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MEETUP

“食のプロ”のためのスペシャルティコーヒーセミナー

スペシャルティコーヒーと料理・スイーツの無限の可能性を見つける vol.1

2015.11.17

スペシャルティコーヒーの登場により、コーヒーは、産地や生産者の個性で語られるようになりました。個性を生かす様々な抽出法も誕生しています。

コーヒーの新しく切り開かれてきた魅力を広く知ってもらうべく、2015年9月28日(火)、品評会運営団体であるACE(Alliance for Coffee Excellence Inc.)と丸山珈琲の共同企画により、コーヒーを専門としない飲食店や菓子店の方を対象に、コーヒーと料理、スイーツとの無限の可能性を見つける“食のプロ”のためのセミナーとワークショップが開催されました。ここでは当日のイベントレポートを通して、スペシャルティコーヒーの今までとこれから、料理・スイーツとのマッチングによるコーヒーの興味深い世界をお伝えします。

日本は世界3位のスペシャルティコーヒー輸入国

今や世界各国で認知され、需要が高まる“スペシャルティコーヒー”。
でも、専門店ならともかく、一般的な飲食店や菓子店には、まだ十分に知識や魅力が伝わっていると言えないかもしれません。
セミナーの前半は、NPO法人ACE(Alliance for Coffee Excellence Inc.)の専門理事であるデビー・ヒル氏が登壇。「丸山珈琲」代表・丸山健太郎氏の通訳&解説を通して、スペシャルティコーヒーの概要についてお話をいただきました。

 

ACE(Alliance for Coffee Excellence Inc.)の専門理事であるデビー・ヒル氏。カップ・オブ・エクセレンス(COE)の代表を務める。

「丸山珈琲」丸山健太郎氏の通訳&解説でセミナーがスタート。

スペシャルティコーヒーとは、その名の通り、“高品質なおいしいコーヒー”のこと。では、何をもって高品質かというと、「国、地域、協同組合、農園、マイクロ・ロットまで明快なトレーサビリティ」が挙げられます。畑の区画ばかりでなく、何月何日に誰がピッキングしたかまでわかると言うから驚きです。
このトレーサビリティを徹底することで、まるでワインのように、土壌、標高、気候など、環境の違いから生まれる味わいの違いに価値が付けられています。36もの香味プロファイルが認識されるほど奥深いコーヒーのフレーバーの魅力を余すことなく味わえるのが、このスペシャルティコーヒーなのです。

現在、日本は、EU諸国、アメリカに次ぐ、第3のスペシャルティコーヒー輸入国。90%以上が生豆の状態で輸入され、その2/3が焙煎業者の元で焙煎され、1/3がレストランなどで使用されています。

スペシャルティコーヒーがもたらした飲み方の変化

日本の最近の傾向として、

① 抽出方法に注力する消費者の増加
② 砂糖、ミルク不使用、ブラックコーヒー愛飲者の増加
③ 浅いローストでの提供、シングルコーヒー需要の増加

という3点が挙げられます。

スペシャルティコーヒーの普及によって、フレンチプレスやハンドドリップなど、ちょっとしたコツをつかめば、プロでなくてもおいしいコーヒーを淹れることができるようになりました。砂糖やミルクで風味を変えなくとも豆そのものが味わい深い。コーヒーの魅力に開眼する人が増えているわけです。

また、もともと深煎り傾向が強かった日本の焙煎ですが、2000年以降、生産国のテロワールに心を動かされ、特徴を消さぬよう焦がさずに浅く煎るロースターが急増しています。高品質な豆=スペシャルティコーヒーの進出によって、日本のコーヒー文化そのものが変化したといっても過言ではありません。コーヒーをずっと飲んでいた舌の肥えた世代(現高齢者)が、品質に対する対価を厭わず、スペシャルティコーヒーを愛飲しているというのも、日本の近年の特徴として挙げられます。

丸山氏の解説に聞き入る参加者。知っているようで知らなかったスペシャルティコーヒーの基本知識がわかりやすくレクチャーされる。

カップ・オブ・エクセレンス(COE)とは?

ITC(国連機関)の基金とICO(国際コーヒー機構)の協力の下、高品質なコーヒー豆の価値を見出すとともに、世界各国の生産者の経済的自立を促進するために進められる国際プロジェクト、「カップ・オブ・エクセレンス(COE)」。1997年に活動を開始し、様々な課題を経て、現在はアフリカ、中米、南米、メキシコなどの発展途上国が参加し、豆の価値を競いあっています。

審査の軸であるカッピング期間は、なんと3週間! 
各国での国内カッパーによる審査、さらにその後、国際審査員によるカッピングを経て、全ての審査で85点以上を獲得した豆だけが、スペシャルティコーヒーとして認められます。審査をクリアした豆は、全て国際インターネットオークションで販売。売上金のほとんどが、入賞したコーヒー農家に渡されるという仕組みです。
それまでほぼ無名だった生産者は、一夜にして英雄に。地元新聞の一面を飾り栄誉を称えられる……。彼らは豆の生産に価値を見出し、その意欲と技術がさらなる高品質な豆の栽培へと繋がる、という生産者の経済的自立もプロジェクトの狙いです。

2015年、COEのコーヒー買い付け者トップ5の内、上位3位を占めたのは日本。実に全体の75%の豆が、日本のマーケットで販売され、消費者に飲まれています。
高品質な豆から抽出されるスペシャルティコーヒーは、COEの取り組みを経て、確実に日本の消費者の心をとらえていると言えるでしょう。

スクリーンに映し出されるコーヒー買い付け者トップ5。上位3位が日本の買い付け者だ。

2014年、2015年のCOEのコーヒー豆購入実績。実に半分以上(赤部分)が日本で占められる。円グラフで見るとわかりやすい。

次は、いよいよコーヒーと食とのマッチングセミナーです。
コーヒーとマッチングする食材とは?

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