ワインのアテに。洋風「アジのなめろう」
パワーオフ・レシピ
2024.08.05
photographs by Hiroaki Ishii
連載:パワーオフ・レシピ
家庭での電気使用量が急増する夏。電気やガスを使わなくてもおいしく作ることができる「パワーオフ・レシピ」をシェフに教わります。今回は、レーズンや松の実で洋風に仕立てた「アジのなめろう」。キリッと冷やしたワインと一緒にお楽しみください。
目次
教えてくれた人:東京・代官山「アタ」掛川哲司シェフ
主役を邪魔しない味作り
なめろうは作りたてに限ります。だからアジを下ろすのも、食べる直前。頭を落として内臓を取った後、水で洗い流すのが一般的ですが、身の中に水が入ってしまう。なるべく水を当てなくてすむよう、内臓を傷つけないように、また血が大量に出ないようにさばけたらベストです。
僕の魚の下ろし方は少し変わっていて、背骨から身を外す前に、先に皮を引きます。背骨がまだ付いているので身が割れにくく、潰れにくい。どうせ叩くんだから関係ないと思うかもしれませんが、テクスチャーがないと、食感が単調になる。ペーストになるまで叩かないのも大事です。またネギ類を一緒に叩かない。ネギ汁に支配されてアジの存在が弱くなる。
ネギ以外の材料には味噌の役目を担ってもらいます。味噌の味を分解して、コクを松の実に、甘味をレーズンに、旨味をドライトマトで補っています。いろいろ試した結果この組み合わせがしっくりきました。
他にも、コラトゥーラ(イタリアの魚醤)でわずかな塩気を、全体に締まりを出すためにシェリービネガーを加えますが、いずれもおまじない程度でほんのわずか。松の実やレーズンですら存在を主張せず、アジの引き立て役に徹しています。アジ以外の存在を感じさせない仕上がりになっていれば、成功です。
「アジのなめろう」材料と作り方
[材料](1皿分)
アジ・・・1/2 尾
松の実・・・10g
レーズン・・・5g
セミドライトマト・・・5g
エシャロット・・・5g
シブレット・・・適量
コラトゥーラ(イタリアの魚醤)・・・数滴
E.V. オリーブ油・・・適量
シェリービネガー・・・少量
塩(マルドン)、黒コショウ・・・各適量
[魚仕事の名脇役]
ペンタイプのピーラー
[作り方]
[1]松の実をローストする
松の実は160℃のオーブンで10 分ローストする。焦がさないように注意。フライパンで炒ってもよい。
[2]レーズンを湯で戻す
鍋に水とレーズンを入れて弱火にかけ、温まった状態を保ちながら、柔らかくなるまで戻す。
[3]アジを三枚におろす
エラの後ろに包丁を入れ、頭と内臓を外す。背と腹に包丁を入れ、片面の皮を引き、半身を背骨から外す。
POINT:内臓を傷つけない。
さばいた後の身に水を当てなくて済むよう、頭を落とす際は、内臓を傷つけないようにする。血もできるだけ出さないようにさばけるとベスト。
POINT:作業中も常に冷やす。
身がだらけないよう、氷水に当てたボウルを用意して、三枚に下ろした後や、叩いた後、すぐに冷やせるようスタンバイしておく。
[4]アジを刻む
アジの身を包丁で5ミリ角に小さく切ったら、さらに粗めのみじん切りにする。
[5]松の実、レーズン、トマトを刻む
松の実を包丁の腹で潰してからレーズン、トマトと一緒に細かく刻む。
[6]叩く
アジに5をのせ、さらに包丁で叩きながら混ぜ合わせる。氷水に当てたボウルにすぐ移す。
POINT:ペーストになるまで叩きすぎない!
[7]ネギと合わせる
ボウルを氷水に当てた状態で、みじん切りにしたエシャロットとシブレット、コラトゥーラを加える。
POINT:ネギ類は叩かず和えるだけ
ネギを一緒に叩くと、アジよりもネギの風味が立ってしまうので、別に刻んでおき、仕上げに合わせる。
[8]粘りが出るまで混ぜる
スプーンでよく混ぜ合わせる。途中でオリーブ油を加えて、ねっとり粘りが出るまで混ぜる。
[9]シェリービネガーで締める
ほんの少量のシェリービネガーを加えて混ぜ、全体を締める。加えすぎると白くなるので注意。
[10]仕上げる
器に盛り、シブレットとマルドンの塩、黒コショウを少し挽く。薄切りにしたバゲットを添える。
東京・代官山「Ata(アタ)」の店舗情報
◎アタ
東京都渋谷区猿楽町2-5
☎03-6809-0965
17:00 ~翌2:00
日曜休
東急線代官山駅より徒歩6分
http://ata1789.com/
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2016年7月号掲載)
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