて栽培・醸造技術開発を担当。92~95年にはボルドーの大学とワイナリーで学び、フランス国家認定エノログの資格を取得。2014年より現職。

「コンラッド 東京」
森 覚ヘッドソムリエ
2010年、2013年の世界最優秀ソムリエコンクールに出場するなど、日本のワイン界をリードする存在。2016年4月にアルゼンチンで開かれる同コンクールにも日本代表として出場予定。



まずは、日本で独自に開発された品種から。普段の食事に取り入れやすい1本です。



ジャパンプレミアム リースリング・フォルテ 2014


■つくりの解説 by渡辺直樹ワイナリー長
爽やかに仕上げています。
「リースリング・フォルテは、日本の固有品種・甲州三尺とリースリングを交配したサントリーの開発品種。収穫は登美の丘で最も早い8月末から行います。ステンレスタンクで発酵後、6か月間シュールリーして爽やかに仕上げています」

■テイスティングコメント by森覚ソムリエ
日本酒やカクテルに通じる親しみやすさ。
「まだ若くフレッシュなワインであることが、グリーンがかった外観からわかります。柑橘系の果実や白い花の香りが中心で、樽香りはなし。味わいも快活でフレッシュです。さっぱりしているけれど、後味にほのかな花のフレーバーを感じる。ワインになじみがない人でも日本酒やカクテルに通じるフルーツ香があって親しみやすいのではないでしょうか。分析しながら頭で飲むより鼻と喉で楽しみたい1本です」

真鯛と帆立貝のタルタル イクラ、ジブレット、胡瓜、ラディッシュ、マーシュサラダ

■マッチングの手引き by森覚ソムリエ
和食材と合います。イタリアンや中華もOK。
「フレッシュで軽快な酸味は、魚介や野菜のミネラル感と相乗します。ホタテのかわりに甘エビを使ってもよいでしょう。リースリング・フォルテは和食材と相性がいいことで知られますが、イタリアンや中華にも合わせやすいオールマイティなキャラクター。フレッシュ感が引き立つようしっかり冷やしておきましょう」





世界が注目する日本の固有品種、甲州の上手な楽しみ方。



登美の丘ワイナリー 登美の丘 甲州 2014


■つくりの解説 by渡辺直樹ワイナリー長
遅く摘んで、凝縮感を出しています。
「登美の丘の甲州は、樹でしっかり熟させて、皮の渋みを深い味わいへと変えるのが特徴です。例年、山梨の他のワイナリーより3週間ほど遅い10月末から収穫し始めるのですが、冷涼だった2014年は10月30日からスタートしました。発酵は4割がステンレスタンクで6割が樽。辛口ながらも、遅摘みならではの凝縮した果実味を持っています」

■テイスティングコメント by森覚ソムリエ
甲州の中で出色の深みのある味わい。
「外観にグリ系品種の色調がしっかり感じられ、リースリング・フォルテより濃いイエロー。香りはナシや洋ナシ、りんごなどの白いフルーツが中心で、樽を思わせるフュメ香や貝殻のニュアンスもあります。アタックは柔らかでフルーティ、でも酸も豊かでグリならではの渋味もある。フレッシュな造りが多い甲州の中で出色の深みのある味わいです」

〆鯖のグリル 和柑橘エマルジョン

■マッチングの手引き by森覚ソムリエ
青魚と柑橘との組み合わせが鉄板です。
「青魚と相性がいいことで知られる甲州。今回は炙り〆鯖を合わせています。ワインが持つほのかな樽香が炙った鯖の皮の香ばしさにぴったり。アップルビネガーで締めるとぐっとワインに寄り添い、和柑橘のエマルジョンを合わせることで鯖の旨味を保ちつつ爽やかさが引き立ちます。根セロリやリンゴのレムラードを添えるとより合わせた時のフレッシュさが増します」






最上級の日本のシャルドネの威力。その品格を印象付けるには。



登美の丘ワイナリー 登美 白 2013


■つくりの解説 by渡辺直樹ワイナリー長
選りすぐりのぶどうを収量制限して仕込みました。
「シャルドネを栽培する9区画の中で選りすぐりの3区画を厳選。収量制限して栽培した完熟のシャルドネだけを使い、フレンチオークの小樽で発酵させた後、樽熟成。アッサンブラージュして仕上げました。樽は目立ちすぎず、ボリューム感ある口当たりと程よい酸のバランスが特徴です」

■テイスティングコメント by森覚ソムリエ
上質なムルソーのようなワインです。
「色は濃いイエローで、香りは黄色いフルーツやバニラ、ブリオッシュにカラメルと複雑。口に含むと果実の凝縮感とスモーキーさ、ナッツっぽさを感じ、カフェオレを飲んだ後のような余韻が長く続きます。上質なムルソーのようなワインですね」


大山鶏の燻製 エシャロットソースと粒マスタード

■マッチングの手引き by森覚ソムリエ
このリッチ感には白い肉もお薦めです。
「白は魚というイメージがあるかもしれませんが、鶏のように焼くと白くなる肉は白ワインに合います。豚や仔牛もそうですね。グリルで付けた焼き目がワインのフュメ香にぴったり。ブルゴーニュのムルソーのニュアンスがあるので、現地でよく使われる調味料のディジョンマスタードを添えたりすると、地域性が表現できます」





赤系品種のアッサンブラージュの妙。そして、一歩上ゆくマッチング術。



登美の丘ワイナリー 登美の丘 赤 2012


■つくりの解説 by渡辺直樹ワイナリー長
品種や畑の個性を生かす小仕込みの成果が歴然と。
「メルロ40%、カベルネ・フラン33%、カベルネ・ソーヴィニヨン20%、プティ・ヴェルド7%のボルドースタイル。雨が少なく凝縮感が出た年で、強さと同時に柔らかさもあるのが特徴です。収穫後、畑別に仕込んで畑別に熟成。翌3月にそれらをアッサンブラージュしました。小仕込みの成果を感じられる、自然な甘さと柔らかさのバランスがいい出来です」

■テイスティングコメント by森覚ソムリエ
既成概念を覆す赤。熟成が楽しみな1本。
「“日本のワインは薄い”という既成概念を覆す1本。黒みを帯びたガーネット色で、カシスやプラムなど熟した黒系フルーツの香りが豊かです。MLF(マロラクティック発酵)に由来する土っぽさも感じられ、香りに厚みと複雑さがある。滑らかなテクスチャーで、タンニンのボリュームもありますが、しっかり溶け込んでいるので引っかかりがない。熟成が楽しみなワインです」


勘八のポアレ ヴェルジュソース

■マッチングの手引き by森覚ソムリエ
赤ワインに脂ののった魚を合わせてみると。
「ボルドースタイルの赤はもちろん肉と相性抜群ですが、脂ののった魚と合わせてもおもしろい。MLF由来の土っぽさがカンパチの複雑味のある脂とよく合います。ハーブを思わせるグリーンな香りとヴェルジュソースもぴったりですよ」







登美の丘のフラッグシップ。日本の赤の熟成の真髄を知る。



登美の丘ワイナリー 登美 赤 2009



■つくりの解説 by渡辺直樹ワイナリー長
ターニングポイントの年。より土地を表現するつくりへ。
「2009年は登美にとって大切なヴィンテージ。カベルネ・ソーヴィニヨン主体、新樽を利かせたそれまでのスタイルを脱却し、優しさや柔らかさを表現するつくりに変えた年でした。カベルネ・ソーヴィニヨン45%、メルロ35%、プティ・ヴェルド20%。畑別に醸造し長期間樽熟成させてアッサンブラージュ。新樽比率は35%です」

■テイスティングコメント by森覚ソムリエ
日本ワインの熟成のポテンシャルを示す。
「濃いガーネット色はまだまだ若々しい印象ですよね。香りはカシスなどの果実に加え、メントール系のニュアンスもあります。骨格がしっかりとしていて酸もあるクラシックなポイヤックの赤のようで、“日本ワインもすばらしく熟成するよ”というメッセージを感じます」

仔羊 鞍下肉のロースト

■マッチングの手引き by森覚ソムリエ
王道のワインにふさわしい王道の組み合わせを。
「ポイヤックといえば乳飲み仔羊が有名。今回は仔羊の鞍下肉のローストを合わせています。デュクセルとパルメザンチーズのガレットを添えることで、キノコの香りやチーズの塩気など味わいに複雑さが生まれ、深みのある登美とよりよく相乗します」





類稀れな日本の貴腐ワイン。デザートワインとしての楽しみ方。



登美の丘ワイナリー 登美 ノーブルドール 1990



■つくりの解説 by渡辺直樹ワイナリー長
とりわけ良質な貴腐ぶどうからつくられています。
「ノーブルドールは1975年に誕生した日本初の貴腐ぶどうによる甘口ワイン。1990年は赤も良い年で、良質な貴腐果が発生したリースリング・イタリコとセミヨンを使用しています。ステンレスタンクで発酵させ、長期間熟成を経てリリースされた贅沢なワインです」

■テイスティングコメント by森覚ソムリエ
凝縮感のある味わい、複雑なアロマ。
「アンバーがかった深みのあるイエロー。煮詰めたトロピカルフルーツやカラメル、シナモン、スパイス、ロースト香と香りもかなり複雑。味わいは凝縮感のある甘味としっかりした酸があり、中盤から後半にカラメルやシナモンの香りが口から鼻腔の奥へと広がっていきます」

トロピカルフルーツタルトとエキゾティックシャーベット

■マッチングの手引き by森覚ソムリエ
深みや奥行きのあるデザートと合わせてください。
「甘口ワインはデザートと楽しみますが、甘いものなら何でも合うわけではありません。香りの複雑さやボディを考えるとスポンジやシフォンといった軽やかさに特徴のあるデザートではバランスが悪い。しっかり焼き込んで香ばしさのあるフルーツタルトなどの焼き菓子と好相性です」

*2016年1月に、セミナー開催レポート Part2 (味わいへと導く栽培と醸造 ダイジェスト編) 、Part3(オンリストの手引き編)を公開予定です。お楽しみに!




◎コンラッド東京
東京都港区東新橋1-9-1
☎ 03-6388-8000
www.conradtokyo.co.jp
都営大江戸線・ゆりかもめ線
汐留駅 徒歩1分
JR・都営浅草線・東京メトロ銀座線
新橋駅 徒歩7分





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