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PEOPLE / 料理人・パン職人・菓子職人

1980年以降生まれ 注目の若手シェフ

京都・京都駅前「燕 en」田中嘉人 Yoshito Tanaka

2018.07.02

『料理通信』2018年7月号取材時点


近年、急速にボーダレス化する食の世界。国を超えて働く先を選ぶことはもちろん、ジャンル、食材、また店間の垣根を越えて、互いの哲学や素材へのアプローチに刺激を受ける1980年代以降生まれのシェフたちが増えています。資源の枯渇や高齢化社会、深刻な人材不足など、食を取り巻く課題が溢れる中、アイデアとテクニックを武器に生き抜く、新世代の料理人たちの発想はどのように生まれるのでしょうか。これからの食の世界のキーパーソンに、未来を切り拓く仕事術を一問一答で伺いました。



丁寧な仕事は透けて見える

Q1 : 食べ手の心を動かすアイデアとテクニックを、どう身につけてきたか?
A1 : 最初に出す料理・先付に一番気を遣っています。季節が伝わる素材を用い、見た目も大切に。下準備には時間をかけます。丁寧な仕事は透けて見える。

Q2 : 世界で働く際に、必要な資質。日本人(自分)の強みはどこにある?
A2 : 愛国心、努力、忍耐、根性、柔軟性(笑)。日本での当たり前は海外では違う。死ぬ気で働かないと数年で店は潰れます。

Q3 : 今、世界とどう繋がっている? 気になる世界の料理トレンドや料理人
A3 : ネットより生の声。NYで知り合った友人達と頻繁に情報交換しています。

Q4 : 尊敬する人とその理由(食の世界に限らず)
A4 : 20歳の時に亡くなった父。茶人で蒔絵師でもあり、料理人とも懇意にしていました。高1から始めた日本料理店のアルバイトも父が縁。職人の世界や日本の伝統を大切にする精神も教わりました。

Q5 : 個性を打ち出すために店づくりで工夫したポイント
A5 : お客の目線を忘れないように。お造りは店の顔。鮮度の良いものを種類多く揃え、1枚ずつでも一人客のために盛り合わせます。一段違った食べ方を提案し、料理を五感で楽しんでもらいたい。定番からひとひねり、たとえば野菜料理なら、柚子釜にヒントを得たオレンジの〝釜〟を器にし、根セロリのすり流しや、ジャガイモに相性の良い白味噌を加えたビシソワーズを供します。

Q6 : スペシャリテについて。料理でもっとも大切にしていることは?
A6 : ねっとりと塩気のある自家製カラスミに、香り高い旬の新海苔を。春の酒肴。

Q7 : 料理人として、これからどう生きていきたいか?
A7 一日一日を精一杯に生きていけば、その積み重ねで結果がついてくる。人に助けられてきた人生なので、僕自身、これからも人を大切に生きていきたい。お客の目線を失うと傲慢になってしまう。客側の感覚も忘れないようにしたい。

text by Yoko Soda / photographs by Jun Kozai





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