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JOURNAL / 世界の食トレンド

England [London]

ロンドンで話題の、食品ロスを削減する“スクラッチ・メニュー”とは

2022.01.27

England [London] ロンドンで話題の、食品ロスを削減する“スクラッチ・メニュー”とは

text by Yuka Hasegawa

ロンドンの中心に位置する、18世紀建造の壮麗な建築物サマセットハウス内にある、イタリアンを軸としたモダンヨーロピアン「スプリング(Spring)」。オーナーシェフ、スカイ・ギンジェル(Skye Gyngell)氏が指揮するファインダイニングで人気の店だが、時間限定で提供される食品ロス削減に取り組む特別コース「スクラッチ・メニュー(Scratch Menu)」にも注目が集まっている。

「英国で生産される野菜やフルーツの40%は、集荷の際に形やサイズなどの見栄えの基準に適わないという理由から破棄されている*という現状に驚きました。これらの野菜や厨房で出た食品ロス、冷蔵庫に眠っている余剰な食材を駆使して3皿のコースに構成したのがスクラッチ・メニューです」とギンジェル氏。2016年に提供を開始して以来、今では毎年最終営業日に、スクラッチ・メニューを1日中サーブするイベントが恒例となっている。

2021年のメニューは、通常は使わないブロッコリーの茎をベースに、厨房に残っていた自家製アンチョビバターを絡めたパスタを前菜に。メインには、年末のコロナ禍でキャンセルが相次ぎ未使用となったプレミアムな仔羊肉をグリルに、普段は破棄してしまうラディッキオの外側の葉や、残り物のスイスチャードを丁寧に蒸し焼きにして添えた。

ギンジェル氏は18年から、厨房における使い捨てプラスチックの使用をゼロにするプロジェクトも主導。英レストラン業界において、サステナビリティを提唱するパイオニアとして、今後の活躍に期待がかかる。

*同店のプレスリリースより

(写真)現在は英国を代表する女性シェフの地位を確立している、オーストラリア生まれのスカイ・ギンジェル氏。ロンドン郊外の高級ガーデニングセンターの中にある、温室のようなレストラン「ピーターシャム・ナーサリーズ・カフェ」のヘッドシェフとして脚光を浴び、2011年にミシュラン一ツ星を獲得。2014年に「スプリング」を開業した。



◎Spring
Somerset House, New Wing, Lancaster Place, London, WC2R 1LA
☎+44-(0)20-3011-0155 
12:00~14:30(LO)、17:30~21:30(LO)
日曜~火曜、土曜昼休
スクラッチ・メニュー 3皿25ポンド(通常プレシアターメニューとして17:30~18:30に提供)
https://springrestaurant.co.uk/

*1ポンド=150円(2021年12月時点)

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