リストランテ仕様のプリプリ食感「イカのサラダ仕立て」
パワーオフ・レシピ
2024.07.11
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photographs by Hide Urabe
連載:パワーオフ・レシピ
家庭での電気使用量が急増する夏。電気やガスを使わなくてもおいしく作ることができる「パワーオフ・レシピ」をシェフに教わります。今回は、イカをリストランテ仕様のプリプリ食感にする驚きの裏技をご紹介。季節の果物と合わせ、サラダ仕立てにします。
目次
教えてくれた人:東京・代官山「タクボ」矢島直樹さん
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塩水&氷と一緒に袋に入れて振るだけ
魚介の生食が少ないといわれるイタリアですが、プーリア州のバーリというアドリア海に面した街、及びその近郊の人々は多くの魚介を生で食べます。まるで日本人が刺身を食べるように、オリーブ油と塩、レモン汁で食べる。僕が修業したミラノの「イル・ルオーゴ・ディ・アイモ・エ・ナディア」のシェフがこのバーリ地方出身でした。そこでは他の地方では知られていない、マニアックなタコ、イカの処理法を教わったのです。
工程は簡単。捌いたタコやイカを海水に近い濃度の塩水と氷と一緒に袋に入れ、大き目のボウルに入れて20~30分、波を作るように前後に大きく揺するだけ。根気がいるので専用の小さな洗濯機のようなものを使う人もいますが、僕はこれで十分。泡がしっかり立ち、脚先がカールされたら終了のサインです。
この作業はバーリ地方の人々にはごく当たり前の処理で、煮る、焼く前にも必ずこの処理をします。だから魚屋さんもカールさせた状態で運んでくる。作業の名前は「アリッチャーレ」(カールさせる、巻く、の意)と呼びます。
生イカの少しねちっとした感じが苦手な人や、刺身に飽きたという人にも、おすすめ。カールされたイカは表面の身が適度に締まり、ぷりぷりした歯触りが魅力です。タコ、イカの種類は問いません。日本の食材でも同じようにできるので、試してみてください。
くるんとカールした脚先に注目!
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「イカサラダ仕立て」材料と作り方
[材料](1皿分)
イカ(新イカなど)・・・2杯
黄金桃(スライス)*・・・1/2 個
〈下処理〉
氷・・・500g
塩・・・ひとつかみ
水・・・少量
〈トッピング〉
アーモンドスライス・・・適量
レモン汁・・・適量
ピンクペッパー・・・適量
*塩(適量)をふり、レモンバーベナ(5枚)を散らしてE.V.オリーブ油(適量)を回しかける。ラップをし、2~3分マリネしておく。
氷はクラッシュタイプを
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[作り方]
[1]ビニール袋に入れる
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甲、ワタ、目玉、生殖器、くちばしを除き、薄皮を剥いたエンペラとイカの身と脚をビニール袋に入れる。
[2]氷と塩を入れる
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氷、塩の順に加える。
[3]水を加える
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水を加え、袋の口をしっかり閉じる。
[4]揺する
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3を大き目のボウルに入れ、20~30分、前後に大きく揺する。
POINT:袋の中で波を作るイメージ。
[5]完了
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袋の中がしっかり泡立ち、脚がカールしたら終了の合図。
[6]水洗い
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5をしっかり水洗いする。白く澄んだ色をした身が出てくる。
[7]調味する
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身に格子状に切れ目を入れ、塩を振り、レモン汁、オリーブ油を回しかける。桃と一緒に皿に盛り、トッピングを散らす。
完成!「新イカと黄金桃 レモンバーベナとアーモンドのアクセント」
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下処理されて程良く身が締まり、ぷりぷりした食感のイカに、レモンバーベナの香りでマリネしたみずみずしい桃を合わせて。アーモンドとピンクペッパーをトッピングし、辛味と香ばしさ、食感をプラス。
応用編:タコでも挑戦!
[1]波に揺られて、泡はぶくぶく
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タコは塩で揉み洗いし、肉叩きで吸盤の繊維を潰す。その後、上のプロセス1~5へ。波に揺られて、袋の中はビールのように泡立つ。
[2]脚先はくるくる
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袋から出した状態。タコの脚はこんなにカール!
[3]カールの“持ち”も強力
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しっかり水洗いしても、このカールは強力に維持。ストレートには戻りません。
「真ダコのスコッターレ ひよこ豆のクレマと合わせて」
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カールさせた真ダコを鍋に入れ、水を入れずに弱火で10分加熱後、オリーブ油とニンニク、ローズマリー、タイムなどと一緒に皮目を強火で焼きつける。表面の香ばしさとハーブの香り、中のふんわりした食感のコントラストが楽しい。
東京・代官山「タクボ」の店舗情報
◎TACUBO(タクボ)
東京都渋谷区恵比寿西2-13-16 1F
☎03-6455-3822
16:00~20:00LO
日曜休(月曜が祝日の場合、日曜営業、月曜休)、月4日ほど不定休
東急代官山駅より徒歩5分
https://tacubo.com/
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2016年10月号掲載)
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