HOME 〉

PEOPLE / 食の世界のスペシャリスト

柴田香織さん(しばた・かおり)フードナビゲーター

第4話「面白い人と、面白いことを」(全5話)

2016.06.01

次のステップへ

柴田さんは今年に入り、肩書きを「フードナビゲーター」に変えました。
以前、フリーランスの時代は原稿を書く、ワークショップをする、生産者を売り場に繋げる、様々なコミュニケーション方法をとっていくことから「フードコミュニケーター」としていました。食のコミュニケーションに携わっているという立場は変わりませんが、食の世界で再スタートを切ってから10年。「次のステップに進みたい」という思いを込めました。
「いろいろやっているから、どんな肩書きも当てはまらないような気がします。本当は、肩書き無しで仕事がしたいんですけどね。日本社会は名刺がないのも不便なので(笑)」。






Text by Kyoko Kita




湧き出るアイデア

今後やってみたいことは何か? 思いつくことはいろいろあるそうです。
たとえば、今年の正月に思ったこと――
「外国人を日本料理店で研修できる仕組みを作りたい。日本の食文化を外に発信したいという思いがここしばらくあるんです。ならば日本人が海外に出るよりも、外国人を日本で養成して現地で伝えてもらうのも有効なのではと」。イタリア料理でいえば、イタリアで学んだ意識の高い日本人料理人が日本でイタリア文化を伝えています。それと同じ発想です。

食のワークショップの講座を一つのパッケージにして、食企業の新人研修や社員向け講習会で活用してもらえないか、そんなことも考えています。

また10年の節目として、イタリアで学んだこと、日本に帰ってきてからのことを何らかの形でまとめたいという思いもあります。

さらに、今後注目されそうなトピックを自ら発信して盛り上げていきたい、とも。
「去年、提案したのは“夏の鹿”。鹿は今、害獣扱いになっていますが、夏鹿は鉄分が多くて、体を冷やすこともなく、女性にはとても良いんです。一般的には冬場に脂がのっておいしいと言われますが、脂に独特の臭みがたまるから必要ないというシェフもいる。枯渇している鰻に代わる夏の滋養食として、鹿はどうですか、と」。

好奇心は最大の栄養





食の“アイデンティティ”と“倫理”という守るべきところは守りつつ、「常に面白いことをしていたい」という柴田さん。

面白い仕事は、どこかに転がっているわけではありません。自ら生み出す。
どうやって……?

「面白い人と付き合う。面白い人としか付き合わない!
公私の区別なく食べたり飲んだりしているうちに、勝手に話が転がって面白い企画が生まれることはよくあります」

面白い人とは……?

「自分のフィールドを掘り下げようとする好奇心が強い人。掘り下げて掘り下げると、あるところで人脈も世界も一気に広がる。そこまで掘り下げている人は面白いですね。
仕事をしていく上で、生きていく上で、好奇心は最大の栄養だと思います」。

人と人の化学反応





そんな柴田さんの周りでは、時々、「面白い人」同士の間で化学反応がおこります。
たとえば、「富士酢」で知られる京都「飯尾醸造」の飯尾彰浩さんと、チーズやワイン、オリーブオイルなどイタリア食材のプロテイスターのクリスティアーノ・デ・リカルディスさん(現在は自らオリーブオイルブレンダーとしてオリジナルのオイルの販売もしています)。
飯尾さんとはバンタンの講座をきっかけに知り合い、リカルディスさんは「食科学大学」で味覚教育に関する論文を書き上げる時に知り合いました。
いずれも何かある度に意見を求めたり、情報交換をしてきた信頼のおける仲間です。

フードリテラシー研究会で日本とイタリア「伝統酢対決」を企画し、引き合わせたのをきっかけに、彼らは直接連絡を取り合うようになります。
さらに飯尾さんは交流のある小豆島のオリーブオイル生産者にリカルディスさんを紹介し、以来リカルディスさんは度々小豆島を訪れては、小豆島の土地に合うイタリアのオリーブ品種を定植したり、小豆島でオリーブオイルの事業者向けに講習会を開くなどしているそうです。
「そうしておいしいオリーブオイルができたら、今度は私が誌面で紹介したり、百貨店の売り場に並べたい」。
柴田さんの周りで、こうしてまた、食の世界が面白くなっていきます。

まだまだこれから





「もう10年経ってしまった」。
転身してからを振り返ると、そんな驚きとともに、「まだまだ何もできていない」という焦りもあるそうです。
でも、「話を聞いてみたい人にワンクッションで会えるようにはなってきました」。
ここからが本領発揮!? 
面白がりながら、食の本質を探っていく柴田さん。
次は誰と、どんなふうに……?




柴田香織(しばた・かおり)
大学卒業後、広告代理店に就職。2005年、イタリアスローフード協会が設立した「食科学大学」に第一期生として入学し、大学院で1年間学ぶ。帰国後、フリーランスとして料理誌等での執筆、地方自治体の食の地域振興などに携わるほか、ワークショップの開催を通して“文化としての食”を伝える。2011年、(株)伊勢丹研究所に勤務。食品フロアのディレクションを担当。2014年4月〜フリーランスの活動を再開。

























































料理通信メールマガジン(無料)に登録しませんか?

食のプロや愛好家が求める国内外の食の世界の動き、プロの名作レシピ、スペシャルなイベント情報などをお届けします。