イタリアのミシュラン星付きシェフに学ぶ「地方再生のための料理教室」
2025.03.26

面積の約94%を森林が占める長野県南木曽町(なぎそまち)で、2月22日〜3月3日の10日間、イタリアからミシュラン一ツ星シェフを招聘し、地域再生を志す料理人のための教育プログラムが実施されました。
招聘されたのは、イタリア北東部エミリア・ロマーニャ州の森に囲まれた田舎町に、2017年開業した「daGorini」のジャンルカ・ゴリーニさん。森や山から届けられる天然キノコやジビエ、淡水魚などの滋味を引き立した料理と、苦味・旨味・焦げた香りなどを巧みに合わせたグリル料理を得意とし、開業後わずか2年で『ミシュラン』の星を獲得、イタリアのレストランガイド『ガンベロ・ロッソ』では最高評価(Tre Forchette)を得る注目の料理人です。

森のシェフであるゴリーニさんが、今回、エミリア・ロマーニャと似た自然環境にある南木曽町に滞在しながら食材生産者たちを訪ね、「地方再生のための料理」を考案し、東京と南木曽町でコースをふるまう。その全過程に同行して、南木曽の自然環境から独創的な料理が生まれるまでをシェフの間近で学べる機会に、全国から応募が集まり、その中から7名の若手料理人が参加しました。


訪ねたのは、きそれんこん、米農家、川魚がとれる渓流や養鱒場、米こうじ、醤油、味噌づくりの現場、どぶろく、山羊チーズの生産者、海から遠い木曽地方で発達した無塩の漬物「すんき」や5月中旬~6月にかけて採れる酸味のある山菜「イタドリ」など山間の地ならではの食文化を体験と、充実の内容。

ゴリーニさんは初来日でしたが、森の食材を見る眼、生かす力を普段から鍛えているせいか、3日間の視察を終えた頃にはだいたいコースのイメージができていたと言います。
視察後は参加者と共に料理の開発。干した香茸の香りにインスパイアされて作った5種類のキノコのスープは、蒸して、ソテーして、薪火で焼いてとキノコをそれぞれ調理し、スープの上にはヒノキの葉を油で揚げて添えます。


エミリア・ロマーニャ州の郷土パスタ「トルテッリーニ・イン・ブロード」のブロードには、囲炉裏で焼くように薪火でじっくり焼いたイワナの身からとっただしを使い、酸味にすんきを刻んで加えるなど、ゴリーニさんによって南木曽の食材の新たな魅力が発見されていきます。


その様子を目の当たりにした若手料理人が東京のイベントでは、ゴリーニさんの補佐を務めながら9品のコースを提供。南木曽の魅力をチーム一丸でゲストに伝えていました。

ゴリーニさんに、南木曽の生産者を訪ねて印象的だったことは?と尋ねると、「米もニジマスも調味料も、皆さん『水がいいからおいしい』と言うのが印象的でした」。
森林が蓄えた水が木曽川となって伊勢湾に流れ込み、豊かな漁場を作る。南木曽の自然やそこで暮らす人々の文化を表現したゴリーニさんの料理は、料理人が地域と向き合うとはどういうことかを教えてくれるものでした。
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