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JOURNAL / 世界の食トレンド

America [New York] NY市内から車で1時間半。小さなエコシステムを体験できる再生型農場が話題

2022.09.22

text by Akiko Katayama / photograph by AOOA, Beth Fox Photography(Portrait)

地球温暖化への危機感が高まる中、プラントベースへの関心は増す一方。とはいえ植物性原料のみで作られた食物への転換が、地球温暖化防止に実際どの程度効果があるのか、あるいは原形をとどめないほど加工された植物性食品が、人体に安全かつ十分な栄養素を供給するのかなど、議論は尽きない。


そんな中、食肉を含むリジェネラティブ(環境再生型)農業を実践する非営利農場「AOOA」が2021年6月に誕生し、話題を集めている。

創業者はアリアン・ダギン氏。娘のアリックス・ダギン氏が実際の運営を仕切る。ニューヨークでアリアンを知らないシェフはいない。フォワグラ料理で名高い南フランス・ガスコーニュ地方の著名シェフの娘として生まれ、10歳で鴨の捌き方を習得。その後ニューヨークのコロンビア大学留学を経て、1985年に米国産フォワグラの販売会社「ダルタニアン」を創業した。以来、サステナビリティと人道性の指針に基づき、優れた食肉をレストランや一般消費者に提供している。

ニューヨーク州北部にある約1万7千坪のAOOAは、環境への責任を意識した「アグロフォレストリー」(農業と林業を融合させた森林農業)の理念をベースに運営。温室効果ガスを吸収する木々の中で様々な動植物を育て、小さなエコシステムを作り出している。収穫物を味わえるカフェの経営の他、レストラン、ワイナリーや蒸溜所も設立準備中だ。

一般に向けた啓発活動も積極的で、敷地内ツアーや実際の農作業、肉の捌き方・養蜂・旬の食材の調理法・クラフトといった各種クラスが開催され、誰でも参加できるようになっている。「こうした活動を通じて、食物がどこで生まれ、どのように我々の口に届くのかを理解することができます。その結果生まれた環境とのつながり意識や責任感が、訪れた方の日々の食生活に少しでも変化を与えることができたら嬉しい」とアリックス。

現代人を食物生産の原点に回帰させるAOOAのような活動は、今ますます必要とされているのかもしれない。

(写真トップ)ファームはニューヨーク市内から車で1時間半ほど。ファーム名「AOOA」は古典冒険小説『三銃士』の“All for one, one for all” (皆で正義のために立ち上がり、我々のコミュニティを守りぬこう)から取ったもの。ちなみにヒーローの1人青年剣士ダルタニアンは、アリアンと同じガスコーニュ出身。

アリアン・ダギン氏(右)と娘のアリックス・ダギン氏。「農場を始めたもう一つの理由は、娘と一緒に何かやってみたかったから(笑)」とアリアン。



◎AOOA
イベントは事前要予約。詳細はウェブサイト参照。
https://www.alloneoneall.com/

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