DIYレシピ07
10日で食べごろに! 旬のソラ豆で作る自家製豆板醤
東京・西荻窪「仙ノ孫」早田哲也シェフ
2022.05.02
photographs by Kouichi Takizawa
連載:DIYレシピ
塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。
教わるテクニック:発酵
教えてくれたシェフ:東京・西荻窪「仙ノ孫」早田哲也(そうだてつや)さん
自家発酵で旨味、香りが驚くほど豊かに
中国菜の中でも、四川料理は特に多彩な調味料使いが特徴です。調味料類は味の要になるため、自家製する店が多くなってきました。僕も、可能な限り香味油や酒醸(チュニャン)、醤など手作りしています。豆板醤もそのひとつですが、製法がなかなか入手できず苦労しました。現地の知人や先輩料理人などの助言を頼りに、数年前から手探りで挑戦中です。
豆板醤は、ソラ豆に麹と唐辛子などを加え、1年ほど発酵&熟成させて作ります。僕の店では、郫県(ピーシュン)から取り寄せたもの、一から手作りするもの、市販品を追熟させて作るものと数種類の豆板醤を常備し、料理によって使い分けています。
初めて試すなら、既存の豆板醤を元種に“ソラ豆麹”を加えて追熟させる方法をおすすめします。ソラ豆の香味や旨味、生きた麹のふくよかな甘味が加わって、うんと芳醇に。四川現地とは気候も麹の種類も違い、管理が難しいですが、元種が入ることで発酵も安定します。
一から作る場合、春に実家の畑でソラ豆がたくさん採れる時期に、天日で干して保存しておき、夏、生唐辛子が採れた時に(唐辛子を塩漬けにしてから)仕込んでいます。ソラ豆の香りがとても強く、普段慣れているのとはまた違う味です。
豆板醤は、お家中華でも使う頻度の高い調味料。これがランクアップすれば、料理の仕上がりもうんとクリアになりますよ。
自家製豆板醤の極意
1 常温で寝かせる。1日1度はかき混ぜる。
2 元種として味噌や豆板醤を加え、健全な発酵を促す。
3 生唐辛子塩漬け+乾燥ソラ豆で一から手作りも可能。
【材料】(作りやすい分量)
ソラ豆(さやから出す)・・・84g
塩・・・1g
糀・・・5g
豆板醤(既成品)・・・100g
[1]薄皮をむく
ソラ豆はさやから出し、薄皮をむく。口当たりや香りがよくなる。
[2] 蒸す
蒸し器に入れ、強火で5分蒸す。
POINT:ソラ豆は茹でずに蒸すと、味や香りが逃げず、濃厚な味わいにできる。
[3]蒸し上がり
翡翠色が濃くなったら蒸し上がり。温かいうちに次の作業へ。
[4]潰す
ソラ豆が温かいうちに包丁で粗く刻み、さらに包丁の腹で押し伸ばすように潰し、滑らかにする。
[5]塩と糀を加え混ぜる
潰したソラ豆のペーストを、ボウルなどに移し、塩と、麹をほぐしながら加える。
[6]1日1~ 2回かき混ぜる
塩、麹、5をよく混ぜ合わせる。ラップをかけて、1日1~2回混ぜながら、常温で3日ほど置く。
[7]一次発酵終了の状態
常温で3日程経った状態。全体に艶が出て、水分が上がり、香りが立ってくる。
[8]元種の豆板醤と混ぜる
7を、元種の豆板醤に加え、よく混ぜ合わせ、二次発酵を促す。
[9]7~10日ほどおき、二次発酵
1日1~2回かき混ぜながら、常温で二次発酵。10日以降が食べごろ。
◆制作日数:2~3日 ◆食べごろ:10日前後 ◆保存方法:常温(時折かき混ぜる)
豆板醤 展開例
そのままでもちろん、加熱すれば香りと辛味が引き立つ。おいしさのコツは酢。一緒に使うことで、コクとキレがアップ。
◎中国料理 仙ノ孫
東京都杉並区西荻北4-4-2
☎03-3390-4808
12:00~14:00LO
18:00~20:30LO
月曜、火曜休
JR西荻窪駅より徒歩5分
http://www.sennomago.com/
※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2015年7月号掲載)
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